文/易文、鄭岩
【明慧日本 2025年1月23日】トランプ米国次期大統領が最近、グリーンランド計画、パナマ運河の管理権、「アメリカ湾」などの構想を打ち出した。中国共産党はこれを大々的に取り上げ、「弱肉強食」「主権侵害」「米国の民主主義と人権は建前に過ぎない」などと非難している。一部の人々は中国共産党の宣伝に影響され、トランプの提案を過剰だと受け止めている。しかし地球儀を手に取り、冷静に見つめ直すと、全く異なる様相が浮かび上がってくる。
米州全体を見渡すと、中国共産党の軟実力による浸透は米国本土にとどまらず、その周辺地域のほぼ全域が中国共産党の勢力圏となっているのが現状だ。
中国共産党は米国を南北から挟み撃ちにしており、カナダとメキシコからは不法移民とフェンタニルが絶え間なく流入している。カナダの対中姿勢は軟弱で、孟晩舟事件では、カナダ国民が中国の刑務所に投獄される一方、孟晩舟本人はカナダで自由にショッピングを楽しみ、警護も付けられている。中国の新エネルギー企業BYDはメキシコに工場を建設し、米国向けの迂回貿易を計画している。メキシコ湾の西と南に位置するキューバとラテンアメリカは中国共産党の「裏庭」となり、ベネズエラは「中国人民(中国共産党)の古くからの友人」と呼ばれ、南米のペルーとチリは一帯一路に署名し、ブラジルはBRICS加盟国の一つとなっている。
パナマ運河は1904年に米国によって建設された。1977年、当時のカーター大統領は協定に署名し、1999年にその管理権をパナマに移譲することを約束した。現在、米国は運河貨物量の74%を占める最大の利用国であり、パナマ運河は米国の安全保障上の軍事要衝でもある。しかし、パナマの実質的な支配権は中国共産党の手中にある。中国共産党は経済的手段を用いて、大西洋と太平洋の軍艦寄港可能な港湾40カ所以上を支配下に置き、その勢力は世界中に及んでいる。パナマ運河の複数の港湾も、すでに中国共産党の管理下にある。
グリーンランドは世界最大の島で、その戦略的資源である希土類鉱物の埋蔵量は米国本土を上回る。希土類は現在、中国共産党が米国の技術封鎖に対する報復カードとして利用しており、2023年と2024年には、軍事用途の広い希土類鉱物の対米輸出を2度にわたって禁止している。
また、北極研究所の報告によると、中国共産党は近年、北極での軍事力を増強しており、グリーンランドはその要となっている。デンマークは中国共産党の北欧における唯一の包括的戦略パートナーで、現在3つの孔子学院を有し、中国との経済貿易関係も維持している。
トランプ氏の発言は、事情を知らない人々には衝撃的に聞こえるかもしれない。しかし、中国共産党への対抗措置という観点から見れば、そこには米国の国家安全保障に基づく深刻な懸念と戦略的な論理が存在する。この問題の根本的な原因は中国共産党にある。中国共産党の米国および世界への浸透と布石が、米国と世界に不安と混乱をもたらしているのである。
中国共産党による米国へのソフトパワーと文化的浸透は、実質的な侵略行為である。この侵略は様々な形態で展開されている。「一帯一路」による米国の包囲網の形成、「孔子学院」などのスパイ活動、世界の工場としての地位を利用した政治的圧力、人民元の国際化によるドルの基軸通貨としての地位への挑戦、メディアの買収による長期支配などが挙げられる。最近の某西側メディアによる法輪功への攻撃は、その典型的な事例だ。
さらに、世論戦・情報戦・法律戦の「三戦」、サイバー空間での攻撃、オンライン・オフラインでの技術窃取と知的財産権侵害、米国の政財界有力者を標的とした「青・黄・金工作」、米国本土における中国共産党の「110海外警察署」による異議者への迫害など、全方位的な浸透が行われている。
いわゆる「青・黄・金工作」は、中国共産党の「超限戦」の手段の一つであり、核戦争以上に強力な統一戦線工作と内部崩壊戦術である。「青」はインターネットによる監視と虚偽情報・金融情報の拡散、「金」は金銭による買収、「黄」は美人計を指す。当初は米国や台湾の政治家のみを標的としていたが、現在では一般市民にまで拡大している。最近の約23万人の米国TikTokユーザーが中国の「小紅書」に移行した事件は、その典型例である。自称「TikTok難民」の米国人たち―Y世代、Z世代からα世代まで―は、不幸にもこの「青・黄・金工作」の標的となった。
Y世代(ミレニアル世代)は1980年代から1990年代生まれで、自己中心的かつハイテク製品依存の傾向がある。Z世代は1990年代から2010年代生まれのデジタルネイティブ、α世代(アルファ世代)はデジタルメディアとスマートフォンに特に依存している。デジタル製品、デジタルメディア、スマートフォンへの熟練した使用と高度な依存は、中国共産党の世界覇権を目指す青色統一戦線工作の格好のターゲットとなっている。
米国というこの若く独特な国家は、天により特別な使命を与えられているかのようだ。歴史的役割と現実の立場、民主主義と憲政、独裁と専制、私有経済と共産主義的独占など、あらゆる面で米国と中国共産党は根本的に異なる伝統と選択を持っている。米国は常に各国(清朝以来の中国を含む)を支援し、世界平和のために同盟を結び、交渉し、戦ってきた。一方、中国共産党は共産主義による世界支配を目指し、一貫して米国を「主要な敵」と位置付けている。
将来、中国が世界の中心となる可能性はあるが、それは中国共産党支配下の国家ではなく、共産党が解体され、伝統的道徳観が回復された中国であろう。それは超限戦によってではなく、共産主義という悪魔を根絶し、神から授かった道徳を回復し、伝統文化と英知を継承することで、世界中の人々の心を引きつけることによって実現される。
現時点において、米国の繁栄なくして自由世界の繁栄はありえず、米国が中国共産党によって崩壊させられれば、全世界が共産主義の赤い悪魔に飲み込まれることになる。したがって、「米国を再び偉大にする」運動は、本質的に徹底した反共産主義運動でなければならない。そして反共産主義・反テロリズムのためには、思想的に共産主義のイデオロギーを明確に認識し、完全に排除する必要がある。一人一人が共産主義イデオロギーの汚染から完全に脱却してはじめて、青・黄・金超限戦による支配と惑わしから解放された視点で世界を見ることができる。