文／台湾の大法弟子

　【明慧日本2025年11月3日】

　尊敬する師父、こんにちは！

　同修の皆さん、こんにちは！

　以下に、転職の過程で特に印象に残った体験を分かち合いたいと思います。

　一、転職

　私は高校生の時に法を得ました。大学院を卒業した後、ある大手ハイテク企業に就職しました。給与はとても良かったのですが、その会社は効率の高さでも知られており、残業が常態化していて、いつも帰宅が遅くなっていました。私は『大紀元』の校正担当でもあり、新聞が印刷に出る前に紙面の最終校正を行っていました。週に2日担当日があり、その日は仕事が終わった後いったん家に戻り、校正作業が終わる夜9時以降に再び会社へ戻って残業することもありました。残業が終わるころにはすでに早朝になっており、そのまま翌日も出勤という生活でした。

　このような日々が3年間続きました。その間にかなりの収入を得て、会社の名声による恩恵も受けましたが、大法弟子としての三つのことを時にきちんと行うことができず、心の中は常に空しかったのです。そこでこの会社は自分には合っていないと感じ、退職を決意しました。

　しばらく失業期間を過ごした後、再び就職活動を始めました。前職での経験から、今回は定時に退勤できる仕事を探そうと決め、多少給料が低くても構わないと思っていました。履歴書をたくさん提出する一方で、心の中では師父に加持をお願いしていました。すると不思議なことに、数日後、長い間連絡を取っていなかった元同僚から突然メッセージが届きました。彼は転職したばかりで、新しい会社は勤務時間がとても正常だ、と教えてくれたのです。調べてみると、その会社はアメリカ資本の企業で、募集している職種も私の専門分野にぴったり合っていました。これまでその会社の存在に気づかなかったことに驚きつつ、すぐに応募したところ、面接の招待を受けました。その後、5回にわたる面接もすべて順調に進みました。同時に他のいくつかの会社からも内定をもらいましたが、それらはどれも残業が常態化している会社でした。すでに心はアメリカ資本の会社に傾いており、一日も早くその会社から正式なオファーをもらえるよう願っていました。

　しかし、最終面接の時のことを思い出すと、少し気がかりな点もありました。最高責任者はその場で「合格です」と言ってくれたものの、「会社は今も他の候補者を面接しているので、もしあなたの上司の考えが変わらなければ、雇用手続きを進めます。承認書類は本社のサインが必要ですので、すべて正式な書面のオファーをもって確定となります」と、少し含みのある言い方をしていました。とはいえ、良いことほど少し時間がかかるものです。その時期は毎日面接の予定がぎっしり詰まっており、ある面接を終えた後、あのアメリカ資本の会社からの不在着信があるのに気づきました。私は急いで折り返し電話をかけましたが、面接続きで疲れていたせいか、考えもせずに「すみません、先ほど面接中で電話に出られませんでした」と言ってしまったのです。言った瞬間に「しまった」と思いましたが、すでに遅く、人事担当者からすぐに「どこの会社の面接ですか？」と聞かれてしまいました。相手が競合他社だと分かっていながら、正直に答えるしかなく、その場の空気が一気に気まずくなってしまいました。

　電話を切った後、心の中は少し混乱し、不安と戸惑いでいっぱいになりました。こんなことを言ってしまって、印象が悪くなったのではないか、と思い悩みましたが、これは自分を高める良い機会だと捉え、心を落ち着けて執着を手放しました。

　一週間あまりが過ぎたころ、ついに採用通知が届きました。確認してみると、なんと当初の面談時に話していた給与よりも上がっており、しかも前の会社よりかなり高い金額でした。当初はただ定時で帰れる仕事を見つけたいと思っていただけだったのに、結果的に希望がすべて叶った上に、予想以上の待遇までいただけたのです。私は感謝の気持ちでいっぱいになり、心の中で師父に申し上げました。「弟子は、必ず退勤後の時間を大切にして、三つのことをしっかり行います」。この経験を通して、人生の道の上での得失にはすべて按排があり、自分の思い通りにできるものではないと、深く悟りました。

