　【明慧日本2025年10月31日】（豪州明慧記者の報道）オーストラリアを訪問中のカナダの国際人権弁護士デービッド・マタス（David Matas）氏が10月22日、ブリスベンのオーストラリア放送局（ABC）に出演し、著名な司会者のインタビューを受けた。インタビューでは、中国共産党（以下、中共）による法輪功学習者（以下、学習者）からの生体臓器収奪の調査経緯について語った。マタス氏はオーストラリアの移植医療関係者に関連情報への関心を呼びかけ、さらに中共が今も続けている反人道的行為を阻止するための立法の推進を再度訴えた。

　マタス氏は今回のオーストラリア訪問中、今週オーストラリア連邦議会議事堂で開催される円卓会議にも参加し、スピーカーの1人として、中共による法輪功への越境的弾圧がオーストラリア社会に及ぼす脅威について議論する予定である。同時に、オーストラリア各地から一部の学習者もキャンベラに集まり、3日間にわたる請願活動と中共による法輪功迫害の実態を伝える活動を行い、マタス氏も集会で講演する予定である。

2024年6月、オーストラリアのスカイニュースの生放送番組でのインタビューにおいて、マタス氏は中共による生体臓器強収奪の罪悪の深刻さを明らかにした（写真は動画のスクリンショット）

　マタス氏「中共による生体臓器収奪の罪悪は今も続いている」

　マタス氏はインタビューで、オーストラリア放送局の朝の番組司会者スティーブ・オースティン氏に対し、2006年に中共による学習者からの生体臓器収奪の衝撃的な罪行が明らかになって以来、複数の独立研究、国際機関の報告、メディア報道が一致して証明している通り、中共による生体臓器収奪の罪悪は現在も続いていると語った。

　マタス氏は国際的な調査証拠を挙げて次のように述べた。「2014年、米国のジャーナリスト、イーサン・ガットマン（Ethan Gutmann）氏が『大虐殺』（The Slaughter）を出版し、2020年には『民衆法廷』が裁定報告を発表し、（中共による）生体臓器収奪が今も行われていることを確認しました。さらに2021年には、12人の国連人権高等弁務官が共同で声明を発表し、これに極めて強い懸念を表明しました」

　2020年、独立の「民衆法廷」の裁定によれば、中共は引き続き生体臓器収奪を行っており、その主な対象は法輪功学習者である。

　中共当局は2015年以降、全面的に自発的提供制度を採用し、死刑囚の臓器使用を停止したと主張しているが、マタス氏は複数の調査を引用し、中国における実際の提供件数は「非常に少ない」と指摘している。「伝統的な観念の影響で、多くの中国人は死後も遺体を完全な形で保つべきと考えており、提供率は極めて低いのです。中国が公表しているデータでは、その膨大な移植件数を到底説明できないのです」

　2016年6月、マタス氏、故デービット・キルガー（David Kilgour）氏、ガットマン氏は更新報告『血まみれの臓器摘出／大虐殺：更新版』（Bloody Harvest/The Slaughter: An Update）を発表し、中国の15の病院、上海仁済医院を含むデータを分析したところ、移植件数は公式発表の10倍以上に上ることが示されている。

　マタス氏はインタビューの中で特に、上海仁済医院が院内報告で臓器の供給元を「軍部の提供」と記載していたが、実際には収監されている良心の囚人からのものであることを指摘した。

　司会者のオースティン氏は、北京で行われた「9.３中国軍事パレード」の際に世界中のメディアで放送された映像について言及した。そこでは、中共の指導者・習近平とロシアの大統領・プーチンがカメラの前で「臓器移植」と「科学的な延命」について語っている。

　この中共の公式メディアによって生中継された映像の中で、習近平は「今世紀、人類の寿命は150歳に達するかもしれないと予測する人がいる」と語った。プーチンは通訳を通して、「臓器移植によって人類はますます若返り、さらには不老不死になることもあり得る」と述べた。

　マタス氏は次のように答えた。「これはまさに専制体制の問題点を示しています。彼らは批判を受け入れず、自己反省もなく、疑問を投げかける一般市民がどう感じるかについても全く意に介していません」

　「同時に、彼らがよく理解していることも示しています。このような体制の下では、臓器が『需要に応じて入手できる』ということを、特に高い地位にいる者やコネを持つ富裕層にとってそれは当たり前のことです。彼らはこのようなことにすっかり慣れており、公然と議論しても何の問題も感じていないのです」

