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カナダ独立調査団:法輪功学習者対象の中国における臓器狩りの告発に対する調査報告(その一)

 【明慧ネット7月7日】カナダ議会議員デイビッド・キルガ—(David Kilgour)氏=カナダ外務省前アジア大洋州局長=と国際人権弁護士デイビッド・マタス(David Matas)氏は6日、カナダ議会で記者会見を開き、中共による法輪功学習者の臓器を強制摘出する告発について、二ヶ月間を費やした調査の結果をカナダ政府とメディアに公表、中国における法輪功学習者の臓器を生きたまま強制摘出する告発は紛れもない真実であるとの調査結果を発表した。

 マタス弁護士は記者会見で、「すべての証拠を詳しく検証した結果、我々の調査結論は、法輪功学習者の臓器を生きたまま摘出するのは、紛れもない事実であり、本人の意思を反する、法輪功学習者を対象とした、この大規模な臓器狩りは常に存在し、未だに行われていると我々は信じる…私たちもその調査結果に驚いており、これは地球上において前代未聞の邪悪な行為だ」と述べた。

 報告書の公表は、欧米主要メディアの注目を引き寄せ、ロイター、AFP、BBC、カナダ通信社及びカナダの2大テレビ局CBCとCTVなど、同発表を即日報道した(映像)。カナダ保守党全国幹部会議長ラヒーム・ジャファーは13日、カナダ政府は欧米関係諸国と連携を図り中共に圧力をかけ、国際社会が中国国内で告発の真相調査を計画しているという。

 調査報告書の英語原文(http://pkg2.minghui.org/mh/2006/7/7/Kilgour-Matas-organ-harvesting-eng.zip)、日本語訳のその(一)は、次の通り。

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 法輪功学習者を対象にした中国における臓器狩りの告発に対する調査報告

 目次

 A 序章

 B 調査方法

 C 告発

 D 証明の難しさ

 E 証明の方法

 F 証拠の構成と論駁

 1 中共が抱いた脅威

 2 政策としての迫害

 3 憎悪への煽動

 4 大規模な逮捕

 5 弾圧

 6 身元不明の死亡と失踪

 7 臓器の出所

 8 血液検査

 9 臓器が摘出された遺体

 10 証人の供述

 11 自供

 12 待機期間

 13 ネット上の証拠

 14 被害者へのインタビュー

 15 人権に対する一般的な侵害

 16 経済的な考慮

 17 腐敗

 18 立法

 G 証人と調査者の信用度

 H. 更なる調査の実施に対する提案

 I. 結論

 J. 提案

 K. コメント

 L. 添付資料一覧

 1 真相調査委員会からの招待状

 2 デイビッド・マタスの経歴

 3 デイビッド・キルガーの経歴

 4 インタビューを受けた人

 5 中国大使館への手紙

 6 中共政権の法輪功に関する発言

 7 法輪功学習者に対する迫害

 8 監禁中の学習者に対する血液検査

 9 監禁中、身元を明かさなかった法輪功学習者

 10 失踪

 11 中国の毎年の死刑囚数(アムネスティ・インタナショナルの統計)

 12 臓器が摘出された遺体

 13 取材の記録

 14 電話調査の記録

 A. 序章

 「法輪功迫害調査連盟(CIPFG)」は、米国ワシントンD.C.に設立登記され、カナダ・オタワにも支所のあるNGO団体であるが、2006年5月24日付けの書信で当方に対し、中華人民共和国の機関とその被雇用者が法輪功学習者を対象とした「臓器狩り」に従事しており収奪の過程で学習者を殺戮しているという疑いの調査に協力して欲しいという依頼があった。その書信は本報告に添付されている。多くの中国の友人、我々二人もそうであるが、この告発に対し重大な関心を持った。事の重大さに鑑み、同時に世界の人権尊重に関心を持つものとしてこの依頼を引き受けることとした。

 デイビッド・マタス氏は、移民、難民、及び国際的人権問題を主な業務とする弁護士でありウイニペグで開業している。彼はまた、人権問題啓蒙の著作もあり講演を行い、人権擁護のNGO活動などにも参加している。

 デイビッド・キルガー氏は、前国会議員でありまたカナダ政府国務省アジア太平洋担当官も歴任している。議員となる以前彼は主任検察官であった。本報告書の作成者二人の履歴は本報告に添付されている。

 B. 調査方法

 我々の調査は、依頼側の「真相調査委員会」と法輪功団体、またはほかのいかなる組織と政府からも、独立して自ら行うものである。我々は中国へ行こうとしたが果たせなかった。しかし、本調査の次段階として、証人や関連機関へ接触できるならば実現したいと考えている。本調査では我々が多くの人に対する取材ができ、これらのデータは付録に収録してある。私たちは入手できる大量の関連情報を精査した。本報告の作成にあたっては費用を受け取らず、私たちは自発的に行ったものである。

