――ドウドウが教えてくれた物語(二)
文/子ども弟子 ドウドウ
【明慧日本2023年6月10日】ご飯を食べ終わって、母は食器を台所に片づけに行きました。私の仕事は、食卓を拭くことでした。私がちょうど机を拭こうとしたとき、突然、机の上に落ちた一粒のお米が泣いている声が聞こえました。
お米が泣くなんてことがありえるのでしょうか? 泣き声はとても大きくて、とても奇妙でした。
「なぜ泣いているの?」と私は、彼女に近づいて言いました。
お米は、言いました。「あなたがそんなことを聞くなんて。あなたが私をお茶碗からお米に落としたからです! うわーん、どうしよう! せっかくたくさん苦労してあなたの家にやって来たのに、私をここに置き去りにするなんて…」
私は、「それくらいで何を泣いているの? 私は毎日ご飯を食べるとき少し机に落とすけれど、ほかのお米は泣いたりしないよ!」と答えました。
お米はますます悲しそうになり、声を尖らせて言いました。「あなたは毎日お米を落としているんですか? どうしてそんなことができるんですか! 私たちがまだ田んぼで、小さな稲の子として成長しているころ、太陽のお母さんは私たちに教えてくれました。『頑張って育って、おいしいご飯になるんだよ』。その時、私たちはお米がなんだか分からなかったけれど、それを聞いてわくわくしていたのです」
私は、「そんなことも知らなかったの? お米は炊飯器で炊けばできるよ」と言いました。
私はよく知っています。毎日、母がお米を洗って炊飯器に入れ、水を足してボタンを押し、あっという間に白くて香ばしいご飯が出来上がるのを見ていました。
お米は悲しそうに私を見つめて言いました。「私のたくさんの仲間が、立派なご飯になることを夢見ていたのに、スズメに食べられてしまったんです。そして、虫たちも私たちを食べに来ました。私の隣にいた稲のお母さんを見ると、葉や茎がバッタに食べられてしまって、彼女の稲の子たちはみんな水田に落ちて、魚やカエルに食べられてしまったんです…」
私は、「わぁ、なんて恐ろしい! そんなことがあったのね」と答えました。
お米は言いました。「私は本当に幸運です。これらの災難を免れて、金色の衣服を纏い、立派なお米に育ちました。太陽のお母さんも、私に『素晴らしいご飯になるよ』と言って祝福してくれました。でも、以前はご飯のどこがすごいのか理解できませんでした。太陽のお母さんは言いました。『あちらを見てごらん、人々は働いてお腹をすかせているんだよ』。私が体を伸ばして見ると、 お椀を持った稲刈りの人たちが、ご飯を大口で食べているのを見ました。食べながら『この新米で炊いたご飯は、とても美味しいな!』と言っていました。太陽のお母さんは教えてくれました。『人々はご飯を食べないと餓死してしまう。ご飯を食べて初めて力が湧いてくるんだよ。子どもたちはご飯を食べることで、成長する。みんなご飯無しでは生きていけない。あなたたちが人のお腹に入ることで、人々は生き延びることができる。それは素晴らしいことだと思わないかい? 人々はみんなあなたたちを愛しているんだよ』。私たちお米はみんなそれを聞いて嬉しくて誇らしくて、『私たちは良いお米になります!』と声をそろえて叫びました」
私もそれを聞いて嬉しくなり、「わぁ! あなたたちは本当にすごいんだね!」
お米は言いました。「私は危うく、あなたの家にたどり着けなくなるところでした」
私は急いで「どうして?」と尋ねました。
お米は「とても幸運だったんです。一部の稲穂が脱穀機に入る前に床にこぼれてしまいました。姉妹たちは脱穀機に入ってしまったのに、私たちの何粒かは床に踏まれたり、靴の裏にくっついてどこかに行ってしまったのです。本当に不安でした!」
私は心配そうに、「それからどうしたの?」と尋ねました。
お米は微笑んで言いました。「幸運にも、おじいさんが私を拾い上げて、手のひらでこすって『おお、この穀物はとてもふっくらしている。無駄にするわけにはいかない』と言ってくれたのです。私は『無駄にする』という言葉の意味が分からなかったけど、太陽のお母さんが人々が私たちを愛すると言ってくれたのを思い出しました。彼の温かい手のひらは、きっと愛なのかなと思いました。おじいさんの愛があって、私は一粒のお米としてあなたの家に来ることができたのです!」
彼女も靴の底に張り付いていたかもしれないと思うと心配しましたが、私の家に来ることができて良かったと思いました。
彼女は私が心の中で何を考えているか分かったようで、「全然良くありません! 私は一生懸命に素晴らしいお米になろうと思ったのに、結局は世界一不運なお米になってしまったのです。人のお椀に入ることができたのに、ただテーブルの上に置かれただけ…。私はゴミになりたくない、ゴミになりたくない、うわーん…」と言ってまた泣き始めました。
ああ、私は今自分がどんな大きな間違いをしたか分かりました。それにもっと悪いことに、これと同じことを毎日やっているのです。母が食器を洗っている時、いつも私のお皿にはたくさんのご飯がこびりついていると言って、私がお米を無駄にしていると言います。私はそう言われるのが一番嫌なのです。ああ、これはただの聞きたくない「無駄」という言葉ではなく、ひどいことをしているんだということが分かりました。
私は慎重にお米を拾い上げて言いました。「泣かないで、泣かないで、すぐにあなたを立派なご飯にしてあげるから!」
そう言って、私はお米を食べました。
私はお米が私のお腹の中で嬉しそうに笑っているのが聞こえました。「ははは、やったー! お姉ちゃんたち、妹たち、私もやって来たよ! 私もみんなと同じく、素晴らしい一粒のお米になれたよ!」