　【明慧日本2025年12月9日】（前文に続く）

　家族の弁護人を務める

　不当な投獄を終えて帰宅して間もなく、妻は別の同修とともに市場で真相を伝えたために不当に連行されました。妻が拘束されていた期間、法の手続に則って各関連政府機関に法律で定められた書式を満たした非の打ちどころのない多くの公式な文書を提出し、真相の内容と法令条文をうまく融合させ、道徳心に訴えかけると同時に法律に基づいて理路整然と説明したところ、非常に良い効果を上げました。

　妻への不当な開廷前、各種の資料を携えて裁判所に赴き、家族の弁護人を申請しました。準備が万全だったため即座に認められました。ちょうど担当裁判官に面談できる好機を得たので、教えを請う姿勢で妻の裁判についてどのように妻の無罪を主張するのかを非公式な形で説明し、評価を求めました。すなわち、法輪功は本来社会にとって百利あって一害なしの極めて善良で有益な修煉法であること、なぜ1999年に法輪功に対する政府の態度が突然180度転換したのか、法輪功修煉者の日常的な行動なぜ犯罪に当たらないのか、中国刑法第300条の罪名である「邪教組織を利用して法律の執行を妨げた罪」は法輪功には当てはまらないこと、法律上の犯罪として成立するための基本的な要素、および「法に明文なければ罪とならず」の原則、そして、中国共産党（以下、中共）が繰り返してきた「大衆運動（訳注：中共が行ってきた政治運動）」から始まり、現在は中共が法律を利用して罪のない善良な人々を迫害している状況に至るまでを順に述べました。裁判官は静かに聞き入り、しきりにうなずいていました。

　この時、右後方から女性の声がしました。「お兄さん、あなたはどんなお仕事？　話が本当に上手ですね！」。振り返ると女性の裁判官でした。この時初めて、担当裁判官と面談していた場所が大部屋で、複数の裁判官が同じ室内で執務していることに気づきました。

　家族の弁護人にはなったものの、主審裁判官（訳注：裁判長）からは「上からの規定で一部の記録は閲覧のみで撮影不可」と告げられました。主審裁判官からの不当な要求を受けて、法的根拠の提示を求めると、彼は渋々「ない」と答えました。

　裁判所の規律検査部門（訳注：職員の不正や規律違反を監督する機関）に赴くと、応対したのは、自分はかつて刑事部門の裁判官だった、と称する人物でした。最初は「必ず通常どおり記録の複写を認める」と確約したのですが（捏造によって作り上げられた）法輪功の案件だと聞くや、態度が一変しました。「法輪功の案件は特殊な状況で撮影は一切認めない！」と言いました。そこで「法的根拠は何ですか？」と問うと、規律検査部門の人員はさらに声を荒げて「これは政治問題だ。一般の法律規定どおりには扱わない」と叫び、取り乱したように脈絡のないことをわめき立てました。私は規律検査部門の人員の背後にある邪悪な要素を取り除くよう正念を発しつつ、威厳をもって見据え「何であれ、口で言うだけではだめです。あなたが主張する決まりが公式なルールであることを証明してください！」と強く告げました。規律検査部門の人員は冷静さを取り戻し「あなたが学者なのはわかっている。理屈は論じない。とにかくこの件はこういう決まりで、私にもどうにもできない」と言いました。

　妻のために人権派の弁護士に弁護を依頼してはいましたが、裁判所から法律援助の弁護士（訳注：国選弁護人）を付けるかと問われた時も、私はためらわずに「お願いします」と答えました。なぜなら、裁判所が法律援助の弁護士の任命という提案をしてきたまたとない機会に、弁護士に真相を伝えて弁護士を救い、妻の案件で良い役割を果たしてもらうと同時に、弁護士自身が功徳を積めるようにしたかったからでした。まもなく法律援助の弁護士の馬弁護士と連絡がつき、彼女は率直に「（捏造によって作り上げられた）法輪功の案件を担当したことがあり、法輪功修煉者が無罪なのは承知していますが、私自身の身の安全を脅かすリスクを伴うため、法廷でそのままは言い出せません」と打ち明けました。馬弁護士の状況を理解し、私は「ではこうしましょう。うちではすでに人権派弁護士を別途に依頼してあります。その弁護士が主導しますから、それに沿って要所だけ『同意します』と述べてください」と提案しました。馬弁護士はうなずいて同意しました。

　こうして妻には弁護人が3人になりました。規定では当事者1人につき弁護人は最大2人まででした。私は心を動かさず、もし裁判官に問題視されたら、たとえ自分が弁護人の枠を譲ることになっても馬弁護士を立てよう、馬弁護士を弁護人として法廷に立たせることが彼女を救うことになるのだ、と考えました。ところが不当な開廷当日、裁判官はまったく「弁護人は最大2人まで」という規定に違反している点に触れませんでした。おそらくこの裁判では、私の妻ともう一人の学習者が一緒に共同被告人として審理されていましたが、もう一人の学習者には弁護人が一人も付いていなかったからでしょう。審理の過程では、3人の弁護人はうまく連携し、弁護の骨子は人権派弁護士が述べ、中共が最も触れられたくない核心的な部分は私が述べ、人権弁護士と私の弁論が終わった後で馬弁護士が「両弁護人の意見に同意します」と述べる、という形で進めました。

