【明慧日本2019年8月28日】
壺の中の世界から帰って来てから、費長房(ひちょうぼう)は壺公(ここう)について道を学び始めました。
費長房は試練を乗り越える
ある日、壺公は長房の官舎に上がって来て、「わしは酒を持って来たが、一緒に飲もうではないか」と誘いました。酒は階下に置いてあるので、長房は召使に酒を取りに行かせました。しかし、酒が入った壺が重たくて持ち上がらず、そこでさらに数人に行かせ、やはり重たくて持てませんでした。最後に、十数人の人に取りに行かせましたが、酒壺はまるで山のようにビクともしませんでした。
仕方がなく、彼は壺公に報告しました。壺公は何も言わずに階段から下りて、指一本で酒壺をぶら下げて上がって来ました。皆は大変驚き、彼に敬服しました。壺公は費長房と一緒に酒を酌(く)み交わしました。徳利は小さくて拳ぐらいの大きさしかないのですが、中から酒が出るわ、出るわ、夜まで飲んでも酒がなくなることはありませんでした。
昔、道を学ぶ時、師父は何度でも弟子を厳しく試し、関門を通り抜けなければ、道の極意を伝授してくれませんでした。
壺公は酒を飲みながら、費長房に「もう少ししたら、わしは帰るが、お前もついて来るか?」と聞きました。費長房は心の中で特に気にかけることもなく、ただ、家族のことを少し心配しました。そこで、「家族に内緒にしたいのですが、何かいい方法がありますか?」と聞くと、壺公は「それは簡単なことだ」と言って、1本の青竹の棒を持って来て、「これを家に持ち帰り、家族に自分が病気になったと伝えなさい。そして、この竹の棒をお前のベッドに置き、こっそりと家を離れればいいのだ」と言い聞かせました。
長房は壺公の言われる通りにしました。家族は費長房が自分のベッドの中で死んでいるのを見て、悲しくて泣きながら彼の遺体を葬りました。費長房は家を離れて壺公を見つけ、フラフラしてよく分からない場所に来ました。突然、一群れの虎が現れ、牙を剥き出して彼を取り囲みました。一方、壺公はどこかに消えていなくなりました。虎は恐ろしい形相を浮かべ、費長房に噛み付こうとしましたが、費長房は心が平静で動じませんでした。すると、虎は去って行きました。
翌日、壺公はまた費長房をある洞窟に連れて来ました。洞窟の上には巨石がぶら下がり、ちょうど費長房の頭上にありました。巨石をつるしている縄が、どこから出て来たかわからない多くの蛇にかじられ、縄はもう少しで今にも切れそうになりました。しかし、費長房は恐れず動じませんでした。しばらくしてから、壺公は出て来て彼の肩を軽く叩き、「儒子教う可し」と言いました。
壺公は費長房に封じた護符を渡し、「これを使えば鬼神(きしん)を管理することができ、人の病気治療もできる」と言いました。長房は家に帰れるかと心配したら、壺公は一本の竹の杖を取り出し、「これにまたがれば帰れる」と言いました。費長房は壺公に別れを告げて竹の杖にまたがると、突然、眠りに入ったように感じ、目を覚ますとすでに家の中にいました。家族は皆びっくりして、彼が幽霊だと言いました。彼は家族にありのままのことを話しましたが、家族は信じてくれず、墓を掘って棺桶を開けると、中には1本の竹の棒が入っているのを見て、やっとホッとして彼の話を信じるようになりました。
費長房は化け物を退治する
費長房は壺公について行ったのが僅か1日だけだと思いましたが、家族は彼が亡くなってすでに一年も経ったと言いました。彼はまたがって帰ってきた竹の杖を竹藪に捨てた時、それが竹ではなく、一匹の青竜だと分かりました。青竜は自分で帰って行きました。
費長房は帰ってからいつも善事を行ない、化け物を退治し、人に病気治療を施しました。彼が治療した患者は治らない人がいませんでした。時には、彼は人と話をする時、いきなり怒鳴ったりしました。しかし、その目つきや表情はその人に向かっているように見えませんでした。その後、彼は「俺はその人の後ろについている化け物に向けて、怒っているのだ」と言って聞かせました。
不思議な道術
その後、費長房は東海に行きました。当時、東海地域では三年もの間、干ばつの被害に遭っていました。彼は雨乞いの人達に、「東海君(とうかいくん 東海の水神)は、その前、葛陂君(かつはくん 葛陂の池の神)夫人に邪念を持っていた。俺は彼を閉じ込め、彼が訴訟を起こしたいと考えた。その後、その件をすっかり忘れ、そのために干ばつになってしまった。今から俺は彼を赦免し、雨を降らせるようにするので、すぐに雨が降るだろう」と言いました。
費長房の道術はとても不思議で、彼は延々と数千キロも続く山脈を縮めて、人の前に見せることが出来、その山脈がまるで縮小した盆景の地形図のように、とってもはっきりと見ることが出来ました。そして、もしそれを復元したければ、山脈をまた広げてゆき、元の様子に戻すことが出来ました。