日本明慧

ウォール街日報:法輪功が香港を法廷に送りこむこととなった

ウォール街日報2002年8月26日

香港が中国に返還されてまもなく、英国のコラムニストMichael Backman氏は「アジアの日蝕:アジア商業の暗黒面の暴露」という本の中に“香港の立場は、トノサマガエルを煮るという寓言物語のように、トノサマガエルを沸いているお湯に入れたら、すぐに飛び出してしまう。もしトノサマガエルを水に入れてゆっくりと加熱したら、彼はずっと中にいる。”と悲しく言った。この比喩は香港の前途に関心を持つ人々、例えば、John Tkacikに非常に適切である。John TkacikはワシントンDC伝統基金の研究員であり、彼は6月28日に当新聞紙に“一国両制度は全く無効”と題した文章を発表した。文章は香港の前途への最も悲観的な予測がまだやってきてはいないが、すでに“山雨来たらんと欲して風楼に満つ”となっていると指摘した。

北京がいくら愚かであっても、決して公衆の面前で、香港を沸き立ったお湯に投げ込まない。さもなければ、全世界から非難を受けることになる。主要な商業都市として、香港は日常運営において以前の体制を保っているが、釜の下には火がずっと燃えており、北京もずっと加熱機の指針の上昇を慎重にコントロールしているのである。

この加熱機の設計は非常に独特である。なぜなら、その上に刻まれるのは温度ではなく、名前であるからである。最初に刻まれたのはマーティン・リーと他の民主運動活動家であり、彼らはほとんど香港末代総督クリス・パッテンの発起した、政治改革の忠実な支持者である。六・四事件の死者に同情し、同時に香港の民主過程の推進に専念しているため、マーティン・リーを含め数多くの民主運動活動家は中国への入国を拒否されている。

マーティン・リーの次に刻まれたのは最高に魅力のある陳方安生である。彼女はかつて香港の二番目の責任者となっており、香港の自治を守るため遠慮なく直言する勇気があったため“香港の良心”と称賛された。去年、北京の圧力に迫られたため、彼女は離任を早めざるを得なかった。彼女の離任は英国植民地時代に活躍した風雲児が、続々と香港の政治舞台から消えて行く現象を示唆しており、香港政府の香港市民への責任感もそれと共に消えて行った。6月28日に当新聞紙に発表した“無能の香港政府”の社説が指摘した通り、董建華の率いる親北京派が前政府に取って代わり、彼は北京に忠実性を表したため、香港の最大利益を出発点とするわけでなく、八方手を尽くして北京の好みに迎合することにした。

このような情勢の下で人権の英雄呉弘達は以降の目盛りの基準となった。今年4月、呉は香港への進入を禁じられ、また6月に香港の旅行ビザをも拒否された。

現在、目盛りはもう一つの新しい名前——法輪功を指した。これは中国共産党(江沢民)のもう一つの目の敵である。中国国家主席江沢民と少数権力派は、国民に愛好された法輪功に政治的な脅威と振興的な脅威を感じ、北京は1999年7月、当時中国で人気上昇中の法輪功を取り締まった。これに対して、世界の多数の民主国家は皆この迫害を非難した。香港は進退両難の境地にさらされた。北京に従順して一国両制を損害するか?それとも他の民主国家のように法輪功を支持して江沢民を怒らせるか?

数ヶ月前までは、外国の法輪功学習者の香港への進入は許されなかったにもかかわらず、香港政府の立場はまだ比較的に明確であり、法輪功の香港での活動を許していた。しかし、現在情勢は突然悪化した。四名のスイス法輪功学習者は今年3月に香港に入り、しかも中国駐香港連絡弁公室前での座り込みに参加した。結局、12名の香港学習者と共に逮捕され、しかも交通妨害という理由で香港警察側に起訴された。

当事件はあまり香港市民の目を引かなかったようである。なぜなら、より多くの香港人は上に述べた寓言の中でのトノサマガエルのように、温水で催眠されたからである。しかし、当事件は台湾や西方社会の注目を集めた。現在、香港政府の法輪功への対応は、一国両制下で香港が自治を保持することができるかどうかの試金石となっている。董氏は去年法輪功を邪教と呼んだが、思わず北京の法輪功への態度を思い出した。また、董氏は北京の推奨する基本法、つまり香港憲法の道に従って反分裂、反反乱、反転覆の新法律の制定に着手し始めた。これは法輪功や他の民主活動が制限されることが心配させる。このような情勢の下で、香港裁判所が8月15日に16名の法輪功学習者に有罪判決を言い渡したのは、全くおかしいことではなくなった。

法輪功学習者への審判は香港を被告席に送り込んだ。密接な利害関係があるのは法輪功でなく、香港自身である。この判決は16名の法輪功学習者に出しただけではなく、同時に香港の未来に出したものである。今回の判決は僅かな罰金(注)を課したが、香港の名誉は永久的な損害を受けた。

法輪功学習者への有罪判決は人々に注意を促した。香港、このかつて可愛かったトノサマガエル——活気に溢れた自由貿易と経済の象徴にとって、生命はますます塗炭の苦しみに陥っており、ますます死に近づいている。

注:この罰金は神秘にも匿名の寄付者によって支払われた。従って、16名の法輪功学習者は罰金の支払いを拒絶することによる投獄を避けられた。