 C. 告発

 依頼側の告発は、中国のいたるところで法輪功学習者が生体「臓器狩り」の犠牲者となっているという。この臓器狩りはシステム的方針として広範囲に及ぶ場所で法輪功学習者の意思に反しされているものであるという。

 また、「臓器狩り」は臓器移植の一段階である。「臓器狩り」は移植の為に臓器を提供する事にある。移植を実行する場所と収奪の場所は必ずしも同じではない。二つの場所は多くの場合別で、一箇所で「臓器狩り」を行い、他方で移植を行っている。

 更に、こういった「臓器狩り」が学習者が生きている時に行われているという。「臓器狩り」の過程で学習者は殺戮されており、これは正しく殺人事件である。

 殺された学習者は火葬される。そして移植の元となった人体の痕跡は抹消される。

 こういったことが行われているとすれば、しかも政府の意向によって行われるとなれば人権尊重が普遍的価値として認められるに到った21世紀初頭にあってもっとも警戒すべきことである。さらに我々の最初のビデオ証言対象となった非法輪功学習者女性の夫であった医師が2003年10月まで(この時点で彼は続ける事を拒否したと言う)の2年ほどの間に、角膜を麻酔をかけていない2000人もの法輪功学習者から切除したと言う事に対して我々は恐怖におののいた。それ以後本報告にかかれたことは同様にむごたらしくすさまじい。

 D. 証明の難しさ

 これらの告発はその性質から事実関係を証明し難いだけでなく、否認することも難しい。告発を立証するための最適な証拠は、目撃証言であるが、本件に関しては目撃者を確保するのは非常に難しい。

 もし、臓器摘出が確かに行われていれば、現場にいる人は犯人、または被害者のいずれに違いない。傍観者は存在しないはずである。話によると、被害者は全員殺害され、焼却されたため、遺体を捜し出すことができず、遺体解剖はなおさらのことである。受けた暴行を語る生存者もいない。もし、犯人が存在していれば、彼らは人道に対する罪を問われるべきであるが、犯人が罪を認める可能性は極めて低い。それにもかかわらず、私たちは十分な供述と証言を入手していないけれども、電話調査を通じ、意外にも「犯行」を認める供述を多く得ることができた。

 この殺人が行われても、犯罪現場にいかなる痕跡も残されていないだろう。臓器摘出が終われば、手術室はまた普通の手術室に戻る。

 人権問題に対する中共政権の厳しい統制により、これらの告発に対する評価は非常に難しくなる。残念なことに、中共政権は人権問題に関心を寄せている記者と活動家を抑圧している。中国では、言論の自由はない。中国の内部から人権侵害の事件を報道する者は大概、投獄されている。中に、国家機密漏えい罪で起訴された者もいる。こういう状況下で、NGOの人権団体が法輪功学習者の臓器摘出事件に沈黙をし続けているのは、調査するわたしたちには何も参考にならないのである。

 赤十字国際委員会は中国の刑務所に服役している囚人を訪問するのは当局から許されていない。囚人の人権に関心を持ついかなる機構も許されていない。これにより、私たちは証拠を得られる可能性のあるルートをまた一つ、失った。

 中国には、情報開示に関する法律はない。中共政権から臓器移植に関する基本的なデータ、例えば、臓器移植の実施件数、臓器の出所、移植の費用と費用の用途などを得ることはできない。

 この報告書を完成させるために、私たちは訪中を試みた。しかし、私たちの努力はむなしい結果に終わってしまった。私たちは中共大使館に入国許可について面談を求める手紙を出した。この手紙は参考資料として報告書に収録されている。面談は実現できたが、デイビット・ギルガーと面会した人は、ただひたすら、これらの告発を否定しているだけで、私たちの訪中の話にまったく興味を示さなかった。

 E. 証明の方法

 私たちは多数の証拠を精査し、これらの証拠が一つの全体像をなすことができるかどうかを判断することで、これらの告発が本当かどうかを決められるのである。これらの証拠の中でいずれも単独では、これらの告発を否定または確定することができない。しかし、総合的に考える場合、証拠は一つの完全な画面を構成した。

 私たちが目を通した多くの証拠は告発を立証する不動な証拠にはならなかった。これらの証拠が存在しなければ、告発を否定できるかもしれない。個別の証拠はこの告発を立証できないかもしれないが、これらの証拠が合わさり、特に証拠は膨大な数に上っているため、告発の信憑性があることを示している。なぜなら、私たちが見つけた告発を否定できる可能性のある証拠と要素は、告発をひっくり返すことができないため、この告発が本当である可能性は非常に高い。

