文／起慧

　【明慧日本2025年5月22日】「どうして彼は私より人気があるのだろう」、「どうして彼が利益を得て、私は得られないのか」。嫉妬心は不安や抑うつ、ときには怒りを生じさせ、人を苦しめ、不合理な行動に駆り立てます。以下に紹介する歴史上の2つの逸話が示すように、特に国の政治に影響力を持つ立場の者が嫉妬心にかられて悪事を働くと、国を傾けることさえあるのです。

　嫉妬深さで歴史に悪名を残した女性

　中国の2000年以上前の古典、『戦国策』（せんごくさく）や『韓非子』（かんぴし）に、「鄭袖」（ていしゅう）という嫉妬深い王妃の逸話がでてきます。鄭袖は戦国時代の楚国の君主・懐王（かいおう）の寵愛を受けた妃で、美しく賢いものの、嫉妬心が強い女性です。

　あるとき、隣国の魏国から懐王のところに美女が贈られてきました。懐王はその美女を大変気に入ったため、寵愛を失うことを恐れた鄭袖は、嫉妬心を抱きました。鄭袖は、表面上は美女を大切にし、美女に部屋、家具、衣服、アクセサリーを贈りました。これを知った懐王は、「鄭袖は嫉妬もせずに、私以上に魏国の美女を大切にしている。これはまさに子が親に、忠臣が君主に仕えるようなものだ」と鄭袖を称賛しました。

　しばらくすると、鄭袖は魏国の美女に、「大王はあなたを愛しているけれど、あなたの鼻だけは嫌っています。これから大王に会う時に鼻を隠すと、もっと大王に愛されるでしょう」と言いました。そこで、美女は懐王に会うたびに鼻を隠すようにしました。そのしぐさを不思議に思った懐王が鄭袖にその理由を尋ねると、鄭袖は、「実は、魏国の美女は大王の体の匂いが嫌だと言っていました」と虚偽の告げ口をしました。怒った懐王は、魏国の美女の鼻を切り落とすよう命じ、鄭袖は再び懐王の寵愛を独占するようになりました。嫉妬心により人を害し、鄭袖は歴史に悪名を残しました。

　嫉妬心がとうとう国を滅ぼした

　また、『史記』にも、鄭袖の嫉妬心が利用され、楚国に災いを招いた史実が載っています。秦の惠文王は楚国との交渉のため、自国の領地の一部を楚国の領地の一部と交換しようと楚の懐王に提案しました。以前、秦の名士・張儀が懐王を騙して楚国に損害を与えたことを根に持つ懐王は、秦王に「領地交換は望んでいません。張儀さえこちらに引き渡してくれれば、その領地はただで差しあげましょう」と返答しました。秦王はそれを受け入れて、張儀を楚国に送りました。懐王は後日、張儀を殺すつもりでいたのです。

　楚国に張儀が送られてしばらく経ったころのこと、楚の大臣・靳尚（きんしょう）はすでに張儀から買収され、張儀を救う気になっていました。どうやって張儀を救おうかと考えた靳尚は鄭袖の嫉妬心の強さを見抜き、それを利用しようと一計を案じました。そこで鄭袖に、「夫人はご自身が大王から見捨てられそうな危機にあることをご存じですか」と問うと、鄭袖は「なぜ？」と尋ねます。靳尚は「聞くところによると、秦王は張儀の才能を惜しんで張儀を我が国から取り戻すため、代わりに6県の領地と美女をわが大王に贈るそうです。わが大王は領地の拡大と美女を好みますから、張儀とそれらの交換をきっと承諾なさいます。そうなれば秦の美女がわが大王に寵愛され、早晩、大王の夫人への寵愛は薄れていくに違いありません。今のうちに夫人が張儀のために口添えをして、張儀を釈放させれば、秦王はわが大王に美女を贈る必要もなくなり、夫人は危機的状況を避けられるでしょう」と提案しました。

　これを聞いた鄭袖は懐王に対して絶えず進言するようになりました。「今、大王はまだ領地を秦王に渡していませんが、秦王はすでに張儀を送ってきました。これは大王に対する敬意の表れです。もし大王が秦王に何の返礼もないまま張儀を殺してしまったら、秦王はきっと怒り、楚国を攻撃してくるでしょう」。それを聞いた懐王は考えを変え、張儀を殺さずに釈放しただけでなく、張儀の提案に従って、他国との同盟を破って秦と同盟を結びました。大王のこの判断のせいで、結局、楚国は戦に惨敗し他国に国土を占領され、懐王は秦に亡命してそこで客死し、世間の笑いものになりました。この出来事はすべて、鄭袖の嫉妬心から始まったのです。

　もうひとつ、中国戦国時代の『荀子』（じゅんし）は、「士人が嫉妬深い友人と交われば、賢者は彼に近づかない。君主が嫉妬深い臣下を持てば、賢臣はやってこない。正義を隠す者を欺瞞に満ちた者といい、賢明な人を埋没させる者を嫉妬深い者という。ゴマすり、嫉妬、欺罔（ぎもう、嘘をついて騙すこと）する者は、狡猾で腹黒いといわれる。狡猾で腹黒い役人、嫉妬深く欺瞞に満ちた臣下は、国の恥であり災いである」として嫉妬を戒めています。懐王は鄭袖のような嫉妬深い女性と、靳尚のような欺瞞に満ちた裏切り者を寵愛した結果、国を滅ぼしたのです。

　翻って、現代中国はどうでしょうか。元国家主席・江沢民は法輪功の中国での急激な広がり方と数億人の国民への影響に嫉妬し、無数の嘘をでっち上げて、法輪功を誹謗中傷し、中国の民衆を欺きました。江沢民の嫉妬心が原因で、中国は世界で唯一、法輪功の修煉ができない地域となりました。『荀子』の言（げん）に照らせば、江沢民は中国の恥であり、災いであるに違いありません。