　二、仕事上の試練

　期待に胸をふくらませながら、新しい会社での生活が始まりました。仕事の内容はとても面白く、上司や同僚も皆とても親切でした。会社では毎日無料の食事や飲み物が提供され、定時で退社することもできました。上司はよく仕事量が多すぎないか、と気にかけてくれて、必要に応じて調整してくれると言ってくれました。休暇もたくさんありました。これはまさに、私が夢に描いていた理想の働き方だ、と思いながらも、あまりに快適な環境に、こんなに居心地が良くて、修煉上の向上が難しくなってしまうのではと、ふと心配になることもありました。

　しかし、すべてが理想的に思えたその時、試練が訪れました。ある日の午後、突然臨時会議の通知が届き、出席してみると、それはリストラの発表でした。アメリカから始まったリストラの波が、ついに私の部署にも及んできたのです。前日まで一緒に食事をしていた同僚が、翌日には突然姿を消していました。修煉者としては世の中の得失にこだわらないと分かってはいましたが、この出来事は私に大きな衝撃を与えました。なぜなら、その同僚はとても真面目で、いつも夜遅くまで残って仕事をしていたからです。

　自分にも恐れる心があることに気づき、もしかしたら自分もいつかリストラされるのでは、と不安を感じました。しかし、修煉者の一生はすべて師父によって按排されていることを思い出し、自分と仕事との関係を正しました。リストラがあったからといって、特別にがんばって目立とうとすることはせず、以前と同じように普通に仕事をし、定時に出退勤しました。また、機会を見つけては上司に真相を伝え、神韻の紹介も行いました。

　三、クレジットカードの紛失

　しかし、私は当初、師父に「退勤後の時間を有効に使う」と申し上げた約束をすっかり忘れてしまっていました。その頃、別のアメリカ資本の大手企業が大規模な採用を行うというニュースが話題になっていました。その会社はこの業界のリーダー的存在で、以前から応募したいと思っていたものの、なかなか自分に合う職種がありませんでした。ところが今回の募集では、私の興味のある職種が驚くほど多く、しかも現在の仕事の内容と大部分が重なっていたのです。私にとって、それはまさに千載一遇のチャンスのように思えました。

　名誉や利益への心が大いに刺激され、もっと高く飛びたい、もっとお金を稼ぎたい、と思うようになりました。もしあの会社に転職すれば、名誉も利益も手に入り、キャリアの面ではまさに一歩で頂点に立てると考えたのです。そこで、たくさんの技術書を購入し、退勤後の時間を使って転職の準備を進めるようになりました。履歴書も定期的に更新し、もしリストラに遭っても影響を最小限に抑えられるようにし、同時に転職の準備も整えておく、まさに一石二鳥の戦略でした。

　ちょうど心の中で将来のことを思い描き、いい気分になっていたころ、ある日ふとクレジットカードをなくしていることに気づきました。その瞬間、仕事を探す前に師父に立てた誓い、「退勤後の時間を有効に使う」という約束を守っていなかったことを思い出しました。

　しかも、しばらく経つうちにその約束すら心の片隅から薄れていたのです。もしかすると、私が悟らないのを見かねてのことだったのかもしれません。ある晩、師父が夢の中に現れました。師父は優しく励ましながら、私に精進しなければならない、と諭してくださいました。夢の中で師父は次第にとても大きくなり、私は仰ぎ見ながらその姿を見つめていました。そしてその瞬間、夢から覚めたのです。10年以上の修煉の中で、師父の夢を見たことはほとんどありませんでした。そのため、胸がいっぱいになるほど嬉しく、そして心がとても落ち着きました。そうです、師父はいつもそばにいてくださるのですね。私は、退勤後の時間を真剣に大切にしようと心に決めました。

　自分の学法の時間があまり決まっていなかったため、新聞社で校正の仕事をしている私は、大紀元のオンライン学法に参加するようになりました。

　規則的かつ安定したオンライン学法は、私の修煉状態に大きな助けとなり、会社での業務成績にも好影響を与え、仕事が驚くほど効率的に進むことが多くなりました。学法が終わるのはいつも深夜で、転職の準備に十分な力を割くことはできませんでした。それに伴い、次第に転職の重要性も薄れていきました。時折、あのアメリカ資本の大手企業の募集情報を目にすることもありましたが、「もし本当に行くべき会社なら、履歴書を送らなくても、必ず向こうからオファーが来て、面接も順調に進むだろう」と思うようになり、次第に心を手放して、学法を最優先に継続するようになりました。

