日本明慧


私はもう沈黙していられない

杜 導斌筆

【明慧ネット7月26日】(杜 導斌は湖北省出身の作家で、近年海外において中国の政治問題を批評する多くの記事を発表した)

約四年前、私はある国営企業の副経理と一緒によく食事した。彼の企業には一千人以上の従業員が居る中で、三人が法輪功学習者であった。彼は法輪功問題を管理する仕事に当てられた。これは政法部門の「610」室と直接連絡出来る職で、その主な責任の一つは、三人の法輪功学習者が請願に出かけるのを止めさせることであった。

もしも彼らがそっと抜け出したなら、彼らを連れ戻し、再び監視しなければならなかった。始めの頃は彼はこの事を軽く見ていた。人を傷付ける考えを持っていなかったので、主に「批判教育」と説得をするだけであった。三人の法輪功学習者は過去に二度も抜け出し、その為に彼は厳しい批判と警告を受けた。会議の席で市委員会の責任者が警告した。もしも再び法輪功学習者が一人でも抜け出したなら、彼は即座に職を失うことになるという。

この副経理はまだ若く、将来性を失いたくなく、職場で悪く見られたくもなかった。どうすれば彼らが抜け出さないように出来るだろうか? 彼は言った。「私は決心して彼らに、そして部下にはっきりと言った。外出した者は足を板に釘付けにする。」それを聞いて私は髪が逆だち、彼に聞いた。「それは適切なことなのか、法に反するのじゃないか?」彼は、仕方がないと言った。私達はクラスメートであったので、私は彼をよく知っていた。彼は農村出身で比較的善良であった。私はもう一度彼に、どうして人をそのように扱うのか聞いた。「仕方がない。強制されたのだから。」と彼は言った。

三年前の旧正月に近づく頃、全国に法輪功鎮圧の声がますます強まった。彼の口からも、他の筋からも、旧正月期間中に請願事件が起きないように、各地各部門が厳しく制御する方針を取ったことを知った。彼にとって丁度昇進の時期であり、何か異変が起ると、十数年の努力が水の泡となってしまう。食後、誰かがマージャンをしようと提案しても、彼は事務所で法輪功学習者の監視をしなければならないからと、断った。

私はその数人の法輪功学習者が違法待遇されるのを心配したが、明言も出来ない為に、遠回りに聞いた。「君はあの三人を死なせることが出来るか?」彼ははっきりと答えた。「それは出来ない。逃げ出さなければ良い。」私は更に聞いた。「彼らは死を恐れていると思うか?」「彼らは魔にとりつかれており、死を恐れない。」と彼は答えた。「その通りだ。彼らは死さえ恐れないなら、他に恐れるものがあるか? 死さえ恐れない者には神や鬼でさえ、少し譲る。君の処は政治機関ではないのだから、彼らを死なせることは出来ない。君は将来のことを計算に入れなければならない。万が一の場合を心配しなければならない。万が一、ある日彼らが現状から脱出出来、君に仇討ちするなら、全ての怨恨は君一人に向けられるかもしれない。今地位が低い為に言われた通りにするなら、その時になったら誰が責任を取ってくれるだろうか? だから聞きなさい。許せれば許してあげ、ほどほどにしなさい。人をあまり残忍に扱わないように。」彼は黙ってしまった。私が言ったことが効いたのかどうかよくわからないが、次に会ったときはもうこの話題は持ち上がらなかった。

もともと善良な性格の一人が、人が請願に行ったというだけで、自ら残酷な刑を用いるよう強いられるとは、自分の耳で聞いたのでなかったら、決して信じないだろう。自分が経験した為に、そして孫志剛のような人の惨死事件が身辺に絶え間なく発生した為に、更にあまりにも多くの司法の暗黒さを見聞きした為に、大紀元のウエブサイトで次のような記事を見た時、私は全てが真実である事を信じざるを得なかった。

「『610』室は草刈のように人を殺しているとの報道。」「これまでに少なくとも754人の法輪功学習者が拷問により死亡したことが、民間筋を通して実証された。多くは労教所や監獄で残忍に虐殺された。江集団による情報の厳密な封鎖の為に、これらは氷山の一角にすぎない。」「江沢民は軍隊と警察を用いて、老人、婦女、妊婦、そして子供までも含めて、真昼の最中に法輪功学習者攻撃し始めた・・・不完全統計によると、当時全国各地で迫害を受けた (警察に強制的に散らされた、殴られた、不法留置と尋問を含む) 法輪功学習者は少なくとも30万余になる。」

これら754人の同胞は法を犯したのだろうか? たとえ法を犯したのだとしても、この様な非人道的扱いを受けるべきであろうか? 私は確言できるが、この人達の多くは無罪であり、政治的陰謀の犠牲者である。この人達が私達の目の前で、孫志剛*の様に惨死を遂げたことには、「610」室は逃れられない責任を負っている。同じ資料によると「610」室は、迫害実施において原則をもつ: 名誉を毀損する、経済的に破産させる、肉体的に破壊する。後にはもっと具体的な指示が加わった: 「法輪功学習者に対しては法律は適用されない」「殴打による死はなんでもなく、自殺と見做される」「身元を調査せず、直接火葬する」。 「文化大革命」と「計画産児」運動中に非人道的扱い (毒を飲んでいる人を見ても、瓶を取り上げない、首吊り自殺をしようとする人を見ても、縄を解く手伝いはしない。) を受けた我々は、上述した一切の事が実際に存在し、実際に発生したと信じる。

過去四年間、私は当局の対法輪功の中傷の宣伝を一方的に信じており、我関せずの態度をとっており、彼らが非人道的扱いを受けていることにあまり注意を払わず、彼らが迫害を受けている時は沈黙していた。ということは、私は間接的に専制政権と共謀することを選んだことになる。今日夢から醒めたように彼らの悲惨な情況を目撃し、突然巨大な邪悪が現実となり、それがまだ拡大し続けている事を発見し、私は震撼し、心に罪悪感を感じた。

私は沈黙を破る必要を感じた。私は中国の知識人界とインターネットのメンバー達に大声で呼び掛けたい: 沈黙している善良な中国人達よ、目覚めなさい! あなた達が沈黙している間に、ナチの幽霊が帰って来て、我々の国家政権を横領し、最も非人道的方法であなた達の同胞を殺害しています。行動をとる時が来ました。彼らを救わなければなりません。声を出して、私達と同等の権利を持つ、不幸な人達を支えましょう。あの巨大な怪獣に向かって「否」と言いましょう。無実の罪での投獄を、絶対に終わらせなければならない時が来ました。

*孫志剛は法輪功学習者ではなく、服飾デザイナーであったが、身分証明を持っていなかったというだけで逮捕された。彼は警察署で理由も無く殴られ拷問にあった。彼の友人が彼を探して電話をすると、彼は病院に連れて行かれたと言われた。診察記録によると、彼は入院当時「静か」であり、入院中は殆んど寝ていたと言う。ところが翌日彼の友人は、彼が心臓発作で死んだと告げられた。勇敢な報道関係者がこれを聞いて、大きなリスクを冒してこっそりと調査した。検屍の結果、死亡の原因は、最後の72時間中に殴られたと見られる内部の大損傷であるとされた。又肩や膝に火傷の痕があった。その事が明るみに出ると、警察は一切を否定した。しかし、その事がインターネットで流布されると、多くの人達が、自分の家族や友人が警察に拘禁中、強姦された、殴られた、殺害された等の話を載せた。孫氏の事件は、氷山の一角であったことが明確となった。