【明慧日本2025年12月8日】米国、英国、オーストラリアなど15の国連加盟国は11月21日、中国の人権状況に関する共同声明を発表し、中共がウイグル族やその他のイスラム系少数民族、キリスト教徒、チベット族、法輪功修煉者などの団体を標的として迫害していることを非難しました。声明はまた、各加盟国に対し、意味のある責任追及を推し進めるよう促しました。

　声明はこう述べています。「私たち、以下の署名国は、国内外において言論の自由、平和的集会の自由、結社の自由、そして宗教または信仰の自由を含む人権と基本的自由の促進と保護に尽力しています。同時に、私たちは中国国内で起きている深刻な人権侵害に深い懸念を抱いています」

　「信頼できる報告では、中国において恣意的な拘束、強制労働、違法または恣意的な大規模監視の利用、そして宗教および文化的表現への制限が継続して存在していることを示しています。少数民族および宗教的集団、特にウイグル族やその他のイスラム系少数民族、キリスト教徒、チベット族、法輪功修煉者などは、標的とされた迫害を受けており、その手段は、子供を寄宿学校に送って家庭から引き離すこと、拷問、文化遺産の破壊が含まれます。私たちはまた、香港における長期にわたる市民的自由と法の支配の継続的な弱体化について懸念を表明し、香港の地域外で言論の自由を行使する個人に対して逮捕令や懸賞が出されていることにも懸念を抱いています」

　前回の中国人権に関する国連の共同声明は2022年に発表され、主に二つの重要な場で発表されました。一つは国連人権理事会（UNHRC）、もう一つは国連総会第三委員会です。これらの声明は、2019年以来毎年続けられてきました、中国（特に新疆ウイグル人権問題）に対する国際的な圧力のパターンを受け継ぐものでしたが、2023年と2024年には同規模の共同声明は発表されませんでした。そのため、今年再び発表されたことを目にしたので、私はとても嬉しかったです。

　同時に、私は少しばかりの不安も感じています。アメリカやイギリス、オーストラリアなど、西側の自由社会で育った人々は果たして見極めることができるのでしょうか。中共による法輪功迫害こそが、中国における最大の人権侵害です。ウイグル族やチベット族、キリスト教徒、さらに人権を守る活動家への迫害は、確かに粗暴で残忍で血まみれなものです。しかし、それらはすべての中国人を道徳的に縛り、肉体的に消滅するほどの規模と深度には達していません。26年にも及び、今も続いている法輪功への迫害という政治運動だけが、中共に中国の全ての人々を、民族・信仰・年齢・職業を問わず、思想統制する境地へと到達させました。人を人間として扱わず、恣意的に痛めつけ、傷つけてきたのです。

　中共は1999年に、法輪功に対する政策として「名誉を汚す、経済を破綻させ、肉体を消滅する」という三原則を特に強調してきました。1999年以降の出来事を思い返してみますと、皆さまも照らし合わせることができると思います。中共国内で起きたあらゆる政治運動や、民間によって明るみにした事件、ウイグル族、チベット族、キリスト教徒、人権を守る人々、罪のない若者、良知ある市民、その本質は、この政策の実施ではなかったでしょうか。同じ構造、同じやり方、同じ残酷さが繰り返されてきたのではないか、と感じています。

　2025年10月27日と28日の2日間、共産主義犠牲者記念財団は、米国の首都ワシントンで毎年恒例の「中国フォーラム」を開催しました。前・米国国際宗教の自由担当無任所大使、カンザス州選出の連邦上院議員、そして同州知事を務めたサム・ブラウンバック氏は次のように指摘しました。

　「中国は毎年、宗教弾圧に数十億ドルを投入しています。宗教団体の中で、法輪功は最も深刻な迫害を受けています。中共（中国共産党）がなぜ宗教の自由を破壊するのか、それは中共が中国人民を支配しようとしているからです。中共は、自分らに抵抗する者が、政府よりも高い権威に従っていることを見抜いています。共産主義は最初から、信仰を持つ人々を最も恐れ、最も過激なやり方で攻撃してきたのです」

