　【明慧日本2025年6月15日】善行を積むことで運命が好転し、逆に悪行は災いを招くという事実は、古今東西の無数の事実によって検証され、人々に畏敬の念をもって読ませます。天の理に従って善を行えば、自ら善い運命を切り開くことができ、やり方を変えて善を行えば、運命運が好転します。例えば、唐の裴度、過去に「飢え死にする運命」と言われたにもかかわらず、善行を積むことで高官にまで昇進しました。宋の竇禹鈞、運命に子宝に恵まれないと言われましたが、他人の紛失した黄金を返したため、後に五人の息子を授かり、登科しました。明の袁了凡、身を修め、善い行いをしたために長生きし、多くの幸福を得ました。次のいくつかの史料に記されている清代の話をあげます。

　(一)、　陽羡（江蘇省宜興市）に一人の書生がいました。彼は同級生とともに、貢生として選ばれるための科試に挑もうとしていました。前年の歳考に合格し、経学や古典の試験で連続して首席を取ったため、今回は確実に選ばれると自信を持っていました。彼は日々、宿屋で仲間たちと詩を詠み、談笑しながら過ごしていました。その宿屋には、一人の優れた相者が滞在しており、皆と良好な関係を築いていました。

　ある日、書生は相者に自分が選ばれるかどうかを尋ねました。すると、相者はしばらく躊躇した後、「本当のことを伝えたいと思っていましたが、なかなか言い出せませんでした」と答えました。書生が「気にせず言ってください」と促すと、相士はついに告げました。「あなたには選ばれる希望はありません。あなたの顔にはすでに暗い兆しが現れています。三日後の三更に、命の危機が訪れるでしょう。すぐに帰宅したほうが良いです」

　書生は驚き、「回避する方法はないのでしょうか？」と尋ねましたが、相者は「時間が差し迫っているため、何とも言えません」と答えました。書生は大きく落胆し、すぐに荷物をまとめて帰ろうと考えました。しかし、周囲の同級生たちは馬鹿なことを言っていると非難し、書生に残るよう説得しました。彼はその場に留まったものの、心には不安が募っていました。

　試験期が迫る中、ある夜、同じ試験を受ける仲間たちはすでに眠りにつきました。書生は外へ散歩に出たところ、遠くから泣き声が聞こえてきました。不審に思い、声のする方へ向かうと、一軒の荒れ果てた家の前で、一人の女性が幼い二人の子供を抱えて泣き崩れています。事情を尋ねると、女性の夫が権勢を持つ家に五十両の借金をして返済できず、強制的に連行されて厳しく督促されていたといいます。そして、借金を返すために妻を売ることを決めましたが、女性は子供たちと離れがたく、悲しみに暮れています。

　書生は事情を理解すると、すぐに宿へ戻り、自身の銀子七十両を持って再び訪ね、女性に渡して言いました。「ここに少しお金があります。借金を返済する手助けになりますように。もし余るようなら、それを資本にして商売を始め、生計を立ててください。そうすれば今後、再び借金に苦しむこともないでしょう」

　女性は涙ながらに感謝し、書生の名前と住まいを詳しく尋ねました。

　書生は宿に戻ると、相者の言葉を思い出し、不安が募って眠れませんでした。やがて夜更けになり、三更の刻となりました。まさにその時、戸を叩く音が響きました。扉を開けると、そこには先ほどの女性とその夫が立っており、書生へ感謝を述べるために訪れたのです。書生は彼らを慰め、送り出しました。その瞬間、背後で轟音が鳴り響き、振り向くと宿の壁が崩れ落ち、書生の寝床を直撃して寝台や敷物は粉々に砕け散っていました。

　翌日、書生は相者に会いに行きました。人々は「予言は外れた」と言いましたが、相者は昨夜の出来事を知らぬまま書生をじっくりと観察しました。そして驚きの表情を浮かべ、こう言いました。「昨夜、あなたは何かをしましたね。顔には陰徳の相が満ちており、しかもそれは非常に大きなものです。これでもう死ぬことはありません。そればかりか、試験で選ばれ、進士となるでしょう。もし私の言葉がでたらめだと思うなら、昨夜あなたはすでに崩れた壁の下で命を落としていたはずです！」、書生はその言葉に深く感服しました。そして、彼は試験に合格し、後に翰林院へ入ったのでした。

