古今の名君や家臣・官僚の歴史物語 2話
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明慧日本2017年4月9日】

 欲張らなければ、役人も清廉になる

 南北朝時代の南朝の斉には、甄彬(ジェンビン)という才徳兼備(すぐれた才能と知恵、人徳を持っている)な人がいました。彼はお金に困った時、荊州長沙の質屋に行って真麻を抵当に入れ、借金をしました。その後、また真麻を買い戻しましたが、真麻の中に手ぬぐいに包まれた5両の金が入っているのを見つけました。甄彬はその金を質屋に返却しました。

 質屋を管理している和尚さんは大変驚いて、「最近、金を抵当に入れて現金に変えた人がいました。こちらは慌ただしくて、金をどこに置いたか忘れてしまいました。拾得した金を返してくださる奇特な方など、かつて古今東西どこにもいなかったでしょう」と言いました。和尚さんは彼に謝礼として金の半分をなんとしても渡そうとしましたが、甄彬は断固としてこれを受け取りませんでした。和尚さんは彼が金を拾って猫ばばしない君子だと称賛しました。

 その後、甄彬が郫県(ひけん)の長官に任命され、就任する前に、彼ら5人の官吏は皇帝にお別れを告げに行きました。皇帝はくれぐれも身を正し、清廉潔白を保つようにと戒告しましたが、甄彬だけには 「そなたには昔から拾ったものを必ず届け出るという美名があるから、もうそのようなことを言い聞かせる必要はないな」と言いました。

 中国共産党の幹部は、公の場で大口をたたき自分の清廉潔白を標榜していますが、陰では公金で飲み食いし、賄賂や贈り物を受け取り、汚職をし、腐敗が蔓延しています。小さなことにも欲望を剥(む)き出しにしていれば、大きなことではなおさらで、清廉潔白(せいれん-けっぱく・私欲がなく、心や行いがきれいで正しく、やましいところがないさま)になるはずがありません。今の中国では汚職が蔓延し、官僚たちは汚職しないはずがありません。

参考資料:『谈薮』 宋 庞元英

 宋景公は、威徳で自分の寿命を延ばす

 延寿多福はすべての人の願望です。この願望は実現できるでしょうか。古代の人はどうやって寿命を伸ばしたのでしょうか。

 春秋時代、宋国の宋景公が国王になった時、荧惑(火星)が心宿に留まる天象が現れました。宋景公は天を敬畏しており、心の中でとても恐れていました。そこで、「子韋」という人を呼び出し、「荧惑が心宿に留まる天象とは何を意味するものか」とお聞きになりました。

 子韋は「荧惑とは、天罰という意味です。つまり災いが宋国の君主の御身に降りかかってくる事でございす。しかし、そうだといたしましても、災いを転化することができます。例えば宰相の身に転化することも」と言いました。

 宋景公は「宰相は、国を治める重要な人物だ。その者に転化すると、宰相が亡くなるということではないのか、それは駄目だ! 寡人(かじん・帝王・諸侯などが自分をさしていう語)が自ら責任を負うことにしよう」

 子韋は「陛下、それでは百姓たちにも転化することができますが」

 宋景公は「百姓どもが皆死んでしまえば、国王としてなんの威厳があるというのか! 寡人1人が死ねば済むことで、これで治まるではないか!」

 子韋は「それならば、来年の農作物の収穫高に転化することもできますが」

 宋景公は「来年の農作物の収穫高がよくなければ、百姓にも必ず餓死する者が出るではないか。君主の私のために、我が民を殺し、己(おのれ)を守ってかりそめに生きたとしても、誰も名君であったと評さぬわ。寡人の命の最期がやってきたのであれば、子韋よ、お前はもうこれ以上何も言わなくてよいぞ」

 子韋は丁重に礼をして姿勢を正し、「臣下のこの私めが謹んで一言、陛下にお祝いの言葉を申し上げます。神様は高いところにおられ、下界の声をお聞きです。陛下は3回も慈しみ深いお言葉を言われておいでです。神様はきっと陛下に恩賞を与えてくださいます。今夜、星の位置はきっと3回移動し、陛下のご寿命も21年延長されることになるでしょう」

 その日の夜、星の位置は本当に3回も移動し、子韋が言った通りになりました。

 星は天象の変化を表し、人間の災いや幸福に対応しています。しかし、人間の災いと幸福は自らの選択によって変化します。1人の人が「善」を選択すれば、その人の運命は「良い方向」に変化し、「寿命」をも延長することになるかもしれません!

参考資料:『新序 雑事四』漢 劉向

 
(中国語:http://www.minghui.org/mh/articles/2017/4/2/345079.html)