一九九九年四月、五月の陰謀(五)
——ある記者の独自調査から
作者:楚天行
【明慧ネット2004年5月16日】
(前文に続く)
◆ さらに増す指令、さらに増す狂暴さ
1999年6月13日、中共中央弁公庁は江沢民の指示を受け、『江沢民同志の中央政治局会議で早急に“法輪功”問題を処理、解決することの演説』を伝達するよう通達文書を発行した。この通達文書の整理番号は“中弁発電 [1999] 30号”であった。この通達文書は直接、江沢民が法輪功迫害運動の発動、推進に強く関わっていることを暴露するものであるため、「極秘」扱いにされ、“各省、自治区、直轄市の党書記、軍隊各大党委書記、中央各部長(主任)、国家機関各部委党組織(党委)の書記、各人民団体党組織書記”に伝達された。
以下はこの通達文書の全文である:
「今年6月7日に、江沢民同志は中共政治局の会議上で重要な演説を行い、“法輪功”問題を生み出す国際的背景と国内の環境を深く認識すること、新しい情勢下で党の思想政治活動、組織活動、宣伝活動および群衆への活動を強化すること、早急に“法輪功”問題を処理、解決することなどについて詳しく論じた。今、江沢民同志のこの演説をみなに送達するが、各党委員会はすぐにこれを学び、討論した上で、実施措置を検討されたし。実施状況は党中央まで報告のこと」
数年来、西側民主社会の一部の人たちは幾つかの理解し難い問題を感じている。すなわち「法輪功学習者の迫害への反対は、なぜ中国政府に向かわず、ほこ先が直接、江沢民個人に向かっているのか? わざと江沢民のメンツを潰すつもりなのか?」ということである。これらの疑問に関してだが、もし、1999年7月20日の公式に弾圧が開始される以前の秘密文書の半数を見ることができれば、これらの疑問はすでに存在しなくなるはずである。要するに、中国政府が法輪功を弾圧しようとしているのではなく、江沢民が法輪功を弾圧しようとしている、ということなのだ。このため、彼(江沢民)は各種の不法な手段を講じ、政府部門の正常な秩序をかく乱し、事実を歪曲して人を脅し、手段を選ばず出世しようと思う人間のくず(例えば、当時の山東省の首長呉官正のような者)を買収し、自らの野望のため利用したのである。
では江沢民は、1999年6月7日に中央政治局会議上で発表した『早急に“法輪功”問題を処理、解決することの演説』の中でいったい何を話したのか?
江沢民は次のように述べている。「最近のとある時期に、国外と国内に二つの大事件があった。一つは、3月24日、アメリカをはじめとする北大西洋条約機構が武力でユーゴスラビアに干渉し、5月8日、公然とミサイルでわが国の駐ユーゴスラビア大使館を爆撃したことだ。これは中国人民と世界の平和を愛する市民を、これ以上ないほど、ひどく憤慨させると同時に、アメリカやその他西洋諸国の唱える人権、民主、報道の自由などの虚偽性を示すものだ……アメリカをはじめとする西洋諸国の敵対勢力であるわが国を『西化(注:西側に同化)』、『分化(注:分裂化)』する戦略的企みに対し、はっきりと目を覚まし、厳重な警戒を保たねばならぬ。同時に党の指導を改善し、強化しなければならず、大幅に各級の党組織と党員たちの凝集力、戦力を増強しなければならないのだ」
引き続き、江沢民は次のように述べている。「もう一つは、『法輪功』問題だ……4月25日以来、私にはずっと考えていたことがある。わが党は80年に渡る革命・建設を行ってきて、国家の政権を掌握し、250万の軍隊を有し、6,000万余の党員もいるし、また大勢の高・中級の幹部がいるのだ。なぜ『法輪功』のような問題が現れ、しかもこれほど騒がせるのだ。言うまでもなく、李洪志一人だけで、これほどの大きな力があるはずはないのだ。『法輪功』問題には、かなり深い政治的社会的背景と国際的背景があるのだ。これは1989年の政治的波紋以来の最も重大な事件だ。我々は真剣に対応しなければならず、深く研究し、有力な対策をとるべきである。党中央はすでに李嵐清同志を責任者に指定し、専門の『法輪功』問題を処理する指導的組織を設立することを決めたが、李嵐清同志がリーダーを、羅幹同志が副組長を担当し、関連部署の責任者が組織のメンバーとして、『法輪功』問題を解決する具体的方法、措置を共に検討する。党中央と国家機関の各部委(注:省庁)、各省、自治区、直轄市はこれに緊密に協力するのだ……内側には厳しく、外側にはゆるく、の原則を守り、厳格に政策上のリミットを規定し、社会の安定は保持する。できるだけ多くの群衆を取り戻し、団結することだ……彼ら(注:法輪功学習者)に思想の上で境界線を引かせ、『法輪功』の団体から離脱させ、党の正しい立場に立ち戻らせるのだ。多方面の教育をしても止めない者には、関連の規定に従い、組織的措置をとる。各部門、地方政府と企業団体は、必ずやこのことを実行しなければならない。このくらいのこともできずに、これ以上、どうやって政治を語るというのか?」
