【明慧日本2025年5月15日】(前文に続く)
寡婦の孝悌は神明に通じる
「孝悌の極みは、神明に通じ、四海に光り、通じないものがない」。これは『孝経・感応章第十六』の中の言葉で、現代人はそれをただ一種の形容や比喩として捉えがちです。二十四孝の一つで、東漢の董永が父を埋葬するために身を売り、天は感動して天女を彼の家に派遣し、布を織って借金を返すことを助けた話は、戯曲を通じて広く知られています。実は、史書や典籍には孝行による奇跡が数多く記されています。
清の乾隆45年(1780年)、北京の楊梅竹斜街で火災が発生し、数百軒の家が焼き払われた中で、一軒古くて小さな家だけが奇跡的に残りました。その家の周りの家はすべて廃墟となり、燃えたところと燃えていないところの境界線はまるで線を引いたように整然としていました。その小さな家の中には、病床に横たわった姑を守り、逃げることを拒んだ寡婦(かふ)がいました。近隣の人々は、これこそ『孝経』に言った「孝悌の極みは神明に通じる」の実例だと感嘆しました。その出来事は『閲微草堂筆記』に記録されています。『閲微草堂筆記』は清の文人・紀昀が自ら経験し、また聞いた出来事を記録した随筆集で、決して想像や幻想に基づいたものではなく、高い信ぴょう性を持っています。
『閲微草堂筆記』には、河北省滄州市の南の川辺に住んでいた吕四という悪党の話が記されています。彼は生前、悪事を尽くしましたが、死後間もなく妻に夢を通じて「私は生涯で数え切れないほどの悪行を積み重ね、本来ならば阿鼻地獄に堕ちる運命でした。しかし、生前に母親にとても孝行をしたため、軽い罰に処され、蛇として生まれ変わることになります。今、生まれ変わりに行くところです。あなたはもうすぐ再婚しますが、どうか義理の両親を大切にしてください。冥界の法律では、親不孝が最も重い罪です。決して冥界の刑罰に自ら首を突っ込まないでと人々に伝えてください」と伝えました。
「孝をもって天下を治める」の本質は、民を善に導くことにある
「親に優しくすることを孝行といい、兄弟に優しくすることを友愛という」、つまり人を大切にすることです。自分の両親を敬うことから始めて、他人の両親も敬い、自分の子供を愛することから、全ての子供を愛することに広げていくのです。そうすることで、すべての人に対して親切にすることができます。
中国は古くから「百善孝為先」の言葉があり、「すべての善行の中で、まず親孝行を実践するべきで、親孝行は、すべての善行の基礎である」という意味です。一般社会において、人の善良さは自分の両親に対する孝行から始まるもので、自分の両親に優しくすることができない人は、きっと悪に変わるでしょう。私の地元では昔から、不孝な人と友達にならないようにと子供は教育されています。自分の両親にさえ孝行できない人が、友達を良く扱うはずがありません。
「悪いことは小さくても行ってはいけない、善いことは小さくても行うべきだ。賢さと徳だけが、人を従わせることができる」。この言葉は、中国語文化圏ではほぼ誰もが知っているもので、これは紀元223年、劉備玄徳が亡くなる前に子供たちに遺した遺言の一部です。臨終の際、劉備が最も心配していたのは、子供たちがどうやって富や地位を保つかではなく、将来、善行を行い、善良で、悪事を行わないことでした。
アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾスはプリンストン大学出身で、2010年の卒業式で演説を行いました。彼は幼少期を振り返り、「善良は賢さよりも力強い」という教訓を幼い頃に学んだことを話しました。彼は子供の頃から非常に頭が良く、数学を好んでいました。10歳の時に、祖父母とキャンピングカーで旅行をしました。祖母がタバコを吸うのが好きだったのに対し、ジェフ少年はタバコの煙を嫌っていました。彼は広告で、タバコ1本で数分間の寿命が縮むことを知り、祖母が毎日吸うタバコの本数を基に計算し、祖母に対して「毎日吸うタバコで、寿命が9年短くなります」と伝えました。
彼は祖父母から賢いと褒められると期待しましたが、意外に祖母は悲しみで泣き出し、祖父はキャンピングカーを止めて、ジェフに「あなたはいつかきっと分かるでしょうが、善良は賢さよりも難しく、強いのです」と教えました。確かに「天道にはえこひいきがなく、常に善人に味方する」(『道德経』第七十九章)という言葉のとおり、善良な人こそ天の恩恵を受けることができ、善良は真の強さです。
古今の比較
中国の伝統文化では、親孝行は人格の重要な要素で、「百善の中で親孝行が最も重要で最も基礎である」とされています。歴代の皇帝は孝をもって国を治めると宣言しました。「忠臣は孝子の家から探す」というように、親孝行をする人は君主に対しても忠誠です。一方で、不孝な子孫は厳しい罰を受けることになります。中国の歴代で、皇位の後継者を選ぶ時、仁と孝の人柄を備えているかどうかは最も大切な基準とされました。
中国共産党が政権を奪って以来、「天地君親師」を最も尊重するという数千年来の伝統を壊し、共産党に対する忠誠をアピールするために、若者に親を密告するように唆して、伝統の倫理道徳をほぼ完全に破壊しました。特に一人っ子政策が施行されてからは、親を敬う子供はとても珍しくなりました。最近では、共産党当局は教師の自由発言を抑え込むために、小学校から大学まで、生徒が教師の「不適切な言論」を告発することが奨励され、告発で離職せざるを得ない教師もいました。数十年の脅迫、扇動、洗脳を経て、中国共産党は若者を伝統的な価値観から切り離し、これは個々の中国人だけでなく、中華民族全体の悲しみです。