文／日本の大法弟子

　【明慧日本2025年10月31日】（前文に続く）

　三、新しい仕事、新しい磨き

　昨年の春から、私はフリーランスになりました。次にどんな仕事に就くべきか迷っていたとき、ふと頭に浮かんだ「突発的なひらめき」が、新しい仕事を始めるきっかけを与えてくれました。妻（同修）と私は楽団の活動に参加しており、普段、楽器のメンテナンスは私の担当でした。ある時、フルートのキーの奥がどうしても拭けないことに気づき、「いっそ全部分解してみよう」と思いつきました。しかし、一度も分解したことがないため、「元に戻せなかったらどうしよう」「音のバランスが変わったらどうしよう」と心配になりました。

　それでもどうしても試してみたくなり、「もし壊したら、新しいのを買ってあげればいい」と思い切って、妻のフルートを分解しました。妻が帰宅して、机いっぱいに並んだ部品を見て、しばらく呆然としていました。

　私は慌てて「大丈夫、大丈夫」と妻をなだめましたが、内心はとても不安でした。ところが幸いにも無事に組み立て直すことができ、妻が吹いてみると「とてもいい感じ」と喜んでくれました。　

　こうして、私の「楽器修理」という新しい仕事が始まったのです。最初の一本のフルートが売れてから、一歩一歩手探りで前に進みました。今思えば、すべてが偶然ではなかったのだと思います。もしあの時、うまく組み立てられなかったら、この発想自体が生まれなかったでしょう。

　この仕事はとても気に入っていますが、専門的な訓練を受けたわけではなく、独学のため、自信を失いそうになることもしばしばです。それでも他に良い選択肢もなく、「もう少し続けてみよう」と決めてやってきました。

　ちょうどその頃、近所にプロのフルート修理師がいることを知り、修理を依頼した際に作業を見学させてもらいました。この修理師はよく面白いことを言い、例えば、「このキーたちをちゃんとバランスよく整えると、みんな幸せになるんだよ」。その言葉に私は深く感動し、「そうだ、万物にはすべて魂があり、正しく整えてあげることは、誤った状態から本来の姿に戻してあげることであり、楽器も幸福を感じて、美しい音色を響かせることができるようになるのだと思いました。

　さらに、本来廃棄されるはずだった楽器を修理によって新しく蘇らせ、まるで新たな命を与えられたかのように、それはきっと喜ぶでしょう。自分自身も手に生命が蘇るのを感じています。ここには過去の仕事における科学的法則が少しずつ減り、修煉上の悟りが増えています。

　もちろん、物事には常に両面があります。試練も少なくありません。例えば、修理の最中、ハンマーで軽く叩いたつもりがへこみを作ってしまったり、バネを折ってしまったり、ネジが引っかかって取れなくなったりすることもあります。そんな時は冷や汗が出ました。フルートは高価なので、少しでも損傷させれば売り物にならなくなります。しかし、困難に直面した時はまず内に向けて、「自分がどこかできていないのでは」、「自分にまた何か執着があったのでは」と探し、執着を見つけると、不思議と解決の道も見えてくるのです。

　楽器を販売する過程では、さらに多くの試練があります。ある時、出荷前の試奏で良い音が出て、フルートの状態に自信があり、いい値段で売れることを期待していました。良い価格で売れたのですが、試練もそこから始まりました。

　お客様はフルートを受け取った後、1つの音が出ないと言って、解決策を相談してくれました。私は一瞬、頭がぶんぶんしました。中古楽器の販売では、通常「返品・交換不可」と明記してありましたが、しかし落ち着いて考えてみると、何事も偶然ではなく、私は「修煉者として、まず相手のことを考えなければならない」と思い直し、全額返金と返品を承諾しました。

　しかしお客様は「笛を選ぶのに一カ月以上かけた。この楽器が一番合っていると思ったから、あなたを信頼して買ったのに。返品するなら、その時間の損失も補ってほしい」と怒って言いました。そして、商品説明に「調整済み」とあったことを理由に、メーカーでの修理を要求し、その修理費や関連費用を私が負担するように求めました。

　楽器がどんな状態であるか、一つ音が出ない原因が、この客の演奏技術の問題であるかもしれない。音楽は主観の判断で、説明もしづらいのです。メーカー修理は通常の修理店よりも高額です。それでも「自分にも問題があるかもしれない、すべては偶然ではない。修煉者としてこの問題を解決しよう」と思い、私はその修理費とその他の費用を支払いました。