4月25日以来の国外と国内の二つの大事件は、アメリカが中国の駐ユーゴスラビア大使館を襲撃することと法輪功問題である?! これが、江沢民が6月7日の中央政治局の会議上で「早急に“法輪功”問題を処理、解決する」ために提出した重要な理由なのだ。
法輪功問題の実情を知っている人たちは、江沢民のこの怪しげなロジックをまったくもって理解することができない。
これらの機密文書や内部演説を研究しているうちに、私は急に一つの問題に気付いた。すなわち「江沢民はいったいなぜ法輪功を弾圧するのか」についてである。この問題の解釈については、江沢民自身もずっとあらんかぎりの悪知恵を働かせ、避けて通るようにしている。弾圧の初めから今まで、弾圧の理由となるものが、すべて作り話の嘘なのである。しかも、その理由は再三に渡り変わっている。一つの理由が嘘であるという真実を法輪功学習者に暴露されると、江沢民はすぐ別の理由に変えるのだ。最近になると、さらに法輪功学習者の迫害に反対する行動を、弾圧の理由として使うようになった。因果関係をまったく無視しているのだ。いずれにせよ、弾圧を続けることが、彼の目的なのだから。
◆法輪功弾圧のお粗末さ(引用文)
1999年11月12日(金曜日)の『ワシントンポスト』紙に、ジョン・ポンフレット氏の文章『法輪功弾圧のお粗末さ』が掲載されていた。以下はこの文章の一部分である:
中国当局と香港人権組織の情報によると、中国の一つの省内で、少なくとも500名の法輪功学習者が裁判もなく強制労働収容所に入れられ、3,000名以上の法輪功学習者が政府の法輪功に対する禁止令に抗議することで北京で拘留されたことがある。
全国で111名の一般学習者が重罪で起訴され、6名の法輪功学習者が監禁中に亡くなった。これらの数字は、今回の法輪功への弾圧が、10年前の“六四天安門”事件以来、中国で行われた最大の弾圧行動であることを表している。
中国政府は数千、数万の警察官と国家の宣伝機関を動員し、法輪功に全面的な弾圧を行っており、中国の某指導者は、法輪功は中国共産党政権の執政50年来の最大の脅威であると称しているが、今回の弾圧は、中国の指導者が権力を顕示、強化するためのものである。しかし、法輪功への弾圧の時間が長ければ長いほど、政府の法輪功学習者への強圧政策はますます維持しにくくなるだろう。
法輪功の弾圧に関しては、中国共産党の上層部に大きな意見の食い違いが存在しているようである。このことで、中国の指導層の実務的団結のイメージは著しく損なわれている。中国共産党内部からの情報によると、党中央政治局でも法輪功の弾圧について、一致した意見が得られず、江沢民ただ一人だけが法輪功を取り締まりたく考えているようである。評論家の見方によると、江沢民が法輪功とその創始者である李洪志先生を弾圧したく思ったのは、彼(江沢民)が法輪功を手軽に弾圧できると思っていたからであり、特に彼(江沢民)が自分の周囲に多くの法輪功の修煉者がいることを知ってから、より一層、早く法輪功を根絶しようと思ったためである。中国共産党内部からの情報によれば、法輪功を「邪教」と指定したのは江沢民の命令であって、なおかつ彼は全国人民代表大会の場で反邪教の法律が通過するよう要求していたのだ。
内部からの情報源によると、次のような指摘をしている。「はっきり言って、これは江個人の意思なのです。彼が、法輪功を根絶したいからなのです」江は法輪功に対し非常に深く憂慮しているようで、本年9月、ニュージーランドで開かれたアジア太平洋地域経済貿易会議(APEC)の席上で、法輪功を攻撃する小冊子を会議に出席したクリントン米国大統領を含め、各国首脳に配ったのである。江沢民のこの挙動に多くの西側諸国の外交官は戸惑いを感じた。これは中国共産党の指導者がいかに閉鎖的で現実から遊離しているかを如実に証明するものとなったのだ。
