徐甲の古今
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文/方暁

 【明慧日本2024年12月19日】『太平広記』には、老子とその従者にまつわる話の記録がある。老子には「徐甲」という従者がいて、200年も老子に従い中国を旅していた中、一つの悩みをずっと心に抱えていた。主人である老子の約束では、毎日百文(1文は、銅貨の穴あき銭1枚)を支給することになっていたが、実際には1文も支払われていなかった。200年あまりの間、老子は「徐甲」に対して総額720万文の未払いがあった。

 この日、主従2人(老子と徐甲)は牛車で揺ら揺らと西に向かい、函谷関(かんこくかん。関所にあたる)に着いた。函谷関の宿屋には、訴状や手紙を書くことを生業とする男がいた。徐甲は自分の不満をその男に話し、役所に対して未払い金を求める訴状を書くことを頼んだ。男はそんな大金の話を聞いて大いに興奮し、その場で訴状を書き上げた上、家には未婚の娘がいて、賃金を取り戻せたら娘を徐甲に嫁がせると約束した。

 函谷関の関守であった尹喜(いん き)は、長年修行に励んでいたが、真の教えを得られずに悩んでいた。ある日の深夜、座禅中に彼は紫気(紫色のエネルギー)が東からやってきているのを見て、仙人が来られることを感じ取り、老子に会うや否や、その場でひれ伏して師事を願った。しかし、思いがけないことに、老子に会って最初に行ったことは、従者の訴状を審理することであった。

 主従2人は、役所で審問を受けることになった。主人である老子が従者・徐甲に口を開くように命じると、徐甲の口から白い光が飛び出した直後に地面に倒れ、ずっと昔に死んでいたかのような骸骨の形でそこに横たわっていた。なんとその白い光は、老子が与えた道家の「太玄真符」(呪符)であり、肉体が死なないように保つことができるのだ。

 老子は、従者・徐甲に借金をしていたのだろうか? 答えは明らかに逆で、従者は老子に命を借りていたのだ。さらに言うならば、老子の教えを身近で聞き、学べることこそ、何ものにも代えがたい貴重な機会だったのである。

 「徐甲」という名前は「虚偽(偽り)」を意味する言葉と発音が似ており、老子に200年従いながらも道を認識できず、お金だけを求め続けた結果、得道する絶好の機会を逃してしまったのだ。老子に従って200年間も無駄に過ごした彼の経験は、今日の無神論者にも大いに参考になる。しかし、徐甲が死んでからかなり長い年月が経った今もなお、世の人はその教訓を学ばず、徐甲の跡を甘んじて継ごうとする者さえいる。ある元飛天大学の学生(台湾人)がまさにその一例である。

 先日、この学生は、アメリカの神韻芸術団と飛天大学などの組織および個人を相手取り、民事訴訟を起こし、経済的な損害賠償を求めた。その後、神韻芸術団、飛天大学、および法輪功のいわゆる「隠れた情報」を掘り起こそうとしてきたニューヨーク・タイムズ紙の記者・洪芊芊(ホン・チェンチェン)は、いち早く神韻芸術団を攻撃する長文を掲載した。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、神韻の出演者がいかに「長時間」の過酷労働に耐えるだけではなく、その上、少ない報酬しか受け取っていないのかについて、多く報じた。しかし、同紙自身も認めているように、学校や教会は「労働法」の適用外である。また、現在も懸命に尽力している神韻の弟子たちの証言も報じた。

 2001年、当時ニューヨーク・タイムズ紙の発行人であったアーサー・サルツバーガー・ジュニアと同紙の編集者や記者数人は、江沢民と会う機会を与えられ、この独裁者と特別な関係を築いた。それ以後、ニューヨーク・タイムズ紙が法輪功に言及する際は、ほぼ中国共産党(以下、中共)による法輪功への中傷と攻撃を繰り返しており、そして今回、積極的な攻撃に至った。

 洪芊芊を始めとするニューヨーク・タイムズ紙の記者たちはよくない意図を持って取材を行ったが、報じた神韻の出演者たちの苦労は事実である。実際にその苦労はさらに厳しいもので、舞台に立つ出演者だけでなく、多くの人々や家族の支えと犠牲があって、はじめて今日の神韻が存在するのである。

