　【明慧日本2025年9月3日】（前文に続く）

　「いたずらっ子」のような車

　約1年前、車が故障したため、中古のジープを購入しました。ところが、わずか2日後には車内のあちこちで警告灯が点灯し始めたのです。整備工場で点検してもらうと、整備士は「大した問題ではない。センサーが敏感すぎて、コンピューターが誤作動しているのだろう」と言いました。しかし1カ月後、エンジンランプが点滅し、ついにはシリンダーの一つを交換するはめに。さらに、他にも複数の修理が必要だと判明しました。

　しかたなく再び修理工場に持ち込み、いくつかのセンサーを交換しましたが、警告灯は消えずじまい。その後もエンジンオイルを交換し、タイヤを2本新しくしても、走行状態は改善しませんでした。

　念のためすべてのタイヤを点検してもらいましたが、見た目には異常なし。ただ1つ「瀕死状態」のホイールスピードセンサーが見つかりました。しかも、それは交換したばかりの部品でした。他にも今後こまごまと修理が必要になるかもしれないとのこと。さらに電装系の警告灯も点滅し始め、調べると冷却液が漏れており、ラジエーターの交換も必要になりました。

　この車を私に売ったのは、私の最初の清掃顧客でもあるディーラーでした。彼は申し訳なさそうに部品代を負担してくれ、私が支払ったのは工賃だけでした。

　修理を終えた車を夜、喜んで家に持ち帰りました。しかし費用はやはり高額で、ホイール全体の交換も含まれていました。それでも警告灯は点灯したままで、走行中は激しく振動し、アクセルをどれだけ踏んでも力が出ず、燃費も異常に悪いままでした。念のため、予備としてシリンダーとスパークプラグのセットも購入しました。家族や友人たちは口を揃えて「早く買い替えたほうがいい」、「そんな欠陥車は捨てなよ」と言いました。でも、第一に新しい車を買う余裕がありませんでした。そして第二に、なぜかこの車には「何か縁がある」ような気がしてならなかったのです。

　ある時ふと思いました。この車のトラブルは、もしかすると私の修煉状態と関係しているのではないか？

　最近の私は、修煉が緩みがちで、体のあちこちが痛み、毎日自分を奮い立たせてなんとか煉功しているような状態でした。学法中も雑念が多く、次から次へと心配事が浮かんできます。仕事の都合で世界同時発正念に間に合わず「後でやろう」と思いながらも結局できなかったり、精神的にも不安定になったりしていました。長く離れて暮らす夫との関係も難しく、それも影響してか、私はますます抑うつ的になっていたのです。法に照らして内に向かって探そうと努力しても、気づけばまた消極的な感情に引き戻されている——まるで、井戸の底から這い上がろうとしても、何度も滑り落ちてしまうカエルのようでした。

　「もう、このままではいけない！」その瞬間、私ははっきりと気づいたのです。この車の不調は、まさに私自身の内面の反映なのだと。なぜ何度修理しても根本原因がわからず、警告灯が消えないのか？　それは、私自身がまだ根本的な執着心を見つけ出せていないからではないか？　けれども、それはいったい何なのか？

　私は一歩引いて時間を取り、真剣に内に向かって探すことにしました。思い出したのは、息子とのある会話です。師父は、息子の言葉を通してよく私に気づきを与えてくださいます。その時、私たちは大法について話していました。息子は言いました。「お母さんって、いつも悪いことばかりに目を向けてるよね。修煉してるのに、全然幸せそうに見えない。僕には、大法を「幸せになるための手段」として使ってるように思える。ただ瞑想してるだけじゃなくて、心から変わらなきゃ意味ないでしょ？」

　その言葉は、まるで心に重い一撃を受けたようでした。私はすぐに、これは師父の導きだと悟りました。そして、息子にこう言いました。「修煉は、私が歩まなければならない道なの。大法は、誓った使命を果たすためのもの。そして本当に、大法のおかげで私は元気でいられるのよ」。けれども、心のどこかに落ち着かない感覚がありました。修煉とは、本来とても厳粛なものです。息子の言葉は正しく、私は日頃から不平を口にし、修煉者らしく人生を穏やかに受け止める姿勢を欠いていたのです。

