　【明慧日本2025年11月15日】中国共産党（以下、中共）の建国後、婚姻の儀礼は「改造」されて面目を失い、婚服の変更にとどまらず、証婚人（婚姻届の証人）も天地や父母から「党支部書記」に置き換えられ、結婚の日取りも「五・一（5月1日）」や「十・一（10月1日）」といった中共の祝日に合わせられた。「天地を拝する」ことは「毛××像への拝礼」に変えられたのである。一方、中国の古代において、婚姻は「天地を拝する」と呼ばれていた。

　この「天地を拝する」には、天地を証人とする重大な意味があった。古代の皇帝は泰山（たいざん）で天を祭り地を拝する儀礼を行い、北京の天壇と地壇は明清の皇帝が天を祭り地を拝する場所であった。古代の婚姻でも「天地を拝する」ことが行われたため「天地を拝する」は「婚礼」と同義で用いられるようになった。

　一、婚礼は礼の根本その由来

　『通典・礼典』によれば、上古の時代に伏羲（ふくぎ、ふっき：古代中国神話に登場する神または伝説上の帝王）が婚姻の礼を定めた。西周（にし-あまね：日本の啓蒙思想家、西洋哲学者）になると『礼記』には婚姻の礼儀が詳しく記されている。「天地が和合して、初めて万物が興（おこ）る。婚礼とは、万世の始まりである」。天地が交わって万物が生じるように、男女が婚礼を行えば、子孫の始まりとなる。ゆえに「婚礼は礼の元なり」と言われた。婚礼はすべての礼の根本なのである。

　古人はこう考えた。「男女に分別があってこそ夫婦に義が生じ、夫婦に義があってこそ父子に親しみが生じ、父子に親しみがあってこそ君臣の正しき関係が成り立つ」すなわち夫婦の義は父子の親、そして君臣の正しい関係の基礎である。だからこそ婚約から婚礼までが非常に重んじられたのである。また「婚礼は礼の元なり」と繰り返し説かれた。婚礼は礼儀の根本であり、家庭は社会の基本単位である。婚姻は家庭の始まりであり、婚礼は家風や家訓の起点となる。また男女双方の家が新たな姻戚関係を結び、新しい親族や友人関係を築く出発点でもあった。

　すでに二、三千年前、西周の周公（しゅう-こう：中国、周の政治家）が礼を制定した時には、結婚には正式で厳粛な「六礼」があった。

　●　納采（なさい）：男方が媒人（媒酌人）を通じて気に入った女方の家に赴き、意向を確かめる。

　●　問名（もんめい）：女方が承諾すれば、媒人は男方に代わって未婚女子の生辰八字（生年月日と時刻）、母親の姓を尋ねる。当時は同姓婚が禁じられていたためである。

　●　納吉（なきつ）：卜占で両者の生辰八字を占い、相性が合えば婚姻が定まる。

　●　納徴（なちょう）：男方が聘礼（結納品）を女方に贈る。

　●　請期（せいき）：男方が吉日を占い、女方の同意を得て結婚の日取りを決める。

　●　親迎（しんげい）：男子が自ら女方の家に赴いて迎え入れる。

　このように礼数は意味の外的な表れである。

　なお、日本の王室も今日に至るまで、婚姻において「納采の儀」、「告期の儀」、「拝謁の儀」、「朝見の儀」といった一連の手続きを継承しているが、これも実は中国伝統文化に由来する礼法である。

　二、「天作之合」の本当の意味

　現代人が「天作之合」（神が仲を取り持ったような良縁）と聞くと、天の定めによる「幸せな結婚」と受け取る。しかし「幸せ」という言葉には、現代的な新しい意味が付与されている。たとえば、男女平等、家や車を持つこと、二人の独立した個人の結びつきであって従属関係ではないこと、DINKs（子供を持たない選択）の自由を尊重すること、不幸な結婚を終わらせることは失敗ではなく勇気とみなすこと、等々である。

　だが数千年来、歴代王朝は婚姻を大事とみなし、安定した情感的支え、家族の血脈の継承、社会の世代的文化伝統の伝達、社会の安定性と秩序感を強める根本としてきたのである。