 証明には、帰納法と演繹法を用いることができる。犯罪捜査は通常、演繹的に進め、多くの小さい個々の証拠を一つの全体になるように縫い合わせるのである。私たちの調査は様々な制限を受けているため、演繹的な推論は困難である。それでも、私たちは中国で起きていることを推論できる幾つかの資料を入手できた。それはすなわち、調査担当者による電話調査である。

 ほかに、私たちは帰納的な推論の方法も用いた。双方向からの推論を行った。例えば、これらの告発が偽であれば、どのように偽であることを知ることができるのか? もし、真であれば、この告発と一致する内容はどれなのか? 告発が真であれば、その実際の状況を説明できるものはどれなのか? このような質問に答えることは、最終的な結論を導き出すことに大変有効である。

 F. 証拠と論駁

 私たちの調査は、入手できる証拠と論駁および、入手できるかもしれない証拠と論駁をすべて考慮した。最終的にいかなる結果も得られなかった証拠と手がかりもあったが、私たちは可能な限り調査、追跡した。

 F1.中共が抱いた脅威

 1990年代後半、中共は法輪功をイデオロギー領域での独占的な地位を脅かす存在と目していた。この「抱いた脅威」は本件を立証するものではないが、仮に法輪功が中共政権にとって脅威であるとみなされていなければ、嫌疑の存在自体が揺るがされる。

 法輪功は李洪志氏が1992年5月、中国の東北部で創始したものである。これは古来の修煉法である気功であり、時に「中国のヨガ」と呼ばれ、心身の健康を促進できるとされている。各種の気功は中共が1949年に政権を取った後、いずれも抑圧されていが、1980年代に緩和され、法輪功もそうした気功のひとつである。

 法輪功は近年、創始者の李氏により普及され、中に儒教と仏教、道教の要素が取り入れられている。この気功は人々に座禅と鍛錬を通じて、心身両面の健康を改善することを薦めている。その活動は政治的なものではなく、それを学ぶ者は、民族や国家、文化の枠を越えて「真・善・忍」を目指している。暴力は法輪功学習者が忌避するものである。李先生は政府の気功研究協会で法輪功を登録し、90年代の半ば頃、すでに6千万人が法輪功を学んでいたといわれている。中国政府の国家体育委員会によると、1999年には7千万人の学習者がいたという。

 2004年にエール大学が出版した、マリア・チャンの著書「法輪功」では、「法輪功は中年層と中流階級が主体であると言われているが、年配者や学生、農民などの階層もいた。あらゆる階層の人々で、教師、軍人、中共幹部、外交官とその他の政府幹部などがいた。さらに、中共上層部指導者の配偶者とその家族も学習者であったと言われている。その中には、江国家主席、朱熔基総理とその他の国務委員の配偶者と家族もいた(注1)」と述べられている。

 法輪功は中国80年代、「ポスト毛沢東時期の‘精神的空白’と、党がイデオロギーのコントロールを緩めた時期に宗教活動が爆発的に増えたことなど…」(注2)を背景に現れた。法輪功が特に人気を集めたのは、現代科学と中国の伝統と結び合わせたことが一因である。

 1999年7月に弾圧される前、多くの都市部で、法輪功学習者は定期的に集まり一緒に煉功していた。まさにマリア・チャンが著書で書いたように、北京だけで2000の煉功場所あった。朱熔基総理は法輪功が発展されることを歓迎していた。なぜなら、法輪功は社会に利益をもたらし、煉功者がほとんど健康で、彼らの医療費を節約することができるからである。江前国家主席も1992年に、3800万人の愛好者を有する中功という気功集団のメンバーを招いて気功を始め、リューマチと頸痛を治療してもらったと言われている(しかしながら、2000年初めに江政権は中功を禁止し、その指導者を国外へ追放した—注1)。

 江前国家主席と法輪功との個人的な衝突が1996年にすでに始まったとマリア・チャンやその他の分析家は見ている。当時、李氏の著作『転法輪』は全国ですでに百万冊が頒布された。人々の法輪功に対する愛着は、江前国家主席を含む神経質な中共指導者の警戒を呼び起こし、法輪功学習者が政治的に政府と対抗するのではないかとの憶測が広まった。政府は『中国法輪功』とその他の関連書籍の出版を禁止した。チャンは「李氏は自分自身と法輪功が差別を受けたと感じ、報道では政府に脅迫されたとして、1998年に渡米、永住権を取得した」(注1)と著書で言及した。

