文／中国の大法弟子

　【明慧日本2025年7月11日】私は定年退職した大法弟子で、1996年5月に法輪大法の修煉を始めました。退職する数年前、母が病気になり、両親が私の家に住むことになりました。今、両親はもう90歳近くになります。退職後、ほとんどの時間は病気が多くて一部の生活が自立できない両親の世話をしています。

　この家庭環境が、私の修煉において最も大きい難関になるとは思いもしませんでした。幸いに大法の指導があり、私は苦しみと幸せ、イライラと喜びが混じり合う中で親孝行を実践してきました。高齢者の世話をする際、心を修めるか修めないかの違いは天と地ほどもあると深く感銘しました。

　私は小さい頃から心が優しい女の子で、心から両親を敬う子供でありたいと思っていました。親孝行という伝統的な美徳は、私が自分のために早くから設定した実践目標となりました。特に法輪大法を修煉してから、真・善・忍の基準に照らし合わせることができるので、自分がその目標を実現できるとさらに自信がありました。

　義母のお世話をした8年間で、私は満足のいく答えを出したと思います。だから、自分の両親のお世話をする時に、きっと問題がないと思っていました。しかし、想像もしていなかったことに、それは私の修煉の道で最大の試練となり、私の魔性を露わにし、魔性を取り除く過程は心をえぐるような修煉体験にもなりました。

　1、汚いものを嫌う心を取り除く

　大学に入ってから、私はほとんど両親と一緒に住んでいませんでした。休暇に家に帰っても、数日しか滞在しませんでした。私はずっと両親と良好な関係を保ってきましたが、毎日一緒に生活していると、自分の基準や観念に合わないことがどんどん現れて、特に父親に対して、私の我慢は限界になりました。父はどこでも鼻をかみ、痰を吐き、衛生に無頓着な悪い習慣をどう言っても改めません。近年、父は少し認知症になり、どんなところでも小便をし、よく便器の外で大便をするなど、これらのことで私は非常にイライラしました。

　人間は心がつらい時、それは目が見た嫌なものと相応した、自分の中に良くない観念が存在しているから、という道理を私は分かっています。では、その良くない観念は何であるかというと、結局のところ、自己中心的な考えにすぎないのです。相手を思い遣るならば、まず頭に浮かんだのは、「面倒だな、父がやったことは私に迷惑をかけた」のではなく、父が高齢でしかも認知症になったので、父を理解し許し、受け入れるべきという考え方のはずです。

　ある日、自分はなぜ、汚いものを見ると抑えられないほど怒りが燃え上がるのか、なぜ汚いものを嫌うという問題を克服できないのかと、修煉の視点から考えました。その時に、『轉法輪』の中の言葉を思い出しました。「汚いということを知らないため、平気で便を食べ、尿も飲みます。以前こういう人を一人知っていましたが、カチカチに凍った馬糞をも美味しそうに食べ、常人が覚めた状態では耐えられないような苦しみを嘗めていました」。

　その瞬間、私は悟りました。過去には、弟子に早く業を返せるように、師が弟子の脳の中の汚いものを嫌う部分を停止させて、苦労を通じて業を返させたのです。汚いものが全て悪いわけではなく、それは業を消す役割を果たしています。師父は私に汚いものを感じ取る部分を停止させず、私に汚さが分かっていながらそれを嫌う心理を放下させ、その業を消して父への借りを返し、そうすることで自分を高めるように指導しました。

　以前、心にたくさんの文句があるため、父のやったことを母や兄弟姉妹に話したことがあります。一つは、父の行為がどれほど私を苦しめているかを家族に知ってもらいたかったらで、もう一つは、父のためにこれほど苦労しているのを見せびらかしたい心理もありました。汚さに関して悟ってから、これからは恨みを持って家族にそのような話をしないと決心しました。なぜなら、そのことは私に対して起こったことで、私が修煉を通じて向上すべきことだからです。もし私が向上しないで、またそれを父を見下す話題としてペラペラ言いふらすならば、年配者を尊重しないこととなり、口を修めないことにもなります。

　実際、汚いものを嫌う心理の背後に恨む心、嫌悪、見下す心、支配したい心など多くの心理が存在すると思います。汚いものを嫌う心を取り除くには、もっと深いところに隠れている様々な人心を掘り出して除去しなければなりません。

　2、恨む心について

　多くの人心が入り混じると、主に作用している人心がどれかを見分けるのは難しくなります。じっくり考えたら、父を汚いと感じるのは表面的なことで、その背後にはもっと深い理由があると分かりました。

　ふつう、大便は尿よりもっと汚いと思われますが、母が自立してトイレに行けないことに対し、私は少しも抵抗と恨みを持っていません。母が7年前に受けた腸切除手術の結果、腸の機能が失われ、大便をコントロールできなくなって、知らず知らずのうちに大便が漏れます。しばしばズボンや布団、床、トイレを汚していますが、母の大便を処理することに対して私は嫌な気持ちを一つも感じていません。

　一体、なぜ私は父親の汚さにこんなにも反感を抱くのでしょうか。深く考えてみると、自分の中に両親に対してそれぞれの評価があると気づきました。母は賢くて能力が高く、心が優しいですが、気性が激しくて、とても支配的です。しかし、母がこのように強くなければ、私たち4人子供のうち、3人も大学に進学することは不可能だったでしょう。父が農作業以外は何もできないからです。若い頃、母は父に何らかの技能を学ぶように言いましたが、父は全く聞き入れませんでした。以前、父は手動のカミソリで髭を剃って、妹が電動カミソリを買ってあげましたが、どんなに教えても父は使い方が分からなくて、ボタンを押すことさえできませんでした。