　ブラウンバック氏はこうにも述べています。「中国にとって、宗教の自由は（中共の）生存に対する脅威です。アメリカにとって、宗教の自由は建国の理念であり、宗教の自由を破壊することはアメリカの生存に対する脅威なのです」

　「宗教の自由という問題は、単なる人権問題から国家安全保障問題へと格上げされるべきです」

　「私は、私たちは法輪功を支持すべきだと思います。そして法輪功の創始者である李洪志先生を支持すべきです。彼は現在アメリカに居住しています。私は、ホワイトハウスが彼と会談し、彼らが宗教の自由を享受すべきであると宣言すべきだと考えています」

　ブラウンバック氏はさらに次のように指摘しました。「中共はずっと嘘を撒き散らし、中国人を欺き、宗教信仰の団体を『外国勢力』と呼んでいます。しかし中国において、真の外国勢力はまさに共産主義そのものです。共産主義はヨーロッパの産業革命の時期に発展し、後に中国へと持ち込まれましたが、それは中国社会と全く相容れないのでです」

　私は、元アメリカの上院議員であり、国際宗教自由担当無任所大使の認識は、きわめて緻密で透徹していると思います。そして、もっと多くのアメリカ人、イギリス人、オーストラリア人、さらに自由で生まれながらの人権を大切にする世界各国の人々が、これらの点を理解することが重要だと感じています。中共による法輪功（真・善・忍）への迫害と排斥こそが、中国における最も大きな、そして根本的な人権侵害であるということを理解してこそ、人々は数億の中国人を含めて中共の恐喝、暴力、そして支配から解き放たれ、自由な、創造主が望まれる本来の自分に戻ることができるのだと思います。

　もし曖昧な認識や「まさか自分には関係ないだろう」という幸運を当てにする心理に留まり、さらには多少なりとも中共を正常な社会の一員のように見なしたり、中共による法輪功への迫害行為を「普通のこと」のように捉えるならば、その結果は、中共をWTOに加入させて「虎を養って患いを招いた」ことよりも、はるかに深刻なものになるでしょう。個人にとってもそうであり、集団、社会、そして国家にとっても同じ理屈だと思います。

　ここで、中国の古い寓話「中山の狼」を一つ紹介します。現代では「東郭先生と狼」という題でよく知られています。

　晋国の大夫（高官職の一種）である趙簡子が、中山で大規模な狩りを行っていました。そこへ一匹の狼が道をふさぎ、人間のように立ち上がって遠吠えしていました。趙簡子大夫は弓を引き、一矢を放つと、矢は狼の体に深々と突き刺さりました。狼は激痛に叫び、命がけで逃げ出しました。趙簡子大夫は大いに怒り、馬車を走らせて追跡しました。

　その頃、墨家の学派に属する東郭先生が北へ向かい、中山国で官職を求めようとしていました。東郭先生は足の悪いロバを引き、袋には書物を入れており、道に迷っていたのです。

　狼は突然、東郭先生の前に現れて言いました。「先生は、もしかして他人を成就させる志をお持ちでしょうか？　昔、毛宝という人は一匹の亀を逃がしましたが、後にその亀のおかげで川を渡って命を救われました。また隋侯（隋国の君主）は、傷ついた大蛇を助けましたが、後にその蛇が口にくわえてきた真珠を得ました。しかし、亀や蛇など、もちろん狼には及びません！　今はこのように急を要する時です。どうか、私を早く袋の中に隠していただけませんか。そうすれば、瀕死の私の命も、しばらくは延ばすことができましょう。もし将来、何か成し遂げ、人並み以上の地位を得ることがありましたら、私は先生のご恩に、どうして心から報いずにいられましょうか！」

　東郭先生はこう言いました。「私たち墨家の哲学は、仁愛を宗旨としています。私は必ずお前を生かす方法を見つけるであろう。たとえ災いがあっても、決して辞退はしません」。そう言って、袋の中に入っていた書物を取り出し、隙間をあけ、狼を袋に入れようとしました。しかし、頭から入れようとすると狼の顎を傷つけるかもしれないと心配し、尻尾から入れようとすると今度は尻尾を押しつぶしてしまうのではないかと恐れて、何度やっても、狼を袋にうまく入れることができませんでした。

