日本明慧

科学者が“多次元世界”の存在について論じた

我々が夜空を見上げるとき、次のようなことを考えたことがあるだろうか?この宇宙の中で同時に複数の世界が存在し、並行して変化し、同時にこの無限の世界の中で生存し、異なることを行っており、全てのものが、それぞれ特定の存在と変化の形式をもっている。フィクション小説のように聞こえるが、これは量子力学の多次元世界理論(Many Worlds Theory)の骨子である。この理論はプリンストン大学の物理学博士ハフ エヴェレット(Hugh Everett)氏が、1957年最初に発表し、さらに米国の最も著名な宇宙物理学者であり、相対性理論の専門家で、第2時世界大戦時原爆開発のマンハッタン計画と水爆計画責任者の一人である、ジョン・フュ−ラー(John Wheeler)教授によって発展した。その後の50年間、この理論が多くの物理研究者を惹きつけた。オックスフォード大学のデビッド・デウッツ(David Deutsch)教授もその中の代表人物である。

多次元世界理論では、オックスフォード大学の学生、我々その他の人も含めて、無数の世界の中に“副意識”が存在する。「Discover」写真 異なる世界において、我々は異なることを行っているかもしれない。ある世界では我々がこのドアを通ったが、他の世界では、我々の“副意識”のひとつはドアのこちら側に残っているかもしれない。「Discover」写真

デウッツ教授は、世界理論物理学会リーダーの一人とされている。2001年9月、米国の有名な雑誌「Discover」が、彼のインタビューを掲載した。その中で、デウッツ教授は多世界存在の概念を紹介した。

20世紀初め、量子物理研究者が電子など全ての微粒子にある性質を発見した。ある同じ時刻において、微粒子がここに存在すると同時に、別のところにも存在する。つまり、ひとつの微粒子が同時に空間の多くの位置に存在している。あたかも分身術をもっているかのように。しかし我々が本当に観測すると、一箇所しかそれが見つからない。これは我々の日常生活の経験と大きく異なっており、全ての物理科学者を悩ませた。

この現象を解釈するために多くの理論が提案された。しかし、厳密な理論の上には成り立たなかった。20世紀半ば頃になって、多次元世界理論がこの問題を解決することができた。多次元世界理論では、実際に無数の世界が存在して、空間にある全ての位置に世界が存在している。これら世界の中に、それぞれ微粒子は確定した位置をもっている。それは粒子が空間の全ての位置に存在しているように見える。我々は測定するたびに、この無限の世界からひとつを選び出し、粒子がその世界にいる位置が我々の計測値となるわけである。

デウッツ教授の見解では、量子力学のこの理論はミクロ世界に適用できるだけでなく、マクロ世界の全ての層に当てはまる。なぜならば、全てのマクロの物体が、我々自身を含めてこれら微粒子から構成されているからである。ミクロ世界において、無数の実験で量子力学の信憑性を実証した。マクロ世界でも、同じく適用できるはずである。教授によれば、我々一人一人が同時に異なる空間に存在し、我々はこれを意識できなくても、全ての人間だけでなく、この地球、さらに全宇宙も無数の“分身”を持っている。これらは同時に無数で広大な世界の中に存在し、それぞれの世界に特定の変化形式をもっており、実際は単一世界の概念が間違っているのである。

通常我々は多次元世界の存在を感じないし、他の時空間において、我々の分身が何をやっているかも知らない。しかし、制御の利いた実験条件下、例えば“2スリット干渉”などの実験では、多次元世界の痕跡を捉えることができる。デウッツ教授は、この理論は量子力学領域で起こった奇妙な現象の唯一の解釈だと思っている。これは厳密な方程式と大量の実験結果に基づいているからである。

文章の最後に、デウッツ教授は何人かの物理学者が多世界理論を受け入れないことを批判した。伝統的な観念を改めることを恐れ、ただ実用主義の考え方で量子力学を応用しているにすぎない。毎日使っている方程式の裏にある本当の意味を知ろうとしないからだ。かつて、人間は地球が太陽の周りを回っていることを信じなかったことと同様に、もし多世界な見方で物事を見ることを阻んでいるならば、宇宙に対して、もっと新しい、もっと深い認識をもてないだろうとデウッツ教授は括った。

参考資料: DISCOVER Vol. 22 No. 9