　人を救うことは、自らを救うことにほかならず、助けることが巡り巡って自分に返る——因果応報とは、かくも迅速に現れるものです！

（二）、王生という人がいました。彼は、日頃から策略に長け、奸詐な性格で、行うことすべてが天理に背いていました。秋試（科挙の試験）に参加した際、彼の文章は非常に文才があり、試験官は彼を上位に推薦しようと考えていました。しかし、合格者の名簿を作成する際、王生の試験用紙が突然見つからなくなり、名簿作成が終わった後、試験官の袖からひょっこり落ちてきました。試験官は大いに後悔し、王生に「次の機会には必ず推薦する」と約束しました。

　その後、試験官は吏部（官僚選抜を担当する部門）に転任し、王生は大学に進みました。再び試験を受ける頃になると、試験官はちょうど選考部門の職に就いており、王生を見て喜び、彼にふさわしい官職を与えようとしました。しかし、選考の期間が終了する直前、試験官は父の喪に服すため職を離れることになりました。三年後、喪が明けて再び選考部門に戻ると、王生は優秀な学員として官職選考に臨んでいました。試験官は特別に彼に適した職を選び、任官は間近だったが、今度は王生の母が亡くなり、喪に服すため帰郷することになりました。試験官は王生の運命の不運を憐れみ、巡撫（地方の高官）の家の家庭教師として推薦しましたが、赴任する前に巡撫が罷免されてしまいました。

　王生は人生で幾度となく幸運に恵まれる機会がありましたが、成就できませんでした。彼は憤りを感じ、三年間、病気でベッドに横たわっていました。ある日、自らの過去を省みて、ついに悟りました。「私の身に降りかかる出来事は偶然ではない。一生を通じて運に恵まれなかったのは、私が悪事を重ねてきた報いだ。これからは悪を断ち善を行い、心を正しく持とう」と決意しました。

　すると病は回復し、その後生涯善行を積み、人々に因果応報の理を説いて、善を行うことで願いは成就し、天理に逆らい人の心を欺くようなことは決してしてはならないと伝えました。王生の子孫は代々栄華を極め、人々は「善行の報いである」と語り継ぎました。

（三）、お茶専門店を営む商人の錢廣生は、普段から冷酷で、銀貨を五、六千両も蓄えていました。彼の容姿は堂々としており、人々は彼を大富豪と称していました。ある日、相者が現地を訪れました。人々は彼の占いの正確さを称え、多くの者がその鑑定を求めて集まっていました。錢廣生も興味を持って行きました。

　錢廣生が知人の趙某が占ってもらう様子を見ていると、相者は眉をひそめて言いました。「あなたの面相から見ると、頭皮が広く、山根（鼻の付け根）が高く直線的であり、もともとは長寿の相です。しかし、天庭（額の上部）に黒い気が入り込んでいます。何か悪いことをしましたね？　一カ月以内に寿命を全うすることになるでしょう」、趙某は激怒し、その場を立ち去りました。

　錢廣生は、自分の顔立ちに自信があったため、相者に見てもらいました。相者はじっくりと観察し、こう言いました。「あなたは身体がしっかりしており、一生を通じて財産を築く運命にあります。しかし、人中（鼻の下から口の間）が短く、さらに顔の皮膚が薄い。占いの言葉に『面皮が薄いと、人中が長くても寿命は短くなる』とあります。また、『顔の皮膚が鼓のように張っている者は、寿命が三十五年に限られる』とも言われています。失礼ですが、現在おいくつですか？」、錢廣生は「今年ちょうど三十五歳です」と答えました。すると相者は言いました。「率直に申し上げますが、あなたの寿命はあと百日ほどです。亡くなった後のことを早めに準備することをおすすめします」

　銭広生は相金を支払い、家に帰るとひどく悩みました。彼は「先に占った趙某は、寿命があと一カ月しかないと言った。私にはまだ百日ある。まず趙某の占いが当たるかどうかを確かめてみよう」と考えました。

　実は、この趙某は江都県の書吏でした。その年、旱魃（かんばつ）が発生し、彼は救済のための米を配る任務を受けました。しかし、彼は虚偽の名簿を作成し、多くの世帯を偽り、五十石以上の賑恤米を横領しました。最終的にこの不正が発覚し、役所によって処刑されることになり、本当に一カ月内に命を落としました。

