文／中国の大法弟子

　【明慧日本2025年6月20日】『封神演義』にはこのような物語があります。千年の狐の妖怪・妲己、玉石琵琶の妖怪、九頭のキジの妖怪が捕えられた後、姜子牙ha三体の妖怪を軍営の門の外に引き出して斬首せよと命じました。玉石琵琶の妖怪と九頭のキジの妖怪は、兵士たちによって順調に首を斬られました。　ところが、千年の狐の精である妲己を処刑しようとした兵士たちは、彼女の美貌に惑わされ、目を見開いたまま呆然とし、誰一人として手を下すことができませんでした。全員が手が震えて刀を振り上げることができなかったのです。結局、姜子牙自身が出てきて、法器を使ってようやく妲己の首を斬り落としたのです。これにより、美色（色欲）が人を惑わす力がいかに強く、深刻であるかよくわかります。

　2019年4月25日に明慧ネットに掲載された交流文章「現段階で一部の同修が色魔に妨害される原因」を読んで、私はとても心を打たれました。なぜなら、文中で同修が語っていた「色欲に妨害されている表れ」が、まるで以前の自分そのものであったからです。例えば、「自分の行為を把握できないことがしばしば現れています。これらの学習者はいろいろな措置を講じましたが、効果が少ないため、とても悩んでいます」といった点です。

　思えば、自分が色魔に妨害されていたときの状態は、物語の中で狐の妲己に惑わされた兵士たちと何ら変わらなかったのです。変化自在な色魔に対して、排斥するどころか、むしろ「とてもいとおしく感じていた」ために「手が震えてしまった」のです。なぜなら、色魔がやってくるとき、人に恐怖や痛み、圧力を与えるわけではなく、むしろ最初は心地よさや甘美さ、快楽をもたらすからです。自分が決心できなかった根本の原因は、色魔の正体を見破れず、その偽りの姿に惑わされ、無神論の毒害や、世俗の中で何十年、あるいは生々世々にわたって形成された悪しき観念に引きずられていたからです。世間にある「心甘情願（心から進んで受け入れる）」という成語はまさにこの状態を表しています。心がそれを甘いものと見なし、情がそれを欲し、求めているのです。

　師父は法の中でこうおっしゃっています。「大法弟子よ、色欲は修煉者にとって最も乗り越えがたい関であると私は随分前にすでに言いました。常人のこの情にひどく動かされています。これほどのことでさえ、自ら抜け出すことができません」（『各地での説法五』「二〇〇四年米国西部法会での説法」）

　私は、自分が長年色欲に妨害されていた大きな原因の一つが、ずっとそれを根絶する決心がつかなかったことにあると気づきました。このところ、内に向かってよく探してみると、この問題に関して自分がぐずぐずしていたのは、実はその情が作り出した「美しさ」という幻にずっと引きずられていたからなのだと分かりました。安逸を求める心の影響で、色情がもたらす感覚的な快楽に貪りを抱き、それを一種の「享楽」として見てしまい、断固としてそれを断ち切るどころか、むしろその感覚を名残惜しく追い求めていたため、しばしばその流れに従ってしまっていたのです。

　私は修煉を始める前、自分が幼い頃から色情の書籍や雑誌に耽溺していたことを思い出します。それに没頭している間は、現実の苦しみや悩みを忘れることができ、精神的な慰めを得られるような気がしていました。そのため、それらのものを狂ったように追い求め、人生の苦しみから逃れ、対抗しようとしていたのです。しかし今になって分かったのは、あのいわゆる快感や心地よさというものは、実は人間にとって一種の錯覚であり、まるでタバコや麻薬に依存するのと同じだということです。ただその錯覚を引き起こす手段が、煙草や薬物ではなく、異性の姿や卑しい行為であるというだけなのです。

　さらに深く理解するようになって分かったのは、実際には人間自身があのような感覚を追い求めているのではなく、他空間にいる邪悪な霊体がそれを必要とし、人間の肉体を支配してそれを追い求めさせているのです。人間の精気を吸い取り、エネルギーを補充し、あるいはそもそも前世からの債主がその邪念を人の脳に映し出し、悪事をさせようとしているのです。目的は人を地獄に引きずり落とし、復讐と憎しみを晴らすためです。しかし人間はこれを見分けることができず、修煉者であっても精進しなければ、情に支配されて判別できません。だからこそ、自分がそれを求めていると思い込んでしまうのです。

　もし色魔がその本当の姿で現れたらどうでしょう？　それが醜く恐ろしく、汚くて気持ち悪いものであったなら、誰が欲しがるでしょう？　私だって絶対に欲しいとは思わないでしょう。しかし色魔はたいてい美しい姿で現れ、自分が憧れ、恋い慕う異性の姿を借りて現れ、限りない優しさや愛情をもって人に近づいてくるのです。人はそこで理性を失い、修煉者でも精進していなければ、情に惑わされ、心の中で快楽や心地よさを求めている限り、それに打ち勝つことはできないのです。