　狼は、追ってくる者がますます近づいてくるのを見て、あせって言いました。「今は非常に危急な状況です！　先生は、火事の中で人を救う大事な時に、まだ礼儀正しく、遠慮しているつもりですか？　盗賊から逃げるのに、普段のように馬車に乗り、鈴を鳴らしている場合でしょうか？　早く方法を考えてください！」。そう言うと、狼は4本の脚を折りたたみ、縄を取って東郭先生に渡し、自分で縛らせました。そして、まるでハリネズミのように丸くなり、蛇のように体を巻き、亀のように身を伏せ、東郭先生の思うままにされました。

　東郭先生は狼の言うとおりにして、狼を袋に入れ、口をしっかり縛り、肩に担いでロバの背に載せました。そしてロバを引いて道の脇に隠れ、趙簡子大夫が通り過ぎるのを待ちました。

　しばらくすると、趙簡子大夫が追いついて来ました。しかし狼を見つけられず、烈火のごとく怒り出しました。東郭先生はあわてて地面に伏して這い寄り、長く跪いて言いました。「私は無能な者ではありますが、世の中で何か事を成したいと願っております。遠い道を走り回って、私自身も正しい道を見失っておりますのに、どうして狼の行方など分かりましょう。それを申し上げて、あなた様の追手に追わせることなどできましょうか。……私は愚かではありますが、あの狼のことを知るはずがございません。狼の本性は、貪欲で、しかも残忍であり、豺と組んで悪事を働いています。あなた様がそれを取り除こうとなさるならば、本来、私は微力ながら進んでお手伝いすべきであり、どうして隠して申し上げないなどということがありましょうか」

　趙簡子大夫は黙り込み、それから馬車の向きを変えて再び道へと戻っていきました。東郭先生もロバを追い立て、倍の速さで先へと進みました。

　しばらくして、馬車の音がまったく聞こえなくなると、袋の中の狼が声を上げました。「袋から出してくれ。縛っている縄を解き、腕に刺さった矢を抜いてくれ。私はもう行く」

　東郭先生は狼を袋から出してやりました。ところが、袋から出た狼は東郭先生にこう言いました。「先ほどは、先生のおかげで命拾いをしました。だが、私は今ひどく腹が減っています。飢えたまま食べ物がなければ、結局は死んでしまうだろう。先生は天下の人のために少しでも利益を図りたいとお考えなのだから、どうして自分の体を惜しんで、私の命を救おうとしないのですか？　さあ、私に食べられて、私の命を救ってください」。そう言い終えると、狼は牙をむき、爪を振り上げ、東郭先生に襲いかかりました。

　東郭先生は慌てて狼と格闘しました。両者とも力を使い果たし、互いにロバを挟んで息を切らしました。東郭先生は叫びました。「狼は私に対して、不義を働いた！　狼は私を裏切った！」

　すると狼は言いました。「私はもともと、お前に対して不義を働こうと思ったわけではない。ただ、天はお前たち人間を生むときから、もともと我々狼の食べ物として生み出しているのだ！」

　長くこう着状態が続き、太陽はだんだん西に傾いていきました。東郭先生は、日が暮れてから狼の群れが押し寄せて来るのを恐れて、狼を欺いてこう言いました。「昔からの習わしでは、物事に迷いや疑いがある時は、必ず3人の年長者に尋ねるものだ。さあ、一緒に行こう。3人の老人に聞いてみよう。もし、彼らが『私がお前に食われるべきだ』と言うなら、お前に食われてもよい。そうでなければ、やめるのだ」狼はそれを聞いて、東郭先生と共に歩き出しました。

