　【明慧日本2025年12月24日】毘舎離国（びしゃりこく）に500人の盲人がいました。彼らは目が見えないため、どんな仕事もできず、それぞれが物乞いをして生計を立て、人々からの差別と蔑視を受けながら暮らしていました。

　その頃、シッダールタ太子は成道し、佛陀となられました。佛陀がこの世に現れたという知らせが500人の盲人の耳に届くと、彼らの心はもはや平静ではいられませんでした。なぜなら、佛陀にお会いした者は、あらゆる病苦が消え去り、すべての苦しみが解け、悩みや煩悩から解脱できると聞いていたからです。そこで500人は一緒に話し合って、「私たちは何としても佛陀にお会いしなければならない。お会いできさえすれば、私たちは光を見ることができる！」と言いました。

　先頭に立つ盲人が「その通りだ。佛陀が私たちのところへ来るのを待つのではなく、私たちが会いに行くべきだ。皆、そう思わないか？」と言いました。

　しかし数人の盲人は無力感を込めて「でも、どうやって行くのですか？　私たちは道がまったく見えません」と言いました。

　するとその先頭に立つ盲人は「本当に佛陀に会いたいのなら、誰かに道案内を頼まなければならない。こうしよう、皆でそれぞれ金銭を一枚ずつ集め、500枚そろえて案内人を雇おう」と言いました。

　こうして彼らはそれぞれ物乞いをして金銭を集めました。多くの日々をかけ、数え切れない苦労を重ね、ようやく500枚の金銭を集め、一人の案内人を雇うことができました。

　案内人が先頭に立ち、他の者たちは一人ひとり前の人の衣の裾をつかみ、長い一列となって進みました。その隊列はくねくねと続き、実に壮観でした。

　盲人たちは佛陀のいらっしゃる舎衛国（しゃえこく）を目指して出発しました。道中はさまざまな困難に遭いましたが、進めば進むほど心は明るくなり、足取りも次第に軽く感じられました。ところが、まもなく摩竭国（まかつこく）に入ろうとする手前で、山と湿地を越えねばならず、道の険しさを見た案内人は、言い訳をしてこっそり逃げてしまいました。

　盲人たちはいくら待っても案内人は戻ってきません。「私たちの苦労はすべて無駄になった。あの悪者はお金だけ取って私たちを置き去りにした。どうすればいいのだ？」と皆はパニック状態に陥りました。

　途方に暮れ、進むことも退くこともできないその時、先頭の盲人が前方に水の音を聞きました。そこで皆に手を取り合って、その方向へ進むよう促しました。しばらく進むと、突然「この畜生ども！　目が見えないのか？　俺が植えた苗を踏み荒らしやがって！」という怒鳴り声が聞こえました。

　「申し訳ありません！　本当に私たちは目が見えないのです。見えていたら、こんな過ちは犯しません。どうか慈悲深いお方、舎衛国へ行く道を教えてください。お金はすでに騙し取られてしまいましたが、後日必ず苗の代償をお返しします。決して約束を違えません！」というと、畑の主人は、この500人の盲人が実に哀れだと感じ、深くため息をついて、「もういい。私について来なさい。人を探して、舎衛国まで案内させよう」と言いました。

　「今日は本当に善い人に出会えた！」と盲人たちは驚きと喜びの中で、何度も感謝を述べました。

　畑の主人は人を手配し、盲人たちを舎衛国へ向かわせました。舎衛城に到着した時、盲人らは大喜びしましたが、寺院の住持はこう告げました。「残念ながら遅すぎました。佛陀はすでに摩竭国へお戻りになりました。」

　盲人たちは大いに落胆し、再び摩竭国へ向かいました。苦労に苦労を重ね、ようやく到着すると、今度は佛陀が再び舎衛国へ戻られた後でした。

　すでに疲れ果てていましたが、彼らは必ず佛陀に会えると固く信じ、再び舎衛国を目指しました。「佛陀にお会いするまで、決して諦めない」と心に誓っていました。しかし、舎衛国に着いても佛陀には会えませんでした。

　住持は「佛陀は摩竭国へ行かれました」と同情を込めて告げ、盲人たちはまた引き返すことになりました。

　このように七度も往復した後、佛陀は盲人らの善根がすでに成熟したことをご覧になり、舎衛国の精舎で盲人たちを待たれました。

　佛陀の慈悲の光は燦然と輝き、盲人たちの両眼を照らしました。彼らはついに、長年心から慕い続けた佛陀にお会いすることができたのです。

　「苦しみを救い、難を救う佛陀よ、どうか私たちに光をお授けください。天の光のようなお姿を拝見させてください！」と500人の盲人は一斉に跪き、五体投地して礼拝し、感謝しました。

　その篤い信心をご覧になった佛陀は「これほどまでに誠実な心で、堅い信念をもって長い道のりを歩んできたあなた方に再び光を見せてあげよう」と言われました

　「佛陀の大いなる慈悲に感謝いたします！」と、その場で500人は視力を取り戻しました。皆ひざまずいて、「佛徳は限りありません。どうか私たちに戒を授けてください。私たちは永遠に佛陀に従い、供養いたします」と言いました。

　「よろしい、私の弟子たちよ」と佛陀は言われました。

　こうして500人は佛陀の弟子となり、精進して修行し、最後には皆阿羅漢となりました。

　盲人の世界は闇に包まれ、指の先すら見えません。しかし、この500人の盲人の心は限りなく明るく、佛法への渇望は黄金のように輝いていました。佛陀を探す過程で、どれほど大きな困難や障害に遭っても、彼らの佛法に対する堅い信念が揺らぐことはありませんでした。

　「私は修煉を信じない。佛が見えてから信じるのだ」と言う人がいます。しかし、その人は永遠に佛を見ることができません。なぜなら、心がすでに見えなくなっているからです。目があっても、何の役に立つでしょうか？

　佛法を信じる人を理解できず、「愚かだ」、「目先の利益が見えない」と思う人もいます。確かにその時、その人自身が盲人のようになり、目の前の美しい景色が見えていないのです。

　修煉は神秘的で、凡人にはできないと思う人もいます。しかし、実際はそれほど不思議なことではありません。ただ、清らかで汚れのない心があれば、それで十分なのです。