　しかし、日々を過ごしても、そのアメリカ資本の会社からのオファーは一向に来ませんでした。ところがある日、思いがけず大法プロジェクトのオファーを受け取ることになったのです。

　四、大法プロジェクトからのオファー

　新しい会社に入って1年余り経ったころ、大法プロジェクトの責任者が私の専門分野に強い関心を持ってくれました。そこで直接会って打ち合わせをすることになったのですが、正直なところ、私は断ろうという気持ちで臨みました。プロジェクトの話が私のところに来たのは偶然ではないと分かっていながらも、心の奥底では深い恐れがあり、本当に説得されてしまうのではないかと不安でした。実際に会って互いに自己紹介をした後、このプロジェクトが自分の学んできたことと非常に一致していることに気づき、心から自分にぴったりだと感じました。その結果、責任者はその場で私に参加を正式に招待してくれました。

　しかし、どうしても今の満足できる仕事と給与を手放すことができず、私はプロジェクトの責任者にこう言いました。「来年は昇進の予定があるので、成り行きに任せますね」そして冗談めかして続けて言いました。「もし会社でリストラされたら、このプロジェクトが師父の按排だったと信じます」。その言葉を口にしてから１カ月余り経ったある午後、人事部のマネージャーが私のトップの上司のところに来て、ひそひそと話しているのを目にしました。ぼんやりと私の名前が出ているのが聞こえ、私は先日プロジェクト責任者に話した言葉を思い出しました。「まさか、今度は本当に自分の番なのか？」と、期待と不安が心の中で交錯しました。

　その後、案の定、会議室に呼ばれました。入ると、大小の上司が向かいに座って私を見つめていました。しばらくの沈黙の後、トップの上司が口を開きました。「リストラではありません。おめでとう、昇給です。あなたの成果はちゃんと見られています。これはアメリカ本社の決定です」

　昇給が昇進後の水準になり、思わず驚くようなボーナスまで付与されているのを見て、喜びで胸がいっぱいになりました。しかし、なぜか心の奥には一抹の寂しさも混じっていました。

　そこで心の中でつぶやきました。「師父、私はこのプロジェクトにぜひ参加したいのですが、今は昇給してしまい、弟子はとても迷っています。もしこれが本当に私の使命であるなら、どうかご示唆ください」。不思議なことに、昇給して間もなく、会社のプロジェクトは新しい段階に入り、仕事内容も変わって以前ほど面白くなくなりました。自然と倦怠感が湧き上がり、しばらくするとこのままでは離れたい、と考えるようになりました。プロジェクトが一区切りついたら、直接退職するか、あるいは部署を移るつもりでした。会社は部署異動に対して柔軟で、移動すれば好きなことを続けつつ、良い給与をもらい、ゆったりとした生活も送れることは分かっていました。

　しかし、理性的には、大法のプロジェクトが自分に非常に適しており、人手も不足していることを理解していました。また、このプロジェクトは威徳を積む絶好の機会でもあり、何も後悔を残したくない、という思いもありました。

　私の前に立ちはだかっていたのは、名誉を求める心でした。ずっと、収入はその人の能力の象徴だと思い込み、社会的地位を失いたくないという思いがありました。しかし、それも結局は遅かれ早かれ手放さなければならない心であることも理解していました。少しの恐れはありましたが、師父が『各地での説法十三』「二〇一五年ニューヨーク法会での説法」でおっしゃった言葉を思い出しました。「真相を伝え、衆生を救い、これはすなわちあなたが行うべきことです。これ以外に、あなたが行うべきことはなく、この世界であなたが行うべきことはありません」。心の中で神と人間の葛藤があったものの、最終的に私は退職し、全職で大法プロジェクトに参加する決意を固めました。