　なぜ私は、大法のプロジェクトやイベントに参加している時は充実感を得られるのに、日常生活では抑うつに陥るのか？　私は、本当に心から大法を修めているのか？　もしかすると、私は大法を「心の空虚を埋める手段」や「病気や困難を避けるための保険」のように捉えていたのではないか？　そんなふうに考えた時、私は大法弟子としての本質に立ち返る必要があると強く感じました。私が大法に安心感を求めるのは、心の奥底に「恐れ」があったのです。それは生きることへの恐れ、拒絶されることへの恐れ、失敗への恐れ、孤独、そして子どもが社会の汚染に染まり、救われないのではという不安と過ちを犯すこと、修煉が成就できないことへの恐れなどでした。そうした恐れが、私の中に深く根を下ろしていたのです。

　これらの「恐れ」は、以前から表面化していたにもかかわらず、私は本気で向き合い、断ち切ることをしてきませんでした。この「恐れ」こそが、修煉への緩みや抑うつの根本原因であり、妬み・恨み・争い・見せびらかし・焦り・情への執着など、さまざまな人心を生み出す根源だったと、今はっきりと確信しています。さらに私は「時間」への執着にも気づきました。それが「恐れ」をさらに強めていたのです。

　もしかすると私はずっと、常人の情でもって大法を見ていたのかもしれません。根本的な執着を捨てず、他の執着心を抱えたままいたのです。心の一部ではまだ、人心を手放したくない、常人の中で安逸な生活を求めていたのかもしれません。

　この「生きること」や「排斥されること」への恐れ、その根っこには、私の困難だった幼少期があります。そしてそれが、私の妬みの心を生み出していました。小さい頃、私は「温かい家庭」に強く憧れていました。しかし、現実は逆で、両親は離婚し、父は再婚してふたりの息子を持ち、安定した家庭を築いていました。一方の私は、父のいない家庭で、常に恐怖にさらされながら育ちました。今でも、幸せそうな家庭を見ると、心にぽっかりと穴が開いたような気持ちになります。そして、それに続くのは「罪悪感」です。私の子どももまた、父親のいない環境で育ったからです。私は、自分が親としても失敗しているように感じていました。

　このような「恐れ」こそが、私の根本的な執着を作り上げたのです。それが私を「師父の弟子にふさわしくない」と思わせ、修煉への精進を妨げ、真の修煉者としての道を阻んでいたのでした。

　今こそ、この障害を取り除くときで、修煉を心から大切にし、自分自身をも、もっと大切するべきだと思いました。

　そう決意した私は、車を売ってくれたディーラーに連絡し、再度の徹底診断を依頼しました。彼が勧めてくれた修理工場に予約を入れて訪ねると、整備士は、やや冷たく無愛想な様子でした。私の心も落ち着かず「大丈夫かな」と少し不安に。でも、もしかすると彼は疲れていたのかもしれません。今回は診断だけの予定だったので、私は静かに様子を見守ることにしました。

　その間も内に向かって自分を見つめ「自分も人に冷たくしていた時がなかっただろうか？」と考えました。忙しい時や余裕のない時、私も無意識にきつい態度を取っていたことを思い出し、これは修煉者として見直すべき点だと気づきました。

　やがて整備士は、車の不調の真の原因を突き止めてくれました。それは「モジュール」という電子制御用の基板の一つの故障でした。完全に機能停止していたため、車は正しく情報を読み取れず、警告灯が常に点灯し、様々な不調が出ていたのです。

　私は安堵しましたが、整備士は続けてこう言いました。「この部品、もう製造されていない可能性があります。代替品が見つかる保証はありません。見つかっても1000ドル近くかかりますし、この車ももう10年落ちです。もし今後トランスミッションが壊れたら、さらに費用がかさみますよ」

　私は一瞬、頭の中が真っ白になりました。まるで悪夢のような気持ちでした。料金を尋ねると「今回は無料です」とのこと。私は深くお礼を言い「次回、必ずチップを持ってきます」と約束しました。彼はとても疲れて見え、本当に体を酷使して働いているのが伝わってきました。

　数日後、私は約束どおりチップを持って再び工場を訪れ、真相資料も一緒に渡しました。彼は喜んで受け取ってくれました。さらに、彼は私の車の点火コイルとスパークプラグの交換まで手伝ってくれたのです。私もお礼として、彼の自宅を一度、無料で清掃させていただきました。お互いに温かい気持ちが生まれ、とても良い関係になりました。

　そして今、私の車はまるで新品のようにスムーズに走っています！　私が内に向けて、根本的な執着心を見つけたことで、車の問題も根本から解決されたのです。

　これは、私の現在の修煉段階で心得でした。これからも、三つのことを着実に行い、修煉にしっかりと取り組み、正法の進展に追いつき、自らの誓いを果たし、師父と共に本当の故郷へ帰ります！

　（完）

　（2025年米国フロリダ州法輪大法修煉体験交流会原稿）