 芸術を専攻とする学生は通常、卒業後に十分な収入を得ることができない。ピラミッドの頂点に立つ一握りの成功者を除けば、ほとんどの芸術エキスパートは生徒を教えることによる微々たる収入のほか、他の仕事を掛け持ちして生活を支える必要がある。裕福な家庭を除き、通常の家庭には美術を学ぶ子供を養う余裕がないはずだ。投資が大きい上、リターンが微々たるものであるため、一般家庭は子供を大学に進学させる際、医学やコンピューター、金融などの卒業後に高収入を見込める分野を選ばせることが多い。

 では、25年以上にわたって中共から迫害を受け、長い間、自費で迫害と闘ってきた法輪功学習者はなぜ、神韻に携わりたがるのだろうか? なぜ、これほど献身的であろうか? 個人的には、その理由はとてもシンプルだと思う。神韻は金儲けを目的としていないからだ。チケット販売は行っているが、その収益で一部のコスト、運営維持費、および基本給の支給などを賄っているだけだ。根本的な理由は、神韻が毎年演じる演目によって、観客に中国で続いている「真・善・忍」への迫害を知らせることができるからだ。これこそが、私たち自身および他の数多くの法輪功学習者が金銭や時間を投じ、労力を犠牲にしても神韻をやり続ける根本的な理由である。

 心優しい人なら、ニューヨーク・タイムズ紙の記事から、私たちの若い法輪功学習者の献身を読み取れているのかもしれない。実は、神韻に限らず、他にも数多くの世に気づかれていない献身がある。例えば、中国領事館前でずっと迫害停止を呼びかけている高齢者たち、週末や休日にボランティアで神韻を地域社会に広めている若者や中年層たち、中共の工作員が神韻の車両に損害を与えたり、設備を破壊したりする妨害工作をずっと組織している中、神韻公演が妨害されないよう、極寒の中で、神韻の車両を夜を徹して警備する青年学習者たち、各人、善意の力によって集まり、25年間に亘って迫害を暴露し続けてきた明慧の記者、海外記者および編集者チームなど、これほど多くの見知らぬ人たちが無言で協力し合い、報酬などにこだわらずに働いている......誰がその労働時間を計算し、誰がその給料を支払うべきだろうか? 修煉は自発的なものであり、迫害に抵抗したい気持ちも心から発するもので、そこに「強制」は、そもそも存在しない。

 神韻芸術団は学校の一部であり、学校のカリキュラムの一部でもある。何より、この学校の教師も生徒全員も法輪功学習者である。私たちの「真・善・忍」という堅固たる信念に対する迫害が終わらない限り、迫害を暴露し続ける中で、彼らが自発的犠牲を払うのは至極当たり前なことで、非難されることでもない。

 神韻芸術団を攻撃する記事を書いたニューヨーク・タイムズ紙の筆頭著者である洪芊芊は、中国の「欧米同窓会」の海外名誉理事を務めたことがある洪朝輝の娘である。この同窓会は、中共が海外に対して情報収集および浸透活動を行うことを目的とする統一戦線工作部に属する。洪芊芊と洪朝輝の父娘関係が海外メディアによって暴露されると、中国の国内メディアは即座にその関連報道を削除した。これほど多くの中国メディアのウェブサイトが、敵対国のニューヨーク・タイムズ紙の記者のために一斉に行動を取ったことからも、洪朝輝の娘に対する愛情の深さが伺える。

 哀れなことに、徐甲は200余年も仙人と共に過ごし、得道のチャンスを得ていたにもかかわらず、頭の中には金銭のことしかなかったのである。悲しいことに、どけだけ多くの元「法輪功学習者」が大法とのご縁があったにもかかわらず、徐甲の後塵を拝した。そして洪朝輝のように、娘を金銭に対する欲望で嫁がせようとした結果、娘と徐甲の将来をともに台無しにしてしまった人々のことを考えると、なお一層嘆かわしいのだ!

 
翻訳原文(中国語):https://www.minghui.org/mh/articles/2024/12/15/486150.html
 
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