 非暴力的な弾圧は1998年5月まで続いた。政府当局の管理下にあるテレビ局からインタビューを受けたある人は、法輪功が迷信だと発言した。チャンの研究によると、この発言を引き金に、数百人の法輪功学習者が当時の江主席に手紙を寄せ、煉功の合法化を訴えたという。しかし、この訴えは実現できなかった。これらの学習者は政府職員と軍隊のリタイア者だったという。後ほど、党は『青少年科技』という雑誌で、法輪功が迷信であり、学習者が重病にかかっても、伝統的な治療を拒むため、健康を損なうものだという記事を発表した。この記事を読んだ大量の学習者は雑誌社の外に集まり、平和的に抗議を行った。警察官が学習者を逮捕、殴打したため、首都北京で新しい抗議活動が始まった(注1)。

 1999年4月25日、10000人から16000人の普通の中国人は、早朝から深夜まで、紫禁城のそばにある中共首脳の中枢機関である中南海の外に集まった。中に、知識人、政府幹部と党員がいた。抗議は静かに行われており、標語もなければ、政治的なスローガンもなかった。不満を表す声もなかった。チャンは「デモの日に、江氏は車に乗って、中南海を一周した。外から見えないガラスを通して、様子を見ていた。その日の夜、彼は明らかにデモに驚かされた。彼は政治局のメンバーに手紙を出し、マルクス主義は法輪功に勝つことができると保証した(注1)」と当時の状況を描いた。共産党の半世紀に及ぶ独裁政治は、彼にとって、すでに危険に晒されているようである。

 モントリオール大学東アジア研究センターの主任、中国現代史研究家David Ownby博士は、五年前にカナダ国際事務学院に寄せた論文の中で、率直に2001年とその前に起きたことを次のように記述した(注2)。

 「北米では法輪功の温和と見られている法輪功が中国では「邪悪」となっているのを見れば、人権に関心を持つカナダ人なら、法輪功に対する中国当局による弾圧をもっと注意深く観察するようになるだろう。」

 中共指導者の江沢民は法輪功を「カルト」と名指したが、Ownby博士は「彼らのカナダとアメリカでの修煉活動から、人々に言われているカルトの要素は少しも見当たらなかった。中共政権の法輪功がカルトであるという批判に、説得力はない。中共の法輪功に関する告発を証明したければ、中共政権は第三者が調査を許すべきである。中国は実は、法輪功が学習者を大量に動員できる力を恐れているのだ」と述べた。

 F2 政策としての迫害

 もし、法輪功学習者を対象とした臓器狩りが中国で広く発生しているならば、政府の政策や方針によりこうした事態に至ったと思われるかもしれない。しかし、中国では策定過程が秘匿されることから、具体的な政策が存在しているかどうか、私たちには知ることはできない。

 しかし、私たちがはっきりと分かっているのは、法輪功に対する迫害は実際に行われており、公式の政策として実施されていることだ。この報告の巻末に、中国政府と中共政権が制定した厳しい政策の条文が添付されている。これらの政策は、肉体の迫害を含めて、法輪功に対する迫害を要求している。これらの内容は私たちが聞いた告発と一致している。

 北京政府計画弁公室の当時の李百根・副主任の話によると、1999年「6-10弁公室」(法輪功取締特務機関)の責任者三人は3000人の政府幹部を人民大会堂に招集し、法輪功に対する弾圧について議論したという。しかし、弾圧活動は思うほど順調ではなかった。北京の周辺に陳情にやってきた人々が後絶たない。610弁公室の頭目である李嵐清は口頭で、法輪功に対する政府の新政策を伝えた。つまり、「その名誉をけなし、その経済力を損ない、その肉体を消滅せよ」というものだった。その会議以降、警官によって迫害され死亡した法輪功学習者は、自殺死として片づけられている。

 カナダの法輪功学習者から、中国の各地の法輪功学習者が警官に、「法輪功学習者を殴り殺したら、自殺と言えばよい。遺体は直接、焼却すればよい」と脅かされたという話を聞かされた。

 F3. 憎しみを扇動

 中国の法輪功学習者は、人間としての言論と行動の権利が全く剥奪されている。当局の政策上の方針は、大衆の煽動と合わせて、迫害を正当化し、その迫害の賛同者を募り、反対の声を未然に圧殺することにある。このような特定集団に向けられた批判は、当集団に対する人権弾圧の予兆であると同時にそれを裏付けるものとなった。