　以前こんな話を聞いたことがあります。ある道士が書生に一面は恐ろしい悪魔、もう一面は絶世の美女が映る宝鏡を渡し、「一面だけを見よ、もう一方を見てはならぬ」と言い渡しました。ところが書生は好奇心から美女の面を見てしまい、美女に心を奪われ、最後には淫楽に溺れ精気を失って死んでしまったのです。この物語の鏡は、両面が実は同じものであり、悪魔が本質であり、美女は仮の姿なのです。もし書生がその本質（真実）を見ていれば、恐れ逃げ出して惑わされることはなかったでしょう。このように、色欲の妨害の背後にある色魔の本質を見抜けず、安逸を求める心が観念に操られているために、人は色魔を排斥するどころか、むしろそれを求めてしまうのです。表面上は色魔を求めていないように見えても、実際にはその思想や感覚、肉体の快楽を追い求めているのです。それを与えるのは誰か？　色魔しかいません。つまり、色魔を求めているのと同じなのです。人の心が魔を呼び寄せ、共に舞い、自己反省もできなくなるのです。

　私は気づきました。世の中の名利や情への執着、そして怠惰や精進しない心は、巨大な「私利私欲」です。それは自分一人の快楽や心地よさを優先し、宇宙の無数の生命の生死を顧みない、極めて自己中心的な心であり、まさに無道の昏君・紂王と何も変わりません。私は、色欲の妨害を受けていたとき、自分が苛立ちやすく、怒りっぽくなり、自制がきかず、深い失落感と絶望感に陥っていたことを思い出します。このことに気づいたあの日、私は深く後悔し、どうしようもない悔しさの中にいましたが、同時にどうしても乗り越えるという揺るぎない決意も生まれました。私は正念を発するとき、師父に加持を願い、自分に現れているすべての色魔の妨害、邪悪な要素、さらにはその背後にある旧勢力の極めて邪悪な仕組みを徹底的に取り除いていただけるようお願いしました。するとすぐに、強大なエネルギーが体の内側から四方に爆発するように放出され、果てしなく広がっていくのを感じました。

　私は今悟りました。実際、私たちの法に同化した面から見れば、色魔を取り除くのはとても簡単なのです。なぜなら、私たちは宇宙の大法に同化しており、その法の力は無限だからです。あんなものはただ三界内の敗れた物質にすぎません。肝心なのは、私たち人間の一面がそれに惑わされ、「いとおしむ心」を持ち、それを守り、育てようとしていることです。それが、私たちの本当の自己がそれを消滅させるのを阻んでいるのです。だからこそ、長年にわたってぐずぐずし、この自分を害する妖魔を斬る決心がつかなかったのです。私ははっきりと悟りました――色欲の干渉が取り除けなかったのではなく、内心からそれを本気で除こうと思っていなかったのです。

　現実を見ると、色欲の妨害は年齢にも性別にも関係なく起こります。どんな大法弟子でも、心にその欲があれば、邪悪はあの手この手でその隙間を突き、拡大してきます。今の視点で見れば、色欲は旧勢力が衆生を滅ぼし、大法弟子を滅ぼし、正法を破壊・妨害するための一つの手段となっています。しかし私の体験から言えるのは、もし妨害を受けたとしても、決してそれを認めたり騙されたりしてはならないということです。一時的に旧勢力のこの邪悪な仕組みを否定できなかったとしても、だからといって自責の念や落ち込み、自暴自棄になり、コントロールされ苦しむままにしてはなりません。必ず内に向かって探し、自分とそれをしっかりと区別し、真正面から向き合い、それを暴露する勇気を持たなければなりません。そうすれば、それによって生じた業力や招き寄せた邪悪も多く取り除かれます。私たちが邪悪を暴くことをためらわせる「面子の心」は、邪悪が隠れる最良の場所なのです。邪悪を取り除かなければ、それらはどんどん蓄積し、やがては自分自身さえも抜け出せなくなってしまいます。

　このところ、私は自分が真の修煉者であると自覚し、色欲の心を取り除く決心ができたときには、もう表面の現象に惑わされなくなったことに気づきました。例えば、街中で露出の多い、妖艶な異性を見かけても、以前のように目が惹かれることがなくなりました。多くの場合、「これは試練だ、私は心を動かしてはいけない。この人の背後にはきっとよからぬ邪悪な生命がいる」と思うのです。そして私は、色欲を利用して世人を破滅させようとする色魔を、正念をもって取り除こうとします。その時、自分の中に慈悲の心が湧き出し、かつて自分の中の色欲の念をかき立てていた異性の姿を見ても、石や木を見るような感覚で、まるで関係のない存在のように感じられ、本当に「目に入らない」ようにさえ思えました。

　師父はこう説かれています。「その心を捨てることができさえすれば、その物質自体は作用をなさないもので、真に人を妨げるのはほかでもないその心なのです」（『轉法輪』）

　私は深く体感しました。私たちが心の底から本気でそれを取り除こうと願い、向上したいと真に思うならば、師父は何でも私たちのためにしてくださるのです。