文／中国の大法弟子

　【明慧日本2025年7月1日】1999年7月、中国共産党（以下「中共」）は法輪功への弾圧を始めました。私は信仰を守り続けたために迫害され、家を離れて暮らさざるを得ませんでした。そんな中、ある同修から声をかけられ、70代の女性の介護を手伝うことになりました。私たちは交代で24時間体制の付き添いを行い、毎朝血圧と血糖を測り、食前にはインスリンを打っていました。私はその方を「おばさん」と呼んでいました。

　おばさんは長年、精神的に不安定な状態でした。彼女の息子はこう話してくれました。「父は工事現場の責任者で少し裕福でしたが、外に女性を作って家を顧みず、私たち娘3人がいるにもかかわらず、母をずっと苦しめていました。当時、私と妹はまだ幼く、やがて父は現場の事故で亡くなりました。父の裏切りと死亡の衝撃で、母は精神を病み、家族のことも分からなくなり、妹のことすら認識できなくなりました。私が結婚した後も、母は何度も家を抜け出し、私と妻で探しまわることがよくありました。最近ようやく、私と妻のことはわかるようになりましたが、記憶は回復していません」

　介護を始めた頃、おばさんは昼夜問わず大声で罵声を浴びせ、近所にも迷惑をかけていました。私が静かに「おばさん、もう寝ましょう」と声をかけても、真っ赤な目で歯を食いしばりながら罵ってきました。怖くて寝室に逃げ込み、鍵をかけて一晩中眠れなかったこともあります。彼女が眠ったときには、そっと布団をかけてあげました。

　また、おばさんは糖尿病のため食事制限が必要でしたが、食事が少ないと手をあげることもありました。ある日、茶碗を私の頭に投げつけ、肩に当たったこともあります。拳で殴られ、「ここは私の家よ！　満足に食べさせないなら出て行け！」と怒鳴られたこともありました。最初は心が乱れ、「こんな理不尽な人には何を言っても無駄だ」と思いました。しかし冷静に考え直し、「この介護には意味がある。まず第一に、師父が私におばさん一家へ法輪大法の素晴らしさと迫害の実態を伝え、救済するよう導いてくださったのだ。第二に、自分の住まいや食事の問題を解決する機会でもある。第三に、私は人から指摘されるとすぐ怒り、嫉妬心や闘争心も強い。それを改めるための修煉の機会なのだ。おばさんのような精神的に不安定な人と関わることで、内に向けて探すことが求められていたのだ」と気づきました。

　「あなたは私のお母さんよ」

　私は同修と話し合い、師父の教えである「大きな包容力と、すべての衆生への慈悲心」について理解を深めました。そして、おばさんとその家族に対し、もっと思いやりを持って接しようと、心を一つにしました。おばさんは栄養が足りず、歩くと足が震えていました。私たちは鶏肉を煮たり、ゆで卵や低糖の食品を用意して栄養を補いました。私は同修である姉の家に住んでおり、担当の日には、そこからスペアリブや餃子など、おばさんの好物をよく持って行きました。おばさんの息子は、私たち3人の生活費として毎月400元余りを渡し、私たち二人の給料は合わせて1500元ほどでした。

　おばさんを姉の家に連れて行き、食事の調整をしてあげることもありました。道中では通行人に法輪大法を伝え、その間、おばさんはいつも穏やかな笑顔で隣に立ち、話の邪魔をしたことは一度もありません。暑い夏の日、汗をかきながらじっと私の話を聞いている姿に心を打たれ、「おばさん、聞くの好き？」とたずねると、彼女はうなずいてくれました。その表情から、内容を理解しているのだと感じ、とても嬉しく思いました。姉の家族も、おばさんをまるで親戚のように受け入れてくれました。

　おばさんの息子は母を私の姉の家に連れて行ったことを知り、心配そうに「母は他人の家の物も勝手にいじったり、持ち出したりするんです」と言いましたが、私は笑って「大丈夫です。環境が変わって、喜んでくれるならそれで十分です」と返しました。私はおばさんを自分の家族のように思い、常に気持ちに寄り添って接しました。かくれんぼをしたり、会話を重ねたりして、次第に心が通い合っていきました。

　おばさんの家では、家事をしながら一緒に「法輪大法は素晴らしい」「真・善・忍は素晴らしい」と唱え、彼女もリビングを歩きながら復唱してくれました。これは、とても自然な形でのリハビリにもなりました。

　中秋節の日、姉が私とおばさんを夕食に招いてくれました。その晩、おばさんはこっそり月餅を5個布団の中に隠し、食べようとしていました。私が笑いながら「半分だけ食べて、残りは明日の朝にしようね。食べすぎたら、またインスリン打たなきゃ」と言うと、おばさんは子どものようにしぶしぶ月餅を差し出しました。

　おばさんの気分転換になるよう、よく外に連れ出しました。ある日、私の腕にしがみついて「あなたは私のお母さんよ」と言ってくれたとき、その言葉に胸が熱くなりました。

　20年以上封じられていた記憶が開かれた

　私は仕事の合間にリビングで『轉法輪』を読んでいました。おばさんはその姿を見ると椅子を持ってきて隣に座り、「大きな声で読んで」と言いました。ある日、「その本を見せて」と言うので、「他の本を持ってこようか？」と聞くと、「あなたが読んでるその本が見たいの。手を洗ってくるわ」と返してきました。