　父の体は母より丈夫で、耳が遠くなくて、目も悪くないですが、ただ近年は少しボケています。母は耳が遠くなり、大声で話さなければ聞こえません。目は白内障になっているが手術ができない状態で、今は人の顔も識別できないほどになって、半分の時間は寝たきり状態になっています。このような状況下でも母は時々、父の世話をしなければなりません。父は何も覚えられないため、母が健康だった時に父に家事を全くさせませんでした。母が何の家事もできなくなっている今、父は何の助けにもなれないため、母は父に対して強い不満を持ち、よく私たちに愚痴をこぼしています。父は口達者で、何をしても上手くいかず、教えられても聞き入れません。妹は両親と一緒に住んでいた頃、父とよく喧嘩をしていました。そのため、私の頭の中には「母は良い、父は悪い」という考えが根付いています。その考えが原因で父を見下して、父に私の思うとおりになってほしいなどの執着心が生まれました。

　そうですね、ずっと父に対して恨みを持ち、見下しているため、愛情が生まれることができませんでした。実は、以前から自分は父に対して冷たくて、イライラしていると分かっていて、自分を改善しようとしても数日で元に戻ってしまいます。このままではダメで、大法の基準に達していないと分かっています。

　修煉してから、人生はこの一生だけではなく、人生は生まれ変わりの連続であり、人間は前世で誰にどのような借りをしたのか分からない、との道理を知りました。現世、父は私の親になって、私の修煉を助けるために来ており、私はこの大切な縁を無駄にしてはいけません。こう考えると、人心を深く掘り下げていこうと決心しました。

　3、自分の好き嫌いで相手を区別して扱う心を取り除く

　ある日、師父のお教えを思い出し、心が突然明るくなりました。それは、自分が良いものと悪いものの区別を持つようになったため、それによって人や物事に対する好き嫌いが生じ、心の偏りや波動も現れる、ということが分かりました。

　もし何ごとに対しても自然に任せて、抵抗せず、拒まず、これが良くてあれが悪い、これが美しくてあれが醜い、これが清潔であれが不潔だという分析、区別をすることなく、ただ受け入れて適切に対処するだけであれば、そのような心境で発する念こそ、はじめて慈悲の念といえます。

　自分に対してこのような高い基準を設けた後、その日から尿や痰を見ても心が動じず、父への愛が心から湧きだし、両親に平等に優しく接することができるようになりました。温かいエネルギーが心の中の固い氷を溶かし、和やかで喜びに満ちた状態を感じました。

　このような環境で慈悲、無為の状態に達することができ、とても師父に感謝しています。そして、どんな観念も持たずに喜びも怒りも、恨みも責める気持ちなどの負の感情を持たないことは、とても素晴らしいと実感しました。師父に感謝します、両親に感謝します。

　4、「尊重」に対する理解

　心の中では両親を敬い、尊重するべきと分かっていて、これは私が強く望んでいることでもありますが、なぜか実生活の中でそれができず、父に怒ったりイライラしたりしてしまって、その理由が今分かりました。それは、日常的に私心だらけの考えが生じ、その考えが私の身体を支配しているからです。そういった考えをずっと改善できていないため、結果として両親を尊重することは言葉だけの空論になっています。

　現実生活の中で、私は具体的なことにおいて両親の世話をしていても、内心は苦しくてイライラして、親に難しい顔色を見せることもしかねません。親の世話を長くする人がなぜ心身ともに疲れ果てたり、うつ状態になったりするのか、彼らが内心の苦痛を解消できないからです。その結果、身体と精神の状態はどんどん悪化し、快適で和やかな状態に達することはさらに難しいのです。

　一方、父に対する態度を変えた後の私、心が軽やかになり、精神的にも楽になりました。以前は「尊重」について、しっかり生きる人間だけが周りに尊重される価値がある、そうでなければ尊重しなくても良いと思ったのですが、今はそうは思わなくなりました。本当の尊重は無条件であり、どんな状況でも相手を尊重すべきだと認識しました。相手を尊重しない結果は何でしょうか。自分の基準で相手を区別して、相手を見下したり嫌ったりするような悪い考えが現れます。修煉者として、外部の変化によって真の自分が変わることなく、心性を守り、心を乱されることがない状態を常に保つべきです。

　結び

　同僚や同じ団地の隣人は、私が一人で両親の世話をしていることを知っており、「大変だね、本当に疲れていると思うよ」、「見た目は元気だけど、疲れてないの？」と言っています。彼らが言う「疲れ」には、身体的な疲れのほか、心の疲れ、精神面のストレスが含まれており、私にきっと何か不満やネガティブな考え方を抱え込んでいると思っているようです。しかし実は、法輪大法を修煉しているため、体は健康で疲れを感じることはありません。体調があまり良くない時もあり、その時に精神面のプレッシャーを感じて、何をいっても高齢者の世話をする生活は、そうしない生活ほど気楽ではないと実感します。

　先日、『米国法会での説法』「ニューヨーク座談会での説法」を読んだ時、「つまり主元神以外に、あなたの体の中に人の生命を構成する他の要素があります。肉体自身にはまた親の形象を持つ生命があります。父親、母親の形象も生き物です。人体は元々非常に複雑なのです」という言葉にひらめきました。「二人の高齢者の世話を負担している」と重く思わないほうがいい、もともと自分の中に父と母の形象があって、その形象を自分と一つにすることで区別がなくなり、心も軽やかになるのではないかと悟りました。父と母を自分自身の一部として扱うことで心が軽やかになり、その感覚は本当に素晴らしいものです。

　以上、自分自身の内面の変化を書き出して、法輪大法は根本から人の心を変え、道徳を高める力を示すためです。私心だらけ、せっかち、焦りやすい私を優しい人に変えたのは、慈悲深い師父のおかげです。