 国際人権組織「アムネスティ・インターナショナル」の情報によれば、中共政権は3つの策略で法輪功を崩壊させようとしている:1.信仰の放棄を拒否する学習者に対し、暴力的手段で制裁する; 2.法輪功学習者全員に「強制洗脳」の方式で信仰の自由を制限し、裏切ることを強要している; 3.メディアキャンペーンの攻勢で、法輪功に対する国民の憎しみを扇動している(注3)。

 2001年1月23日の出来事に対するメディアキャンペーンはもっとも象徴的だ。当局が言うところの法輪功学習者5人が、天安門広場で焼身自殺を図り、そのうち、12歳の女の子とその母親も含まれていた。事件後、国のメディアはその女の子が重度のやけどを負った映像や、法輪功に濡れ衣を着せる報道を中国全土に繰り返し放送し続け、法輪功に対する民意を変えた。この事件は実際、当局が脚色し演出したことだと強く疑われている。

 憎しみへの扇動だけては、具体的な迫害とは言い切れないが、あらゆる人権弾圧が最悪の結果を招く促成の役割を果たす。もしこのような忌まわしいプロパガンダがなければ、我々が集めた一連の(中共による法輪功への)糾弾の信憑性は、想像すらできないだろう。実際、このようなプロパガンダが存在しているからこそ、中国で人々が法輪功に反する行為—「臓器狩り」やその過程で彼らを殺害すること—に関わる可能性は、真実味を帯びてくるのだ。

 F4.大量摘発

 政府のメディア攻勢にもかかわらず、法輪功学習者数十万人が北京に上京して直訴を試み、横断幕やスローガンを掲げ、毎日ように集団の合法性を請願した。作家・ジェニファー曾氏=豪州在住=は当時北京に住んでおり、特殊ルートで入手した中共の機密ファイルによると、2001年4月末までに逮捕された法輪功学習者は約83万人に達していたという。

 秘密の強制労働収容所に、法輪功学習者が大量に監禁されていても、それ自体だけでは(臓器狩り)の告発を証明できない。しかし逆から見ると、そのような大量な収容者が存在しなければ、告発の真実味が変わるだろう。ある大きな集団が、国家権力の恣意的な標的になった場合、どのような形の自衛の手段でも無ければ、潜在的な「臓器狩り」の対象となることは否めない。

 F5. 弾圧

 法輪功への鎮圧には、江沢民が設立した特務機関「6‐10部局」(注5,6)があり、当部局は、各省、市、県、大学、政府機構および国有企業に設置され、弾圧運動の先頭に立っている。江沢民が「610部局」に出した指令は、法輪功の「根絶やし」であった(注6)。1999年の夏、法輪功学習者数万人が、刑務所や強制労働収容所に送致収容された。米国務省は2005年、中国に関する報告書(注7)の中で、警察は拘置所数百箇所、強制労働収容所340箇所で、独自に計30万人を収容できると報告した。その報告書では、拘置期間中に死亡した法輪功学習者は、数百人から数千人と推計している。

 拷問の実態を調査している国連特別調査委員会は、以下のように注意している(注8):

 「2000年以来、特別調査委員会とその前任者は、中共当局に拷問案件314件を報告した。その案件の関係者は、1160人に達する」さらに「その数字のほかに、さらに注意すべきなのは、2003年に寄せられた案件(E/CN.4/2003/68/Add.1 para. 301)で、法輪功学習者数千人が受けた虐待と拷問とが記述されている」。

 そのほかに、報告書では、拷問と虐待の被害者の66%は、法輪功学習者であると指摘、その他の被害者は、ウイグル族人11%、風俗産業従事者8%、チベット人6%、人権活動家5%、反体制者2%およびその他の人(エイズ感染者と宗教団体のメンバーは2%を占めている)。

 「1999年から、すべての地方政権には、北京の命令を徹底的に実行させるために、「自由裁量」の権限が与えられた。地方政府が、国民に法輪功学習者が焼身自殺や、殺人、家族への危害行為、医療の拒絶などを信じ込ませるために、多くの茶番劇が演出された。時間の推移につれ、この詐欺宣伝は一定の効果を顕わし、多くの中国人は、明らかに中共当局の見方を受け入れた。1999年後半になって初めて全人代が法輪功に対する禁止条例を可決、それまでの法輪功への迫害行為すべてが、遡及して合法化された」。

 2年後(2001年8月5日)、ワシントン・ポスト紙北京支局は、「6‐10部局」とその他の中共機構による法輪功への迫害の深刻さを露呈する以下の記事を掲載した(注9)。

