色彩学と修煉文化(七)
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文/Arnaud H.

 【明慧日本2022年1月19日】(前号より続く)世界には、様々な色彩理論がたくさんあります。例えば、四原色理論に基づいたドイツのオストワルト表色系(Ostwald color system)や五原色理論を説く米国のマンセル表色系(Munsell color system)など、これらの理論は学校が教えている三原色理論と大きく異なるものです。しかし、多くの人はこれらの理論を知ることがなく、色彩学には三原色理論だけと思い込んでいます。

 しかし、実生活においては異なる色彩理論も現れています。例えば、前世紀末以降、多くの高級印刷会社は四色の印刷をやめ、より高価な六色印刷を採用しています。もとの四色に二種類の色を追加することで表現する色域がかなり拡大し、より正確な色彩を表現し、より美しい色彩印刷が可能となりました。もし三原色理論が実際にうまく機能しているのであれば、他の色をインクに加える必要があるのでしょうか?

 もちろん、三原色理論には一定の歴史があります。多くの学者に認められ、体系だったものです。しかし、これも数ある視点の一つにすぎません。学術界で一つのモデルが構成されたことで物事をそのように理解できたということであり、モデル自体が真理ではないことをはっきりさせる必要があります。

 これらの理論は人の次元の中でも相当の限界があり、他の次元ではなおさら通じません。例えば、修煉における功の光の色という視点から見ると、赤はエネルギーの一番低い次元で、橙は赤より一層高いのに、赤がどうして原色になり、より高い次元の橙は原色にならないのでしょうか? 紫は青よりエネルギー次元が高いのに、なぜ青が原色で、紫が原色にならないのでしょうか? つまり、より高い次元では、赤、橙、黄、緑、青緑、青、紫の各色にはその色の意義があり、他の色が替わることができないのです。その背景には、大きな要因があるのです。

 実はこの七色だけではなく、他にもまだ多くのきれいな色がありますが、それは混色で作ることができません。例えば、美しく鮮やかな緋色の彩度は、真っ赤な色の彩度と同じですが、少し寒色な面があります。もし真っ赤な色と青(あるいは他の寒色)を混ぜ合わせれば灰色っぽくなり、彩度は落ちてしまいます。経験のある画家なら、多くの鮮やかな色は混ぜ合わせて作ることができないと知っています。一番有効な方法は、直接店で買うことです。

 もう一つ問題点があります。それは顔料の安定性です。異なる顔料は異なる原料で作られているので、化学反応を起こしやすく、色彩の耐久性や顔料の結膜の堅牢性を損ないかねません。実は天然物質から取り出した顔料は、他の物と混ぜなければ大きな問題が生じないのです。特に油絵具の場合、このことはとても大事なことなのです。

 例えば、カドミウムオレンジという色は、オレンジ色に近い単一色の黄色顔料です。赤と黄色を混ぜ合わせて作ることはできません。単独で使うのであれば問題ありませんが、カドミュームレッドとクロムイエローを混ぜ合わせて作った橙は、時間の経過と共に化学反応をおこし、茶色に変わっていきます。

 これらのことが原因で、19世紀になると色の混ぜ合わせの禁止が美術界で真剣に議論されました。しかしその後、様々なモダニズムの現れで、これらの厳粛な研究は徐々に重んじられなくなり、一部の知識も失われ、多くの絵画で顔料が数十年後に裂け落ちて毀損しました。歴史が末法時期に入り、すべてが壊滅していく過程なのです。

 ここまでお話してきましたが、皆さんが固有観念を打破することに、多少なりともお役に立つことを望んでいます。ここ二世紀で、人の思想は古人のそれとかなり異なってきました。記録に残る数千年の歴史で、人類全体の文化や観念は、ずいぶんと変化したのです。人が「伝統を尊敬する」と口にしても、それは形だけです。実のところ、現代人は数千年来築き上げてきた正統思想に一顧の価値もないと思っています。多くの人は現代の虚像に惑わされ、様々な現代意識が自分の真の思想にとって替わりました。自分を見失い、大変危険な境地に陥り、道徳の堕落に流され、壊滅の境地に滑り込んでいます。

 今日、私たちは廃墟だらけの中で神伝文化が残した痕跡を探しているようなもので、法理の啓示のもとで、霧の中で様々な困難を乗り越えて、一歩一歩伝統の道に戻っています。芸術の回帰の過程は修煉の過程と同じで、すべては法を正す中で正され、純粋な真、純粋な善、純粋な美の状態に戻り、再び神伝芸術の光を開花させ、輝かせるのです。

(完)

参考文献:
Aristote,《 De Sensu et Sensibilibus 》, 4th century BC
Cennino Cennini,《 Libro dell’Arte 》, 1437
Charles Moreau-Vauthier,《 La peinture 》, 1913
Ewald Hering,《 Zur Lehre vom Lichtsinne 》, 1878
Étienne Dinet,《 Les Fléaux de la Peinture 》, 1926
Giorgio Vasari,《 Le vite de' più eccellenti pittori, scultori e architettori 》, 1550
Jacques-Nicolas Paillot de Montabert,《 Traité complet de la Peinture 》, 1829
Jean-Georges Vibert,《 La Science de la peinture 》, 1891
Leonardo da Vinci,《 Trattato della pittura 》, 1651
Léonor Mérimée,《 De la peinture à l’huile 》, 1830
Paul Coremans,《 Les Primitifs flamands 》, 1953

 
(中国語:https://www.minghui.org/mh/articles/2021/10/19/431985.html)