　ようやく終わったと思った矢先、お客さんは「修理結果を報告します。もしまだ不満があれば再度メーカー修理を依頼します」と連絡してきました。修理結果を待っている期間、私は静かに内に向けて探し、自分は心が動じ、人に言われたくない心、争う心が見えてきました。やがて修理後の結果が届き、「音は出るようになったが、まだ少し不安定で、再度メーカーの徹底的な修理を依頼する」とのことです。

　この結果を聞いて、無理な要求だと感じました。修理費はすでに数万円を支払っているのに、工場で大規模なオーバーホールをすると20万円以上かかり、それは楽器の元の価値を超えてしまうからです。これは楽器を無料で提供しているのと同等です。すでに高額な修理費を支払っているため、それ以上の対応はできないと交渉してみました。

　しかし、お客様は納得せず、これは私たちの責任だと考え、工場に送り返して大規模な修理を要求しました。さらに返品に応じる場合の精神的苦痛に対する賠償も要求しました。さらに「民法違反」していると主張し、さらにそれ以上のことを要求してきました。

　その時、私は師父の『轉法輪』第七講「嫉妬心」の中の一節を思い出しました。「修煉者は自然に任せることを重んじるべきです。自分のものなら、無くなることはないし、自分のものでなければ無理に争っても得られません」。

　「これはもしかすると、私が以前に人に対して負った借りなのかもしれない」と思い、支払いを決断しました。妻もこの件で心を痛めており、私もどうすべきか迷いましたが、内に向けて見た時、利益心が消えたのではなく、利益が心を揺さぶられるほど大きくなかったこにと気づきました。これも師父が与えてくださった試煉だと悟り、落ち着いてお客様に大規模な修理費用を返金し、すべてがようやく終わりました。その瞬間、胸の重みがすっと消えました。

　しかし間もなく、別の客からも賠償要求がありました。二度目の件を処理した後、私は静かに自分を省みました。二度も続いたということは、まだ見つけていない執着があるに違いありません。深く探っていくと、利益心の下に「嫉妬心」が隠れていることに気づきました。実は、賠償金を支払うことよりも、「悔しさを飲み込むこと」「心を動かさないこと」の方が難しかったのです。中には「そんなに弱気になるな」と言う人もいましたが、私はそれが弱さではないと理解しました。堂々と嫉妬心を放下しなければなりません。

　さらに深く探すと、その妒嫉心の奥には、妻に対する「情」が潜んでいました。それは二つの形で現れていました。一つは「妻を悲しませたくない心」、もう一つは「妻を恐れる心」です。これらの心が無意識のうちに私を支配し、問題を避けようとさせていたのです。それは「対応策」を取ることであって、本当に執着を取り除くことではありません。もうこの執着を避けるわけにはいかない。思い切って取り除こう、と決意しました。

　気づけば、楽器修理の仕事を始めて一年半が経っていました。収入が安定せず、突発的なトラブルも多く、日本では音楽のレベルが高く、顧客の要求も厳しいため、なかなか安定しません。何度も「もうやめようか」と思いました。それでも不思議と、行き詰まるたびに新しい道が開け、何度も救われてきました。

　最初は偶然のように始めた仕事でしたが、もしかするとこれは師父が私に与えてくださった修煉の道なのかもしれません。もしそうであるなら、この道はたとえ狭くても、必ず通じているはず。そうでなければ、この出会い自体がなかったでしょう。

　最近は少しずつ良い循環に入り、技術も向上してきました。時には、まるで霊感が湧いてきたかのように、突然「こうすれば解決できる」とわかることがあります。師父がいつも側で弟子を見守ってくださっていることに、心から感謝いたします。ただひたすら精進し、真に着実に修め、、師恩に報いたいと思います。

　結語

　子どもの頃は両親とともに修煉をし、成人してからは仕事の中で修煉をし、そして今はまた新しい環境の中で修煉しています。転び、つまずきながらも、師父は何度も私を泥沼から引き上げてくださいました。
そのたびに、再び精進する力を与えてくださいました。

　もうすぐ四十歳になります。これからは自分の責任と使命をしっかり果たし、残されたわずかな時間の中で誓約を果たし、悔いを少なくし、師父について家へ帰れるようにしたいと思います。

　師父に感謝申し上げます。
　同修の皆さまに感謝申し上げます。

　合掌

　（2025年日本法輪大法修煉交流会の発表原稿）