　妻を再び救出する

　数年後、妻はまたしても連行されました。妻が連行された時点で、私自身も各地を転々としながら逃亡生活を送らざるを得ない状況に直面していました。選択を迫られた時、私は心の中で「自分が逃亡生活を送ったら、どうやって妻を救い出すのか？　自分が逃亡生活を送ったら、この迫害をどう終わらせるのか？」と自問しました。自問自答によって導き出された結論により、派出所に鍵を取りに行き、堂々と家に戻ることに決めました。

　道すがら「警察が今まさに自分を捜していて、逮捕しようと待ち構えているのでは？」と恐れの心に関わるさまざまな念が次々に湧き上がりました。そこで、師父の説法を思い起こしました。最後は覚悟を決め、自分に起こりうる最悪の事態をすべて受け入れる覚悟を決めたうえで、迫害を正面から否定し、すべてを師父に委ねました！

　派出所に着くと「家に戻りたいのですが、手元に鍵がありません。妻があなたたちに連行されたと聞きました。なぜ彼女を連行したのか知りたいのです。同時に彼女の鍵を渡してください。そうでないと家に入れません」と来意を説明しました。当直の警察官は、担当警察官が1時間後に戻る、それから鍵を渡せるのでまずは入口で待っててほしい、と言いました。

　2、3時間後、すでに夜の8時過ぎになってから担当警察官が戻り、私に「押収品を管理している担当者が泥酔していて来られません。明日また来てもらえますか？」と持ち掛けました。私は大声で「その提案は全くもって受け入れられません！　この真夏に、どこも蚊だらけです。空が明るいうちからずっとここで待っていたのに、その間あなたたちからは何の説明もない。こんなに遅くなって私はどこへ行けというのですか？　警察がそんな仕事ぶりでいいのですか？」と言いました。担当警察官は「私にもどうにもできません」と言うので、担当警察官にあえて見せつけるように110番に電話しました。相手は状況を聞くと、すぐに対応する、と約束しました。このような経緯を経て、私は堂々と鍵を受け取り、家に戻りました。

　数日後、再び派出所に出向き「公安部第39号文書（訳注：公安部が2000年に発出した公文書で、この公文書によると14種類の邪教の中に「法輪功」は属していない）」と「国家新聞出版総署第50号令（訳注：2011年3月1日に中国新聞出版総署が発布した命令で、1999年に発令された法輪功関連の出版禁止に関する通知を撤廃するというもの）」のコピーを担当警察官に手渡しました。担当警察官は受け取りを渋りましたが、私は厳粛に「これは本件に関する私の提出資料です。必ず受領してください。この2つの文書だけでも、妻が無罪であること、そして私の家から押収した物品がいずれも禁制品ではないことが証明できます」と告げました。すると担当警察官はおとなしく受け取りました。

　妻を救出するために法的知識を駆使していた頃には「公義フォーラム」（訳注：大法弟子のために人権侵害や法律問題について情報を共有するオンラインプラットフォーム）がすでに充実しており、フォーラムのテンプレートに従って記入したうえで、事件に関わった警察官らを告発しました。告発状は国家・省・市・区の公安・検察庁・裁判所の各機関に送付すると同時に、私が不正を訴え出た警察官本人にも郵送しました。告発状を送付し終わった後、複数の部門から電話での連絡があり、同情を示すもの、助言を与えるものはありましたが、否定的な反応は一つもありませんでした。案件の進展に合わせ、関係部門に「事例による法解釈の申請書（訳注：具体的な事件を題材として、関連する法律が本来どのように解釈されるべきなのかを、裁判所に対して公式に説明を求める申請書）」「強制措置変更申請書（訳注：検察官などによって行われた強制処分（逮捕、勾留、捜索、押収など）の変更を求める書面）」「不起訴申請書（訳注：起訴されないように申請する文書）」「違法証拠排除申請書（訳注：捜査機関が違法な手段で収集した証拠を裁判で証拠として採用しないように裁判所に求める書面）」などの法律文書も郵送しました。

　案件が検察庁に送致された後、担当警察官に会い「法によれば、記録が検察庁に送致された時点で、事件に関係する物品は事件に随伴して移送され、それ以外は家族に返還されるべきです」と伝えました。担当警察官は「すべて移送済みで、返還すべき物はない」と言いました。押収品目録の提示を求めましたが、担当警察官は何かと理由をつけて出しませんでした。そこで正式に情報公開を請求し、派出所における押収物の処理に関する具体的な規定と処理手続の公開を求めました。担当警察官はすっかりうろたえ「我々は合法的に捜査しており、全過程を録画しています」と言うので「今私が求めているのは情報公開であって、具体的な規定と処理手順の公開です」と伝えました。担当警察官はどうしようもなくなり、数日後、パソコンや携帯電話などの電子機器を返還してきました。