法輪功事件について、中国公安部門にも意見の食い違いが現れた。最近公表された事実によると、天津の公安部門は法輪功学習者に北京へ陳情に行くことを奨励していたのだ。事情を知る人は次のように語っている。「公安部門は我々に北京へ行くための車両を提供してくれるほどではありませんが、彼らは『北京こそあなた方の声を聞くべきところだ』とアドバイスしてくれたのです」
法輪功弾圧の問題点として、法輪功は政治にまったく無関係な修煉の活動であり、どう見ても国家の敵対勢力とは言えない、ということが挙げられる。弾圧によって、逆に法輪功の創始者である、李洪志先生を相当、高く持ち上げることとなったのだ。これは中国政府の意図とは正反対のことである。法輪功への弾圧で、中国人民は政府に対する信頼の心を失っている。中国の新聞『南方週末』は最近、数篇の法輪功弾圧を批判する内容の文章を掲載している。西側の学者と中国問題の専門家たちは、この問題を解釈する際、みなある理解し難い部分を避けてきた。すなわち、中国共産党が数千、数万の警察官らを使って、メンバーの多くが退職者である修煉の団体を攻撃し、老婦人たちを警察の車両に押し込み連行する力量に自らの威信をかけている、という理解し難い部分を彼らは避けてきたのである。
◆ たび重なる機密指令を受けた地方の司法関係者は法律の規則を破り、弾圧の残酷さに力を貸した
本文で触れたすべての指令文書は、どれも1999年4、5月の間に発令した法輪功を誹謗し、攻撃する陰謀の一部である。国家と人民の利益のための情報や機密など何一つとしてない。しかし、これら指令文書は国家機密に指定されているのだ。これら個人の意思により作成された文書は、国家の法律の代用物となっていて、この弾圧は初めからすでにまったく違法なものとなっていたのだ。
同時に、これら“機密文書”は、いかなる法律の手順にも従うことなく、何の法律的根拠もない状況下で発令された代物であるため、地方の公安部門がこれを執行する際には、多くの憲法を無視し、法律に違反した悪い事件を引き起こした。執行者がたび重ねる違法行為で詰問された時には、いつも次のように語るのだ。すなわち「これはお上からの『通知』、『指示』なのだ」とか、「口頭で伝達された機密文書だ」とか、「原文のまま伝達することは許されてなく、自分の言葉に代えて伝達されたものなのだ」などと。これらの機密指令は、各地方政府や警察の違法行為の弁解の理由となっているのである。
江沢民の個人的意思、恐怖と恨みを代表するこれら機密文書の活字には、陰謀が満ちている。しっぽをつかまれることを恐れ、指令文書の上には「絶対に機密」、「機密」、あるいは「使用後処分」などの指示が加えられた。はなはだしきに至っては、この2年のうちに、完全に口頭による伝達、文字を残さぬ形へと変貌を遂げている。これらの指示命令を受けた刑務所、強制労働収容所、拘置所などの警官は、監禁されている法輪功学習者に対し、いつも次のように脅しているのだ。「我々は虐待による死亡者の枠をもらっているのだぞ!」、「江××は殴り殺したら自殺として処理しろ! と言われたのだ」と。
一億人いる一民衆の修煉団体に対し、政治の政策に強く関連する問題として、巨大な国家機関が欺瞞と嘘言をもって動いているとは、実に珍事だ。良心と理性に基づいて言えば、ちっぽけな私欲から国家権力を乱用し、無断に“機密文書”を発行する、江沢民をはじめとする少数の陰謀者こそ、真に法律や社会の安定を破壊する犯罪者なのだ。これらの者に、早く法律の裁きを受けさせ、全世界の法輪功学習者への公正さと正義を取り戻さなければばならない。そうしてこそはじめて、全世界の華人は中国大陸の法制を整え、道徳的文明に信頼を寄せる心を持つことができるようになるのだ。
(全文終了)
[1]秦城刑務所を指す。中国政府が“重要政治犯”を監禁、虐待する所。
[2]これは1999年7月20日の弾圧開始から、江の小集団が法輪功を消滅させようとして下した、著名な“口頭文書”である。
(中国語:http://www.minghui.org/mh/articles/2004/5/16/74568.html) |