色彩学と修煉文化(二)
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文/Arnaud H.

 【明慧日本2022年1月11日】(前号より続く)美術史上、青と赤は冷色と暖色の代表色と前号でお話しましたが、伝統文化でいうと、青と赤は陰陽の概念を表しています。

 陰陽は、道家の太極学説における重要な構成要素です。通常、太極図が赤と青の二色の陰陽魚で構成され、赤は陽を代表し、青が陰を代表すると考えられています。もちろん、これは一定の次元の認識であり、異なる次元では法理も異なります。青が陽を代表し、赤が陰を代表するという考えもあります。全体的には、大道による宇宙への理解と概括を現わしています。修煉界では、この二つの色が構成した太極図が先天大道に属するので、通常の道家の太極図の色とは異なります。

 この角度から見ると、丹青は冷暖を表し、冷暖は陰陽を表し、陰陽は宇宙を概括します。小さいことから大きいことを見ることで、伝統文化の奥深さを窺うことができます。

 宇宙と言うと、現代メディアによる宇宙の映像や画像などの資料の影響で、通常、人々は星空の輝きや、果てしなく広々とした悠々たる宇宙という印象を持つでしょう。実は人間が見た宇宙は「宇」の概念で、「宇」の表面の非常に小さな部分です。人の目で見ることは、とても難しいのです。中国古代における宇宙への認識は、「四方上下曰宇,往古来今曰宙」、日本語に翻訳すると、「四方上下これ宇という、往古来今これ宙という」となります。つまり古人は、宇宙を空間だけでなく、時間の概念もあると認識していました。

 人類文明では、時間を歴史によって認識することができます。中国古代の史籍では「赤い冊に功績を記録する、青い冊に事件を記録する」ということを重んじます。「丹青」という言い方は比喩です。この二色の鉱石顔料は長く保持できるので、記録したことは長い時間を経ても終始変わらないという比喩です。

 ある意味、伝統文化は修煉文化でもあるのです。「丹青」の「丹」自体、修煉文化の名詞です。修煉界には、さらにまた「炉火纯青」(道家の丹薬を練る時,炉の炎が青く澄んだ色になると成功とされた)という言葉があります。この言葉も古代の丹道修煉に由来します。「炉」は丹炉(丹薬を練る炉)で、丹薬を練る時は十分な高い温度が必要で、丹炉の炎が青になると成功です。

 修煉界では、「煉鋼」(鋼鉄を精錬する)という言葉で修煉を形容します。理屈は同じです。古代の条件として、炉火純青(ろかじゅんせい)、炉の炎が純青になるためには、その法門の本当の教えを得、秘法を知り、更に自分自身が努力して修煉する必要がありました。これは容易なことではありません。

 もちろん、ここでの青い炎は、液化ガスやロウソクなどの化学反応による青い炎とは完全に異なります。修煉自体は宇宙エネルギーが人間に現れることなので、適切に説明すると、宇宙の恒星の光と炉火の色は同じ原理から生じたものです。

图例:宇宙中的星辰也有不同的颜色。图为欧洲南方天文台(ESO)在智利建造的大型光学望远镜“甚大望远镜”(VLT)所拍摄的“珠宝盒星团”(Jewel

宇宙の星の様々な色。異なる色の恒星がある散開星団。 

 これまでの物理学の理論によると、光の周波数が高ければ、エネルギーも高くなります。異なる色の光では、周波数が異なります。よく言及される七色光は、現代の分光法における周波数について以下の通りです。

紫色:668–789THz

青色:630–668THz

水色:606–630THz

緑色:526–606THz

黄色:508–526THz

橙色:484–508THz

赤色:400–484THz

 上記の通り、赤色のエネルギー値が一番低く、上にいくと、紫色のエネルギーが一番強いのです。異なる次元では、その次元に対応する関係があり、修煉の理論と照らし合わせると、異なる次元に達した功も異なる色のエネルギーを現わします。低い方から高い方へと順にすると、赤、橙、黄、緑、水色、青、紫の順となり(より高い次元のことについては、ここで話しません)、高次元のエネルギーは低い次元のエネルギーよりも強いのです。

 天空も同じです。通常、橙色の恒星の温度は、赤色の恒星の温度より高く、黄色の恒星は橙色の恒星より温度が高い…。この理屈は、炎についても同様です。例えば、燃えたばかりの火は温度が低く色は赤っぽく、火が盛んに燃えると温度が上がり、色は橙色になります。炎が徐々に弱くなると温度は下がり、徐々に赤色になります。