 「北京西部のある警察署で、欧陽氏は裸のままで5時間の拷問を受けた。彼の話しによると、「もし私の答えが(彼らの要求に)間違っていれば、つまり、イエスと言わなければ、警官らは電撃警棒で私を電撃した」。その後欧陽氏は北京西部の近郊地域にある強制労働収容所に監禁された。そこで、警官らは彼に壁に直面して直立することを命じ、すこしでも体が動くと、電撃された。体力が限界に達し、倒れたときも、電撃された」。

 「後に、欧陽氏は監禁されている法輪功学習者グループの面前で、ビデオカメラに向け、自分の信仰を放棄すると再度声明した。それで欧陽氏の身柄は、刑務所から「洗脳センター」に移された。20日間続けて、毎日16時間以上、法輪功を批判し続けた末、彼は「卒業」した。欧陽氏は『当時でも、今でも、私が受けた圧力は信じ難いものである。過去2年間に私は人間の最も醜いことを目の当たりにした。我々人間は本当に地球上最も罪深い動物だ』と語った」。

 オウンビー博士は、「人権団体が一致して、中共政権による法輪功への残酷な迫害を譴責している。カナダ政府を含めて、世界でも多くの政府が、すでに関心を示し始めている」と指摘、アムネスティ・インターナショナルの2000年度報告書を引用して、1999年7月に弾圧が始まって以来、すでに法輪功学習者77人が、監禁期間中に死亡し、あるいは釈放された直後に死亡した(注2)と説明した。

 F6.身元不明の死亡と失踪

 不幸にして標的になった法輪功の拘束は、中共当局のいつものやり方なのだが、独特な特徴がある。中国全国の各地から天安門広場で嘆願や抗議をした法輪功学習者が逮捕されると、身元を明かした人たちは居住地に送還されるが、その家族も連帯責任を問われ巻き添えになり、しかもその学習者の信仰の放棄を説得するよう強要される。法輪功学習者の会社の上司、同僚、居住地の現地政権の幹部も、その学習者が北京で嘆願や抗議を行ったことで、責任を問われ、懲罰を受ける。

 そのため、法輪功学習者は自分の家族を守り、郷土での「村八分」を避けるために、その多くが、自らの身元を明かすことを堅く拒絶した。その結果、中共当局は収監された法輪功学習者多数の身元確認ができず、学習者の知り合いたちも彼らの行方が分からない。

 身元を明かそうとしないのは、身を守るためであるが、逆効果になりやすい。家族がその消息を知らない人は、そうでない人たちと比べ、一層犠牲者に成り易い。この人たちは、たとえ中国の基準であっても、明らかに無防備な人たちである。

 これら身元不明者たちは、特別過酷な虐待を受ける。彼らは事情も知らされず、中国各地の刑務所を盥回しに移送される。

 これら身元不明者が、法輪功学習者に対する「臓器狩り」の根源なのであろうか。明らかに、この人たちの存在自体だけでは、そうであるとも断定できない。しかし、もし法輪功学習者に対する臓器狩りの告発が真実であれば、この人たちの存在により、摘出された臓器の出所について、即座の解釈ができる。この人たちはそのまま蒸発する可能性がある、しかも「塀の外の人たち」は、その事実を知る術もない。これら身元不明者に関する情報は、本報告書の付録に添付されている。

 実際、消息不明の法輪功学習者は多数いる。本報告書の付録にはこれらの失踪案件の証拠を挙げている。もしこれらの法輪功学習者の所在が発見できれば、我々が直面する(臓器狩りの)告発は不正確となる。しかし、1人の人間は様々な理由で失踪してしまう可能性がある。失踪は一種の人権侵害であり、中国は、本案件に説明責任があるが、それらの失踪が必ずしも人権弾圧とは限らないかもしれない。

 大量の法輪功学習者の失踪は、中共政権に責任があると信じざるを得ないのには種々の理由がある。これらの失踪案件は、告発を証明するものではないが、我々が考慮しているその他の多くの要素同様、本件の告発と矛盾するところがないのである。

 F7 臓器の出所

 移植された臓器の多くは、出所が確認できない。我々が知っているのは、一部は死刑囚からのもので、わずかの一部は家族の意志による提供されたもの。しかし、これらの死刑囚とドナーを合計した数と、実際の移植手術件数とは、はるかにかけ離れているのだ。

 中国では、処刑される死刑囚の人数は非公開である。従って、我々は添付資料にある推定人数をもとに計算した。中国で処刑された死刑囚の推定人数は、全世界の処刑された死刑囚の合計人数と比べても、非常に大きいであるが、臓器移植件数に比べればはるかに大きくかけ離れているのである。