　五、利益の試練

　しかし、会社のプロジェクトが一区切りついた後、退職のタイミングに悩むことになりました。というのも、ボーナスは3カ月ごとに支給されるため、最も確実なのは入金を確認してから退職願を出すことでした。しかし、それではどうも腑に落ちません。常人ならそうするのが普通ですが、修煉者としては人を先に自分を後にする心が大切で、内心では何が正しいかは分かっていました。それでもつい、周囲のマネージャーの職を持つ同修に相談し、「ボーナスを受け取ってから退職しても問題ない」と言ってくれることを期待してしまいました。ところが、彼らは口をそろえて言いました。「上司は、部下が退職を考えていることをできるだけ早く知りたいと思っています」

　また、ある同修との食事会で聞いた話も思い出しました。一人の同修が全職で大法のプロジェクトに参加した年、偶然にもその同修の会社のボーナスが最高額になる年だったそうです。十年に一度あるかないかの大当たりの年で、ボーナスは3カ月ごとに支給されるため、丸1年勤めないと全額を受け取れないタイミングでした。それでも、プロジェクトで人手が足りない状況だったため、その同修は数百万ドルのボーナスをあきらめ、即座に呼びかけに応じて全職で大法のプロジェクトに参加したのです。その話を聞いたとき、もし自分がその同修の立場なら、きっと「まずはパートタイムで関わり、十年に一度のボーナスを受け取ってから、翌年に全職で参加しよう」と考えるだろうな、と自然に思いました。

　しかし正直に言うと、心の中はとてもつらく感じました。その同修は私とほぼ同じ年齢で、家も車も持たず、一人で借りた小さなアパートに住んでいるにもかかわらず、あの大きな金額をあっさりと手放したのです。そのとき、師父が『スイス法会での説法』でおっしゃった言葉を思い出しました。「皆さん考えてみてください。人間は他でもなく名と利のために、この世で生きています」。同時に、自分の中に嫉妬心があることにも気づきました。自分には、あの同修のようにあの大金を簡単に手放すことができないのです。しかし、全職でプロジェクトに参加している多くの同修も、常人から見れば十分に恵まれた収入を手放しているのだ、ということも理解できました。

　私はそのとき、同修たちとの差をはっきりと認識しました。人を先に自分を後にする心で考えれば、できるだけ早く退職を申し出て、上司が事務手続きを円滑に進められるようにすべきです。しかし、その場合、ボーナスを受け取れない可能性があります。一方で、自分の利益を優先すれば、上司の負担を増やすことになります。すべてが、自分の利益心を試す試練であることを理解しました。また、この数年間、上司は私を大いに支えてくださり、多く助けてくれました。そのことを思うと、ただ自分の都合だけを優先して上司を困らせるわけにはいかない、と強く感じました。

　私は、この試練を乗り越えると決意し、すぐに退職の申し出をしました。上司は退職日をボーナス支給後に設定し、本社に報告してくれました。そのとき私は、心を手放せば、当然得られる利益は失われないのだ、と実感しました。ところが翌日、事態は急展開しました。会社から呼び出され、退職日をボーナス支給前に変更するよう求められたのです。これは明らかに試練だと分かりましたので、私は争わず、素直に署名しました。

　後になって分かったのですが、あと10数日我慢して退職を申し出れば、数カ月分のボーナスを受け取ることができたのです。しかし、私は動揺せず、自分が正しい選択をしたことを確信しました。

　結び

　この転職の過程を振り返ると、さまざまな試練や心性の関門を経験しましたが、私は常に三つのことをしっかりとやってきました。前の2社での経験のすべては、今のプロジェクトに至るための布石であり、修煉者の視点から見れば、すべて最良の按排でした。どの出来事も一つ一つがつながっており、すべて良いことだったのです。現在、私は毎日大法の環境に身を置いています。以前は手放すのが難しかった心も、修煉状態が安定するにつれて徐々に手放せるようになり、心性の向上による喜びや幸せをしばしば感じられるようになりました。今後、どのような試練に直面しても、正念を保ち、勇猛精進できるよう願っています。

　以上が私の修煉体験です。不足などあれば、同修の皆さまの慈悲なるご指摘をお願いいたします。

　師父、ありがとうございます。

　同修のみなさん、ありがとうございます。

　（2025年台湾法輪大法修煉体験交流での発表原稿）