　しばらく歩くと、道には1人の通行人もいなかったのです。道端に1本の古い木が立っているのを見て、狼は言いました。「この老人に聞けばよい」。東郭先生はやむなく、その木に事のいきさつをすべて話してから尋ねました。「このような場合、狼は私を食べるべきでしょうか」。古い木は自分が庭師の家で経験したことを踏まえて、東郭先生に言いました。「私は老いさらばえても、伐られることを免れはできません。あなたは狼に何の益もないのに、命乞いが通じると思うのか？」

　話が終わるやいなや、狼はまた牙をむき出しにして東郭先生に飛びかかりました。東郭先生は言いました。「狼は約束を破った！　3人の老人に尋ねると誓ったのに、たった今の老いた木に会っただけで、すぐに私を追い詰めるとはどういうことだ？」。そこでまた一緒に歩き出しましたた。

　そのとき、日向ぼっこをしている年を老いた牛が見えました。狼は言いました。「この老人に聞けばよい」。東郭先生は拒んだが、狼は言いました。「とにかく聞け。聞かなければ噛み殺すぞ！」

　仕方なく、東郭先生は年を老いた牛にも事の次第を一から話しました。牛は聞き終えると、農夫の家での自分の経験に照らしてこう言いました。「わしはこんなに大きな功があるのに、あの者（農夫）はこんなにも情け知らず、わしはもうすぐ災いに遭うところだ。お前が狼にどんな恩徳を与えたというのだ。災いを免れようとは、なんという当てにならぬ望みか」

　年を老いた牛の言葉が終わるやいなや、狼はまた東郭先生に飛びかかりました。東郭先生は大声で叫びました。「慌てるな！」

　やがて、遠くに一本の杖をついた老人が歩いて来るのが見えました。見るところ、徳のある方のようです。東郭先生は急いで駆け寄り、地にひざまずいて頭を下げ、泣きながら杖の老人に助けを求めました。老人がわけを尋ねると、東郭先生はまた一部始終を話しました。それから重ねて頭を地につけ、身を伏せて、老人の指示を待っていました。

　老人は話を聞くと、杖で狼を打ちながらこう言いました。「お前は間違っている！　人様が恩をかけて助けてくれたのに、お前は恩を忘れて裏切った。これほど不吉なことはない！　さっさと立ち去れ！　さもなければこの杖で打ち殺すぞ！」

　すると狼は言いました。「お年寄りは物事の片方しかご存じありません。もう片方は知らないのです。どうか私にも話をさせていただき、よくお聞きください。最初に先生が私を助けたとき、私の脚を縛り、袋の口をしっかり閉じ、書物を重ねて押しつけました。私は体を曲げて息もできず、袋の中で窒息しそうでした。あれは私を袋の中で殺そうとしたのです。どうして先生を食べないでいられましょうか？」

　東郭先生は納得できず、自分がどれほど狼を憐れんで大事にしたかを詳しく説明しました。しかし狼は、言葉巧みに反論を続け、どうしても勝とうとしました。すると老人は言いました。「そんな言い争いだけでは信用できない。もう一度袋に入れて見せてみなさい」。狼は大喜びで従い、足を東郭先生に差し出しました。東郭先生は狼の足を縛り、袋に入れ、そして袋を担いでロバの背に載せました。

　老人は東郭先生の耳元でささやきました。「短刀はありますか？」。東郭先生は言いました。「あります」。老人は目で合図をして、東郭先生に短刀で狼を刺すように示しました。東郭先生は言いました。「それでは狼を傷つけてしまいます」

　老人は言いました。「禽獣がここまで恩を忘れて不義をするのに、あなたはそれでも殺すのをしのびないと言うのですか。仁慈を説くにも、愚かになるほどであっては、君子がほめることではありません」。そう言うと老人は大笑いしました。老人は東郭先生を手伝って狼を殺し、道の上に捨てて去っていきました。

　この物語は私に教えてくれます。善が悪に利用されるとき、それはもはや善ではなく愚鈍なのです。愚鈍は人に邪悪を助長させてしまいます。現代の世界では、悪を助長した者が、その悪に跳ね返されて（報いを受けて）しまう事例や出来事が、数えきれないほど多く存在します。前人の失敗を手本として、後人が戒めるのです。