 移植された臓器のうち少なくとも98%は、家族以外の提供者からのものである(注10)。例えば、中国国内で1971年〜2001年の間に行われた腎臓移植手術40,393件のうち、患者の家族から提供されたケースは227例で、全体の0.6%に過ぎない(注11)。中国人には、死後、臓器を提供することを好まないという文化的背景がある。実際、中国では、臓器ドナーの組織的システムは存在していない(注12、10)。

 中国では何年も前から、死刑囚の臓器を利用した移植手術が行われていたが、中国政府が昨年、初めてこのことを認めた(注13、14)。中共政権にとって、「国家の敵」の臓器を売買することを阻止するような障壁は一切ないのだ。

 アムネスティ・インターナショナルの報告(注15)によると、1995年〜1999年の間に処刑された死刑囚の数は、年間平均で1,680人であり、2000年〜2005年は1,616人だった。これらの数字は変動的ではあるが、全体的な平均値は、法輪功が弾圧される前も後も、あまり変わらない。従って、法輪功の迫害が始まってから、中国で激増した移植手術の件数は、処刑された死刑囚だけでは説明がつかない。

 公表された報告によると、1999年までに、中国では約30,000件(注16)の臓器移植が行われ、1994年〜1999年の6年間で約18,500件(注16、17)の臓器移植が行われたという。中国医療臓器移植協会副会長の石秉義教授(Bingyi Shi)は、最初の臓器移植が行われてから2005年までに、合計で約90,000件の臓器移植が行われたと述べた(注18)。それにより法輪功の迫害が始まった1999年後の2000年〜2005年の6年の間に、約60,000件の臓器移植が行われたことが明らかとなった。

 一方、家族または脳死患者などの、出所の確認できる臓器移植件数はわずかである。2005年、生きている親族からの腎臓移植は、全国の臓器移植件数のうちわずか0.5%である(注19)。また、2006年3月までに、すべての臓器移植の中で、脳死患者による臓器提供はほんの9件しかない(注19、20)。ここ数年間でも、脳死患者による臓器提供の増加を示すものはない。1994年〜1999年の6年間で、出所が明らかな臓器による臓器移植は18,500件であることから、おそらく2000年〜2005年の6年間でも、同等な数の臓器移植が行われたと推測できる。それならば、2000年〜2005年の6年間で、実際に行われた60,000件の臓器移植のうち、41,500件の臓器の出所は説明がつかないのである。

 ならば、移植手術が行われた41,500の臓器はどこから来たのか?生きた法輪功学習者から臓器が強制に摘出されたという告発は、その答えであるだろう。

 これらの数字のギャップから、法輪功学習者に対する臓器狩りという告発は本当であるとは成り立たないだが、反対に、移植されたすべての臓器の源が十分に説明されれば、その告発を論駁できるだろう。すべての臓器について、臓器提供ドナーまたは処刑された死刑囚によるものであると追跡ができれば、法輪功側の告発に対して反証をあげられる。しかし、このような追跡は不可能だ。

 中国で処刑された死刑囚の推定人数が、しばしば公表される数字よりも高い。処刑された死刑囚についての政府側の統計報告がないため、合計数字は推測したものにすぎない。

 処刑された死刑囚の人数を推定する方法の一つは、臓器移植の数量を見ることである。少なくとも一部の臓器は処刑された死刑囚からのもので、家族からの臓器提供が少ないであることが分かるので、一部の専門家は、臓器移植の数量から、処刑された死刑囚が増加したと推定した。

 しかし、同推論は説得力に欠ける。臓器移植に利用する臓器は、処刑された死刑囚からのものだけでなければ、臓器移植手術件数から処刑された死刑囚の人数を推測することはできない。しかし、法輪功学習者の臓器がもうひとつの臓器提供元だという訴えがある。移植手術件数をもとに推定された死刑囚の人数が、法輪功学習者は臓器の提供元ではない結論に至らない。

 1999年までに、肝臓移植センターは中国全土では22ヵ所(注21)しかなかったに対して、2006年4月になると500ヵ所(注22、12)にもなった。1998年まで、中国における肝臓移植手術の総件数は135件(注11)だったが、2005年一年間だけでも、4000件(注18)に上っている。腎臓移植の場合、手術件数の増加も顕著である(1998年に3,596件「注11」、2005年に10,000件「注18」の腎臓移殖手術が行われた)。

 中国における臓器移植件数の急増は、法輪功学習者に対する迫害の激化と平行している。両者が平行していることにより、この告発を実証することはできないが、しかし、告発の内容と一致している。もし、この両者の平行が存在しなければ、法輪功学習者からの臓器提供は全くないとする仮想的な論理も、この告発を無効とするだろう。

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 注:

 1 Professor Maria Hsia Changs book, Falun Gong, published by Yale University, 2004

 2 「Falun Gong and Canadas China policy」. David Ownby, vol. 56, International Journal, Canadian Institute of International Affairs, Spring 2001.