　不当な判決が下された後、判決書には、家にあった宣伝物は本人の作成ではないと記載されていました。そこで私は判決書を持って派出所に行き、本件と無関係の物品の返還を求めました。ところが担当警察官は相変わらず手続きを引き延ばすので、私は区公安分局の陳情受付事務所を直接訪ねました。ちょうど区公安分局の幹部が当直で、私の陳述を聞くと派出所の対応に不満を示し、私がこれ以上奔走しなくてもよいように迅速に解決すると約束しました。

　ところが、問題解決への期待があったにもかかわらず、派出所は引き延ばし続けたため、やむなく再び陳情受付事務所に行きました。主任は話を聞き終えると「ちょうど今日会議があり、あなたの所轄の所長と『政治保衛科（訳注：反政府活動を取り締まる部署）』の者が来ています。全員を呼んで、面と向かって事実関係をはっきりさせ、早急に解決しましょう」と言いました。しばらくして所長と政治保衛科の者がそろい、政治保衛科を率いていたのはSでした。

　Sは向かいに腰を下ろすなり「法輪功に関する一切の物品はすべて事件関係物品だ！」と大声で叫び、私に「聞こえたか？」と詰め寄りました。私が「聞こえました」と言うや否や「ならそれでいい」と言い捨てて踵を返しました。私は立ち上がって「待ってください！　私の家のプリンターがどんな事件に関係すると言うのですか？」と問いただしました。Sはばつが悪そうに入口で立ち尽くし、進むことも退くこともできませんでした。状況が膠着状態に陥った時、主任が来て「落ち着いて。あなたが必要な物を紙に書いてください。こちらで手配します」と言いました。私はSの問題点を指摘しながら、弁護士から受け取っていた『押収品目録』に基づいて、該当する物品を一つひとつ挙げました。

　数日後、新たに引き継いだL副所長から連絡があり、受け取りに来てほしいとのことでした。押収品を受け取りに派出所へ行った時、妻はすでに帰宅していました。派出所で床一面に並んだ物を見渡し「タブレット端末とプレーヤーがまだ足りませんね？」と言うと、Lは「そのタブレットはパスワードを教えてください。中身に問題がないと確認できて初めて返せます。プレーヤーは小型のラジオのことですよね。メモリーカードには『反動的宣伝物（訳注：中共が党の支配に対して批判的であると見なした情報媒体）』の内容が入っているので、ラジオ本体は返せますが、カードは返せません」と言いました。私は「では、法的な見解の相違が存在する物は次回に回し、法的な見解の相違が存在しない物から先に受け取ります」と答え、Lは快く同意しました。

　さらに私は「物がこんなに多いのに、当時はパトカーで運んできましたよね。私たちが手で運んだらいつ終わるかわかりません。あなたたちの車で届けてもらえませんか？」と言いました。Lは「問題ありません」と快諾し「回転灯の付いた車は目立ちすぎるから、公用車を使いましょう」とも言いました。Lとの合意に従って、警察官数人が次々と荷物を積み込み、車は満載になりました。Lは自ら同乗して私の家まで荷物を届けてくれました。帰り際、Lは愛想よく「お兄さん、お姉さん、今日は物を車でお届けしましたが、公務ではなく私的な行為です」と言いました。私たちは礼を述べました。

　私たちが大法書籍の返還を粘り強く求め続けたため、L副所長では対応しきれなくなり、Z所長が引き継ぎ、私たちを別室に呼んで小声で「あなたたちが出した文書はすべて目を通しましたし、ネットや書籍でも調べました。あなたたちの言うことが真実で、正しいこともよくわかっていますし、とても理解しています。ですが、私の裁量で法輪功の書籍を返せば、この制服は脱がねばならない（警察官でいられなくなる）。もし当時、出動の場に私がいたなら、こうはならなかったでしょう」と打ち明けました。続けて、Z所長が別の派出所にいた時に法輪功修煉者を助けた話をしました。会話の中から、Z所長が真相を聞いて受け入れていることがはっきりと感じ取れました。Z所長の立場を理解したので、私たちは彼を困らせないよう、当面は大法書籍の件をいったん棚上げするが決してあきらめはしない、と伝えました。Z所長はとても喜び「ほかに未返還の電子機器はありませんか？」と尋ねました。私が「プレーヤーのメモリーカードがまだです」と答えると、Z所長は「すぐに手配します」と言いました。

　一連の押収品返還交渉が一段落した後、地元の同修がわが家の経緯を聞いて「法律を武器に粘り強く戦えば、警察組織を動かし、不当に奪われたものを取り戻すことができる」という事実に正念を奮い起こし、不当に押収されていた電動三輪自動車を取り戻しました。

　（続く）