　銭広生は趙某の運命が占い通りであったのを見て、さらに不安になりました。ある日、彼は夢の中で、すでに亡くなった元使用人がやってきて言いました。「私は生前、忠義を尽くしたため、城隍廟（じょうこうびょう）で役人として働き、罪人を冥界へ引き渡す任務を担っています。今、罪人の名簿を確認したところ、四名が記されており、その中に主人の名前も含まれていました。そこで、特別に知らせに来ました。まず私は丹陽などの地へ行き、他の者を捕らえ、それが終わり次第、一緒に冥府へ向かいます。すぐに身辺を整理したほうがよいです。三日後には必ず迎えに来ます。一度来たら、待つことはできません」

　銭広生は夢から覚めると、幼い子どもたちや未解決の事柄を思い、どれを優先すべきか分からず、悲しみに暮れて泣きました。近所の老人が理由を尋ねました。そして、こう言いました。「生死の問題に、打つ手はありません。泣いても悩んでも、何の助けにもなりません。聞いたところでは、巨渤禅師（きょぼつぜんし）は得道した高僧です。急いで彼の指示を仰げば、命を救う道があるかもしれません」

　銭広生はすぐに巨渤禅師を訪ね、相者と元使用人の話を詳しく語り、涙ながらに跪いて救いを求めました。禅師は言いました。「人の生死は定められたものであり、逃れることは難しいです。しかし、敬虔に仏を信じ、善行に励めば、福寿は必ず備わります。日頃の冷酷な心を改め、仁慈の心を持てば、天の加護を得られるかもしれません」

　銭広生は家に戻ると、善行に励み、毎日経を唱えて仏を拝みました。そして家族にこう言いました。　「私は趙某が五十余石の賑恤米を横領し、その結果として命を落とすのをこの目で見ました。現在も飢饉がひどく、多くの人々が苦しんでいます。私はこの銀を使って米を購入し、飢えた民を救いたいです」、そうして銀三千両を使い、米を買い飢えた民に施しました。

　その後、銭広生には災難が降りかかることはなく、彼の息子も父の志を受け継ぎ、心を慈しみ、仏を敬い善行を積みました。その結果、茶の貿易は繁盛し、さらに数軒の小売店を開き、一軒の大きな布店も増やしました。

　銭広生は百歳を超えるまで長生きし、白髪でありながら健康で若々しい姿を保っていました。

　百歳の誕生日を迎えた際、彼は商人でありながら、町の内外から数千人もの人々が祝福に訪れました。本城の府や県の役人、大小の官僚や紳士たちも彼の家に赴き、敬意を表して祝福しました。人々は彼を「全福の人」と称えました。

　銭広生は子孫にこう諭しました。「私は本来三十五歳までの命でしたが、禅師の教えを受け、今では百歳を超えました。さらに、子孫にも恵まれ、財産も豊かにあります。これは天地と神々の加護によるものです。お前たちも必ず天理を守り、良心を持ち続け、決してそれを反してはなりません」

　因果は巡り、善悪の報いは必ず訪れるというのは、客観的な真理です。人は皆、良い未来を望みます。（明代の）王華は若い頃、一人の富豪の家で勉強を教えていました。彼は人品が優れ、学問にも秀でていたため、主人の信頼を得ました。

　富豪には子がいませんでした。王華の才能を見た主人は、一つの計画を考えました。ある日、主人は若く美しい妾を王華の部屋に遣わせ、事前に一枚の紙に「人間の子が欲しい」と書かせました。

　妾は王華の部屋に入り、紙を差し出しながら、微笑みながら尋ねました。「いかがでしょうか？」、王華はためらうことなく筆をとり、「恐らく天の神を驚かすだろう」と書きました。

　その後、王華は吏部尚書の官職に就き、賢い息子を得ました。明代の儒学者である陽明先生は胎内に十四カ月もいて、ようやく生まれました。祖母は夢の中で、神が「この子を授ける」と告げるのを見たため、彼を「雲」と名付けました。しかし、五歳になっても言葉を話すことができず、ある高名な人物の助言を受けて「守仁」(心を清らかに保ち、人に対して仁を実践する)と改名すると、初めて話し始めました。

　運が良い者は必ず天理に従って生きます。運が乏しい者こそ、天理をさらに損なってはなりません。

　環境は心によって作られ、心のあり方で環境も変わります。吉を招くか、災いを招くかは、すべて人の心の使い方次第です。善行を積み、善に向かえば、災いを避け、困難が吉へと転じるだけでなく、後世のために福を積み、幸福を築くことにもなります。天理を心に持てば、前途は光明であり、大きく開かれます。　

　(出典「太上感応編例証」、「坐花志果」など)