　「六礼」の具体的な作法には複雑や簡単などのやり方はあるものの、基本的には歴代ずっと受け継がれてきた。その中でも、成婚に際して男女双方が行う最初の儀式であり、最も重要な儀式が「天地を拝する」である。天地を証人とし、夫婦二人はこれより恩義を重んじ、結婚生活における甘酸苦辣（喜びや悲しみ、苦労や楽しみ）、富貴（ふうき：金持ちで地位や身分が高いこと）や貧賤（ひんせい：貧乏で、身分が低いこと）をともにし、手を取り合って老いるまで、死ぬまで忠実であることを誓うのである。男女がこの約束を果たしてこそ、夫婦は白髪になるまで共に添い遂げることができ、「天作の合」と称するにふさわしいのである。なぜなのか？

　縁がなければ婚姻は成り立たない。しかしその縁も必ずしも善縁とは限らず、悪縁もある。明末清初（みんまつしんしょ）の作家・馮夢龍（ふうむりゅう：小説家）の『警世通言（けいせいつうげん）』（1624年）にはこうある。「冤家（えんか：敵対する相手、恨みを持つ相手）でなければ出会わない。冤家が一度結ばれても、いつまで続くだろうか」前世に業の因果がなければ、たとえ出会っても目にも入らず、何の感情も起こらない。だが因果の縁があれば、避けられずに出会い、関わり合うことになる。その縁には愛し合い、恩返しや借りを返すこともあれば、怨みを返すこともある。姻縁とはすなわち因縁であり、天は「冤家」に婚姻を通して因縁を解かせる。これこそが「天作の合」の深い意味なのである。

　1．北宋・劉庭式が婚約を守った話

　北宋の斉の人・劉庭式は、正直で心が広く、約束を守り、表裏のない人物であった。若い頃、媒人の紹介で同郷の女性と生涯を共にすると約束し、両家は媒妁の言によって婚約を結んだ。数年後に聘礼（へいれい：結納品）を贈って迎え入れ、夫婦となる予定であった。

　その後、劉庭式は科挙（かきょ：官僚を登用するための試験制度）に及第し挙人となったが、まさにその時、彼の許嫁が病を患い、両目を失明してしまった。治療の甲斐もなく盲目となり、しかもその家は農家で貧しく、権力もなく、とても婚姻の話を持ち出せる立場ではなかった。娘はしばしば泣き暮らし、自らの運命を嘆き悲しみ、すでに定められた婚約が守られるのかを案じていた。

　この変事は当然、劉庭式の耳にも届いた。人々は彼に、盲目の農家の娘を娶（めと）るべきではない、そうすれば自分の一生を誤り、幸福を失うと諭した。すると劉庭式は笑って言った。「私の心はすでに彼女に許している。たとえ彼女が盲目になっても、どうして当初の本心に背けようか」。彼は結局その盲目の娘を娶り、互いに支え合い、寄り添いながら白頭に至るまで共に生きた。その美談は後世に語り継がれ、劉庭式は婚約を守り抜いた模範とされた。

　「天作の合」の観点からすれば、劉庭式は前世でその女性に恩義を負っており、今世で恩返しを果たしたのだろう。彼はそれを成し遂げ、二人の「天作の合」は円満な結末に至ったのである。

　2．清代・秦簪園が他人の婚約を成就させた話

　清代、江蘇嘉定の秦簪園（しん-しんえん）先生は挙人（きょ-じん：主に中国の歴史における人材登用の称号）であったが、妻が亡くなり、再婚してある女性を娶った。ところが新婚の夜、その女性は泣きやまず、理由を尋ねるとこう答えた。「私は幼い頃、隣村の李家の息子に許嫁（いいなずけ）となっていました。しかし両親が李家を貧しいと嫌い、無理やり婚約を破棄させられ、私は別の家に嫁ぐこととなったのです。自分が二人に身を移すことは婦道（ふどう：女性が守るべき道徳や規範）に背き、心痛く悲しいのです」