　私が両手で本を差し出すと、おばさんも丁寧に両手で受け取り、ゆっくりページをめくり始めました。そして師父の写真を見つけると、突然笑い出し、「私は千年もこの時を待っていたのよ！」と叫びました。私は驚いて言葉を失いました。おばさんはそのまま文字を一つひとつ読み始めました。

　読むうちにおばさんの顔には赤みがさし、目も生き生きとしてきました。難しい漢字が出てくると私に尋ね、私が教えると、机に指で字を書いて覚えながら読み進めていきました。読み終わると、「私にもこの『轉法輪』を一冊ちょうだい。私も学びたい」と言いました。

　それからは、私が毎日読む姿を見て、おばさんも手を洗ってから本を手に取り、熱心に読み始めました。周囲がどれほど騒がしくても、集中して静かに読書を続けていました。

　不思議なことに、徐々におばさんの血圧は安定し、血糖値も5.6前後に下がりました。4～5日観察しても変動がなかったため、インスリン注射を中止しましたが、体調はとても安定していました。息子さん夫婦も、母の身体と精神状態の劇的な改善に大変驚き、喜んでいました。私と同修が法輪大法の素晴らしさや迫害の真実(以下、真相)伝えると、二人ともよく理解し、中共の関連組織から脱退しました。

　おばさんの娘と婿は北京の研究機関で責任ある立場にありました。娘さんは兄から母の様子を聞いても最初は信じられなかったようですが、お正月に新しい服やごちそうを用意して急いで北京から駆けつけました。玄関のドアが開いたとき、私は「おばさん、この人たちは誰ですか？」と尋ねると、おばさんは涙ぐみながら「私の娘よ、私の娘！」と答えました。母娘は抱き合って涙を流し、娘さんは「お母さん、ついに私のことがわかるようになったのね！」と喜び、母の顔を両手で包んでキスしました。おばさんは「孫は来なかったの？」と聞き、娘さんは「今、夫の実家に行ってるの」と答えました。

　娘さんは私の手を取り、「20年以上も母は混乱したままだったのに、ようやく目を覚ましてくれたんです。本当にありがとうございます」と言いました。私は「私ではなく、大法の師父があなたのお母さんを癒してくださったんです」と伝えしました。

その後、娘さんは『轉法輪』を手に取り、ページをめくって読み始めました。私は「おばさん、娘さんに一節読んであげてください」と言うと、おばさんは一言一句間違えずに読み上げました。娘さんはにっこり笑い、「お母さん、これからはお姉さんと一緒に法を学んでいってね」と語りかけました。

　娘さんは続けてこう話してくれました。「私は北京にいて、長い間帰省できませんでした。母が私のことをわからず、精神が不安定な様子を見るたびに本当に胸が痛みました。お正月になるたびに、ただ泣くしかありませんでした。ずっと、母の病気が治るようにと願ってきたんです。でも今、ようやく母が私を認識してくれるようになりました。これからは時間を作って、もっと母と過ごしたいです」

　私は自分がどのようにして法輪大法の修煉を始めたのか、そしてどのように心身が変わったかを、娘さん夫婦に話しました。さらに、「天安門焼身自殺事件」が中共によるでっち上げであることや、法輪大法がすでに100以上の国と地域に広まっていることも伝えました。彼らは、おばさんに起こった変化を実際に目にし、大法の素晴らしさを実感して、その場で中共の組織からの脱退（以下、三退）を決めました。

　おばさんの孫とその妻も北京で働いていましたが、お正月に帰省した際、祖母の劇的な変化を目の当たりにしました。私が彼らにも真相を伝えると、2人とも三退に同意しました。その1年後、孫の嫁は元気な男の子を出産し、おばさんは曾孫に会うことができました。

　おばさんの嫁の実家は近くにあり、ある日、嫁の母が訪ねてきました。私が「この人は誰ですか？」とおばさんに尋ねると、「うちの嫁のお母さんだよ」と、はっきり答えました。嫁の母は感動しながらこう言いました。「何年も私のことをわからなかったのに、今はちゃんと認識してくれたんですね。本当に回復したんだ。よかった！」。そして、冗談まじりにこう言いました。「もう二度と、この子（私）に手を上げちゃだめよ。こんなに親切にしてくれてるのに。もし、また叩いたら、彼女はここからいなくなるよ！」

　するとおばさんは、子どものような表情で私の腕をぎゅっと握り、「行かないで。あなたがいなくなったら私はダメになっちゃう。もう怒ったり、叩いたりしないから」と言ってくれました。それを見て、嫁の母も笑いました。私は嫁のお母さんにも法輪大法への真相を伝えると、すぐに三退を決意しました。

　その後も、嫁の兄が水道管の修理に来たときに迫害の真実を伝えると、彼も三退しました。さらに、網戸の設置に来た業者や鍵の交換に来た人にも同じように法輪功のことを伝えると、皆が理解し、次々と中共の関連組織からの脱退を決めました。

　（続く）