英国で法改正 臓器移植ツーリズムを禁止
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 【明慧日本2022年6月13日】英国でヘルスケア法(Health and Care Bill)が改正された。従来から英国内における臓器の商業取引は違法だったが、この改正でこれを英国外にも適用。英国民あるいは英国籍を持つ者が海外に渡航して臓器を購入する「移植ツーリズム」は違法となった。

'图1:二零二二年四月底,一项新的英国法律——《健康和护理法案》(the Health and Care Bill)正式生效。该法律禁止英国公民和英国国民前往中国,以及其它国家购买器官进行移植,因为存在道德风险。'

ヘルスケア法の改正:英国は商業移植ツーリズムを禁止

 この改正は、4月末から発効した。成立に主導的な役割を果たしたのは、キングス・ヒースのフィリップ・ハント卿。ハント卿は上院での票決にあたり、こう訴えた。

 「中国では、”良心の囚人”が臓器を収奪され、その結果として殺害されています。これは犯罪です。そうして摘出された臓器は、中国の役人や国民、外国人への移植用に売却されます。この修正案は、この不快な慣習を制止するために我々ができるささやかなものです」

 ハント卿の他にも、リバプールのアルトン卿、リベイロ卿、ランダフのフィンレイ女史、ノースオーバー女史、マリー・リマー議員、アレックス・ノリス議員など、中国での強制的な臓器摘出を懸念する多くの議員から超党派の支持があった。

 多くの英国メディアも報道した。メトロ紙は「英国企業 中国で収奪された生体臓器取引への関与に法的リスク」として、英国企業は臓器売買や生体臓器収奪、殺人への関与が判明すれば法的責任を負うと報じた。そして法廷弁護士として名高いウェイン・ジョルダッシュ氏(勅選弁護士)のコメントを掲載。それによると「医学ジャーナル、大学や病院、医療製品を販売する企業などの組織は、自分たちのサプライチェーンや取引相手、相手がこの問題についてどういった立場にあるのかをより詳しく調べる必要がある」。同氏はもともと「NHS(英国国民保健サービス)を含む英国の医療機関が生体臓器収奪に関与すれば、法的リスクがある」と警告していたのだ。

 サンデー・エクスプレス紙も「臓器売買:英国人はもう国外で臓器を買えない」と報じた。そしてサー・ジェフリー・ナイス卿(勅選弁護士)が率いた「中国(臓器収奪)民衆法廷」の結論も引用している。同法廷によれば、法輪功学習者や最近では新疆ウイグル自治区のウイグル族など、中国の良心の囚人が臓器を収奪されており、その「臓器狩り」の犠牲者は、生きたまま体を切り開かれた。そして多くは腎臓、肝臓、心臓、肺、角膜、皮膚を切除され、移植用臓器への需要を満たしている。

 同法廷に法的拘束力はない。しかし6カ月にわたって医療専門家、人権調査員、被害者から証拠を聴取した調査結果は国連に提出され、世界に行動を促した。同法廷の顧問であるハミド・サビ氏は国連人権理事会(2019年9月)で中国の臓器収奪が初めて発表された際、「犠牲者数や死者数で比較しても、生きたままの罪のない無害で平和な人々から心臓やその他の臓器を摘出することは、今世紀最悪の集団残虐行為の一つ」と述べた。

 前出のジョルダッシュ法廷弁護士は「論理的にも良識的にも、生きたままの身体からの臓器収奪が今日も続いていることが示唆される」という。同氏はメトロ紙に「中国は世界の移植産業の主要プレーヤーであり、多くの機関がサプライチェーンやトレーニングの一環として中国とつながっている。そして移植産業における人権侵害の中には、我々が知る限り最も深刻な犯罪、すなわち人道に対する罪や、おそらくは大量虐殺に関わるものもある」とコメントした。

 英国医師会(BMA)は、中国における臓器売買とその臓器移植制度について、独立した国際的な調査の実施を求めた。「中国(臓器収奪)民衆法廷」の判事団の一人でもあり、移植チームのリーダーだったマーティン・エリオット小児外科医は、生きたまま収奪された臓器の売買を止めるには、国際協力が必要とコメントしている。

 「中国(臓器収奪)民衆法廷」の発足を委託したオーストラリアに本部を構えるNGO「中国での臓器移植濫用停止ETAC国際ネットワーク」の日本担当、鶴田ゆかり氏(在英)は、今回の改正に至るまでの経緯を次のように解説している。

 「民間主導で法的な拘束力はないが、この民衆法廷が英国議会に与えた影響は大きいと思う。国際機関がこれまで手をつけてこなかった中国共産党による法輪功学習者、ウイグル人に対する「人道に対する罪」を証拠に基づき実証したからだ。裁定は証言の実録を入れると600ページに及ぶ。

 この重みのある裁定の発表(2019年6月)を受けた同年10月、英国上院議員の元保健相フィリップ・ハント卿が議員法案として『移植ツーリズムと遺体展示に関する法案』を提出した。2021年2月には『医薬品及び医療機器に関する法案』に「輸入されたヒトの組織に関しての規制項目」が修正案として盛り込まれ、可決された。

 控えめな修正だったが、上院での討議では14名の議員が、ここぞとばかりに次々と中国の臓器収奪を糾弾していった。英国の上院(貴族院)は終身制の名誉職だ。現在は、世襲制議員の数は限られ、社会に貢献した人々が上院議員となる。チャイナマネーに左右されないモラルの高い議員の存在を感じた。

 中国の臓器収奪を強い口調で譴責した医師の中には、英国王立医学会、イングランド王立外科医師会、英国王立産科医師会の元会長3名も混ざっていた。『医療品に及び医療機器に関する法案』では上院が主導的だったが、今回(2022年)のヘルスケア法の改正では、下院の方が一歩踏み込んだ。下院は国外での商業的な臓器売買の取り締まり案を提示し、この改正案が施行に至ったのだ。これにより、英国議会全体が、この問題に対する立ち位置を明確にしたと思う」

 
(中国語:https://www.minghui.org/mh/articles/2022/5/29/444213.html)
 
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