　秦（しん）はそれを聞いて、ぞっとし、驚きのあまり青ざめて言った。「どうして早く言わなかったのか。危うく大きな過ちを犯すところだった！」すると彼はすぐに新婚の部屋から出て、使用人に李家の息子を探してくるよう命じた。李家の息子がやってくると、秦は事情をすべて説明し、さらにこう言った。「今夜は佳（よ）き夜だ。あなたたちはこの拙宅（せったく：自分の家をへりくだって言う語）で夫婦の契りを結ぶとよい」。そして、自分が結婚のために用意していたすべての金品を二人に贈った。二人は感激のあまり涙を流し、言葉も出ず、ただ何度も頭を下げて感謝した。秦簪園が婚約を解（と）いて他人を成就させたこの出来事は、当時の人々から大いに称賛された。乾隆二十八年、癸未の年（1763年）、秦簪園はついに科挙に合格して進士となり、廷試（最終試験）では皇帝の御前で状元（首席合格者）に選ばれ、天下にその名を知られることとなった。

　秦簪園は他人の不幸につけ込むどころか、その女性の以前の婚約を尊重し、むしろ成就させた。このような君子の徳、善行の積み重ねは、彼が後に進士となり、状元に選ばれたことと無関係ではないだろう。

　三．礼とは決して「封建的」なものではない

　孔子は『礼記』の中でこう述べている。「民が生活するうえで、礼ほど大切なものはない。礼がなければ、天地の神明を敬うこともできず、礼がなければ、君臣・上下・長幼（ちょうよう：年上の者と年下の者）の秩序を区別することもできず、礼がなければ、男女・父子・兄弟・婚姻といった関係を正しく保つこともできない」つまり、庶民が安定した生活を営むためには、礼を尊ぶことが欠かせない。礼がなければ、人は天地神明に対して謙虚さや畏敬の念を失い、上下関係も長幼の区別も曖昧になり、男女・家族・婚姻の関係も調和を失ってしまう。

　では「尊卑（そんぴ：身分の高いものと低いもの）の区別」は階級意識ではないのか？　「封建思想」ではないのか？　実は、陰陽や尊卑の関係こそが天地の運行を保つ自然の道理（天道）である。たとえば一年には春夏秋冬の巡りがあり、音楽には高音・中音・低音の調和があるように、天地陰陽そのものが尊卑の秩序の表れである。天は尊く、地は卑（いや）しい。陽は尊く、陰は卑しい。昼は尊く、夜は卑しい。もしこの秩序が乱れ、天だけで地がなく、陽だけで陰がなく、昼だけで夜がないとしたら？　春夏秋冬がめちゃくちゃに混ざり、皆が王で民がなく、皆が教師で弟子がいない。それは「封建ではない」と言えるだろうか？　それはむしろ混乱と無秩序であり、文明の姿とは言えない。

　実のところ「封建」という言葉の最も古い出典は『詩経（しきょう）・商頌・殷武』の「命于下国、封建厥福」（下国に命じ、その福を封建す）にあり、これは商王朝が同族や異族の諸侯を任命し、土地を分け与え、国を建てさせた行為を指す。つまり「封土建邦（領土を封じて国を建てる）」という意味であり、中国古代の政治制度の一つであって、もともと否定的な意味ではない。歴史がわずか250年に満たないアメリカは「連邦制」を採っているが、これを「民主的市民意識に基づく分邦建国制度」と見なせないだろうか？　違いは、自治権を持つ州知事が大統領に任命された同族や異国の諸侯（しょこう：主君である君主の権威の範囲内で一定の領域を支配することを許された臣下である。貴族のこと）ではなく、憲法に定められた民主的選挙によって選ばれている点である。

　「礼」とは、天地人三つの道に順応する倫理であり、それに従えば社会は安定して運行する。婚姻の礼は男女の礼節の中でも最も重要な礼であり、天地の道に沿って執り行われるべきである。しかし現代では、多くの人が婚礼を虚栄や見栄を張るための手段とし、体面のために将来の家庭の経済基盤を犠牲にしてまで豪華に行うことも少なくない。これは現代社会の商業的な宣伝と、人々が伝統的な価値観を失った結果にすぎない。

　（続く）