　マタス氏は強調した。中共当局はいまだに外部による検証や透明な監督を許可しておらず、世界保健機関（WHO）が定める臓器移植に関する「追跡可能性、透明性、監査の開放性」の原則に反している。このことから、中共による生体臓器収奪の罪悪が現在も続いていると合理的に推定できる。

　オーストラリアが生体臓器収奪に反対する法律の制定を呼びかける

　マタス氏は、中共による生体臓器収奪を阻止するために、いくつかの国がすでに行動を起こしている。カナダやイギリスなどの国々では、自国民が違法な越境臓器移植に関与することを禁止する法律が制定されているという。

　このほか、ヨーロッパでは『欧州評議会人身取引防止条約』（Council of Europe Convention Against Trafficking in Human Organs）が採択され、これまでに15カ国が批准し、発効している。

　マタス氏は今回のオーストラリア訪問で、10月23日から24日にブリスベンで開催されたオーストラリア移植看護学会の年次大会に出席した。この機会を利用して、マタス氏は医療関係者に対し、オーストラリア議会が2018年に発表した報告書『思いやりを、商取引ではなく、人体臓器取引と臓器移植ツーリズムに関する調査報告』（Compassion, Not Commerce: An Inquiry into Human Organ Trafficking and Organ Transplant Tourism）を紹介した。また、イギリスの立法を参考にして、海外での臓器移植ツーリズムに関与した患者の情報を収集すべきだとオーストラリアに呼びかけた。

　同報告書は次のように述べている。「過去において、中国（中共）が死刑囚の同意を得ずにその臓器を使用していたことを示す十分な証拠があります。さらに、中国（中共）による強権的な支配と人権侵害は現在も続いており、さらには悪化している可能性さえあるのです」

　2024年8月、オーストラリア上院は違法な臓器取引の抑制を目的とした新法案『2023年移民改正法（海外臓器移植の申告およびその他の措置）』（Migration Amendment (Overseas Organ Transplant Disclosure and Other Measures) Bill 2023）を可決した。

　この新法では、すべての入国者が入国カードを記入する際、過去5年間にオーストラリア国外で臓器移植を受けたかどうかを必ず申告しなければならないと定めている。また、臓器移植を受けた者は、その移植を行った医療機関の名称、およびその機関が所在する都市と国を開示することが義務づけられている。

　同法案は、2024年8月21日にオーストラリア下院に提出され、第一読会を終えた。しかし、総選挙の2カ月前にあたる2025年3月28日、議会の解散に伴い自動的に失効した。

　マタス氏は、海外で臓器移植を受ける患者について、オーストラリアでは出国時に規制がなく、入国後も報告義務がないため、裕福なオーストラリア人が「臓器移植ツーリズム」を行い、臓器を購入することが依然として可能であり、法的責任を問われない状況にあると指摘した。さらに、移植患者は免疫抑制剤を必要とするものの、医療における守秘義務の存在により、明確な法律や方針がなければ、こうした情報が外部に知られることは難しいと補足した。

　中共による国際的な弾圧を直接目の当たりにする

　マタス氏は今週、オーストラリア連邦議会議事堂で開催される円卓会議に参加し、中共の浸透と法輪功に対する国際的な弾圧が、オーストラリアの民主社会に及ぼす脅威について議論する予定。

　マタス氏は司会者に対し、長年にわたり中共は迫害や生体臓器収奪の事実を否認するだけでなく、海外でも様々な手段で迫害の実態の拡散を抑えようとしているという。「中共には多くの手段があります。時には単に圧力をかけるだけの場合もあります。私が今回オーストラリアに来たのは初めてではありません。過去には、予約した会場が突然キャンセルされたことがありました。相手は中共の要請だとは明言しませんが、提示された理由は信じられるものではありませんでした。また、神韻芸術団の世界巡回公演も、しばしば爆破予告などの脅迫を受けています」と述べた。

　マタス氏は、中共が海外で市民に対して行う嫌がらせや脅迫、監視活動に加え、「（イベント会場の許可取り消しや、神韻公演の劇場への脅迫）は、もう一つの国際的な弾圧の手法だ」と指摘した。

　報道によれば、マタス氏は円卓会議のスピーカーの1人として、他の2人の専門家に加え、中共の迫害を実際に体験した中国本土の法輪功修煉者や中共による国際的弾圧の被害者と共に、法輪功に対する中共の浸透や妨害が、多文化コミュニティや各種機関、市民社会に与える脅威について議論する予定。