 3 http://web.amnesty.org/library/Index/engASA170282001

 4 「Few Members of Large Sect to Face Trial, Beijing Says」 The New York Times, December 2, 1999, http://www.cesnur.org/testi/falun_023.htm or 「Failure admitted in crackdown」, South China Morning Post, April 22, 2000 By Willy Wo-Lap Lam

 5 Appendix 6, (June 7, 1999) 「Comrade Jiang Zemins speech at the meeting of the Political Bureau of CCCCP regarding speeding up the dealing with and settling the problem of 「FALUN GONG」」

 6H. CON. RES. 188, CONCURRENT RESOLUTION, U.S http://thomas.loc.gov/cgi-bin/query/z?c107:hc188:

 7 U.S. Department of State 2005 Country Reports on Human Rights Practices – China, March 8, 2006. (http://www.state.gov/g/drl/rls/hrrpt/2005/61605.htm)

 8 U.N. Commission on Human Rights: Report of the Special Rapporteur on torture and other cruel, inhuman or degrading treatment or punishment, Manfred Nowak, on his Mission to China from November 20 to December 2,2005 (E/CN.4/2006/6/Add.6), March 10, 2006. (http://www.ohchr.org/english/bodies/chr/docs/62chr/ecn4-2006-6-Add6.doc)

 9 Washington Post Foreign Service, 「Torture Is Breaking Falun Gong: China Systematically Eradicating Group,」John Pomfret and Philip P. Pan, August 5, 2001. (http://www.washingtonpost.com/ac2/wpdyn?pagename=article&node=&contentId=A33055-2001Aug4)

 10 http://www.transplantation.org.cn/html/2006-04/467.html Life weekly, 2006-04-07 Archived page:

 http://archive.edoors.com/render.php?uri=http%3A%2F%2Fwww.transplantation.org.cn%2Fhtml%2F2006-04%2F467.html+&x=26&y=11

 11 http://www.chinapharm.com.cn/html/xxhc/2002124105954.html China Pharmacy Net, 2002-12-05

 Archived page:

 http://archive.edoors.com/content5.php?uri=http://www.chinapharm.com.cn/html/xxhc/2002124105954.html

 12http://www.chinadaily.com.cn/china/2006-05/05/content_582847.htm

 (2006-05-05, China Daily) English

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 http://archive.edoors.com/content5.php?uri=http://www.chinadaily.com.cn/china/2006-05/05/content_582847.htm

 13 「China to tidy up trade in executed prisoners organs,」 The Times, December 03, 2005

 http://www.timesonline.co.uk/article/0,,25689-1901558,00.html

 14 「Beijing Mulls New Law on Transplants of Deathrow Inmate Organs」,

 http://caijing.hexun.com/english/detail.aspx?issue=147&sl=2488&id=1430379 Caijing Magazine/Issue:147, Nov28 2005

 15 Index of AI Annual reports: http://www.amnesty.org/ailib/aireport/index.html, from here one can select annual report of each year.

 16 http://www.biotech.org.cn/news/news/show.php?id=864 (China Biotech Information Net, 2002-12-02)

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 17 「The Number of Renal Transplant (Asia & the Middle and Near East)1989-2000,」 Medical Net (Japan),http://www.medi-net.or.jp/tcnet/DATA/renal_a.html

 18 http://www.transplantation.org.cn/html/2006-03/394.html (Health Paper Net 2006-03-02)

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 19 「CURRENT SITUATION OF ORGAN DONATION IN CHINA FROM STIGMA TO

 STIGMATA」, Abstract, The World Transplant Congress, http://www.abstracts2view.com/wtc/

 Zhonghua K Chen, Fanjun Zeng, Changsheng Ming, Junjie Ma, Jipin Jiang. Institute of Organ Transplantation,Tongji Hospital, Tongji Medical College, HUST, Wuhan, China.

 http://www.abstracts2view.com/wtc/view.php?nu=WTC06L_1100&terms=

 20 http://www.transplantation.org.cn/html/2006-03/400.html , (Beijing Youth Daily, 2006-03-06)

 21 http://unn.people.com.cn/GB/channel413/417/1100/1131/200010/17/1857.html

 (People」s Daily Net and Union News Net, 2000-10-17). Archived at:

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 22 According to Deputy Minister of Health, Mr. Huang Jiefu, http://www.transplantation.org.cn/html/2006-04/467.html (Lifeweekly, 2006-04-07). Archived at:

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(中国語:http://www.minghui.org/mh/articles/2006/7/7/132410.html