 しかし、この空間では炉火の温度が徐々に上昇し、人は完全な七彩の炎を見ることができません。炎の色は低い方から高い順に、大体が赤、橙、黄、白、青白、青という数種類の色しか見ることができません。天空も同じです。これまで人類が観測した恒星も、この数種の色です。

 この状況は、この空間の物理法則や、人の視覚の感光などの多くの要素と関わり、詳しく説明しますと非常に複雑です。読者が理解しやすくするため、筆者は複雑な学術理論を避け、簡単な理解しやすい方法で説明します。正確性は多少落ちますが、基本的な原理をご理解いただくことができるでしょう。

 先ほど、温度の変化に従って光の色も変わると説明しました。近代の量子力学の創始者の一人であるドイツの有名な物理学者マックス・プランク(Max Planck,1858~1947)は、この方面について深く研究しました。彼の研究によると、温度による光の色の違いは、人の目に見える色の範囲について軌跡の曲線を通して表されます。こは学術的には「プランキアン軌跡(Planckian locus)」と称します。簡単に言えば、この軌跡が表わす全ての色は、基本的に炎の温度が上がった過程で表れた色の変化です。これまで人類が観察できた異なる温度の恒星に現れた光の色は、全てこの軌跡にあります。下図では、皆さんが直感的に理解できると思います。

上図のカラーグラフィックの範囲は人間の目で見える範囲。図中の赤色の区域から青色の区域への軌跡曲線が「プランキアン軌跡」。曲線の数字は放射線源の温度を表す。

 この軌跡曲線は赤色の区域から始まり、赤、橙、黄色などの各区域を通り、最後には青色区域に到達しています。緑区域の真ん中は、数種類の光色が合流する所です。非常に明るい部分であり、色がはっきりしないのです。きわめて明るく高い輝度では、人が見た色は無色のライトカラーになり、通常は「白色」に見えます。よって赤、橙、黄色の次は、人の目で見える緑でなくなりました。

 青色の光に到達する時、軌跡曲線は紫色区域を避けています。これは人間が現在の宇宙に紫色の恒星を見つけられないことと対応しています。全体的に言えば、赤から青までの光しかなく、赤緑や赤紫の色はありません。炉火の色もこの原理と同様に、赤色から青色までです。

图例:这幅示意图(赫罗图)展示了恒星的光度与色彩,我们看到恒星的颜色整体分为红、橙、黄、白、蓝白、蓝几色。

「ラッセル図」は恒星の光度と色彩を表す。恒星の色は全体的に赤、橙、黄色、白、青白、青の数種類。

 この角度から見ると、炉火であろうと空の恒星であろうと、赤っぽいエネルギーは冷たく、青っぽいエネルギーは熱くなります。前述の赤青の太極では、青が陽で赤が陰となり、通常の認識とちょうど逆になっています。

 陰陽について詳しい人なら、陰陽は具体的なことに対応するわけではないと知っています。例えば、陰陽について、皆さんは通常、天が陽、地が陰、熱が陽、冷が陰と認識しています。しかし赤と青を例とすると、青い空の温度は低く、非常に寒く感じ、地下の赤いマグマの温度は極めて高く、非常に熱いのです。では、赤と青はどちらが陰で、どちらが陽でしょうか?

 これらの現象から私たちが分かることは、赤から青までの光の色全体が、空に見える星の色を含有して宇宙を象徴していること、また人の環境では広い空の青と地下のマグマの赤が上下の両極を表して天地乾坤を象徴すること、修煉の角度から見ると、赤と青の二色は溶炉の点火から円満成就完成までの炎の色を含み、完全な修煉過程を象徴することです。

 もちろん、これらは人間が認識できる表面次元の空間で、肉眼が見える色を通じて観察できる象徴的な意味の一部です。更に高い次元には更に奥深い意味があり、ここでは話しません。

 西洋伝統美術も神伝文化に属します。東方美術は、思想や文化面の境地と意味を表すことを重んじます。西洋美術の特徴として技法を重視するので、材料の把握と分析も重んじます。丹青は美術の材料として、東方文化に与えた影響が大きいだけでなく、西洋文化の角度から見ても意味があります。

続く

 
(中国語:https://www.minghui.org/mh/articles/2021/10/1/431980.html)
 
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