夏、殷、周上古三代の天命観について考察する(九)
■ 印刷版
 

 【明慧日本2019年9月7日】いわゆる「天命無常」と言うのは、天が最高で全能で、「大きな使命」をある王朝に与える事が出来れば、また、それを回収して他の王朝に渡す事もできると言う意味です。つまり、天命と言うのは永遠なものではなく、移り変わるものだ、と言う考えです。

 しかし、周人から見れば、天命の転移は決して偶然ではなく、随意ではなく、それには理由も根拠もあると彼らは考えました。それならば、天命の移転を決定する原因と根拠とは何でしょうか? 天命を転移させる力は天にあるのであれば、帝王が天に対する態度、あるいは彼らが天を敬うか否かは、当然ながら天命の移転の原因と根拠になります。つまり、天に敬意を払えば、帝王は天からご加護をいただき、天命を与えられ、保たれ、王朝も長続きするが、反対に、天に敬意を払わなければ、帝王は天によって処罰され、天命が回収され、王朝も滅んでしまう、と彼らは考えました。

 『尚書・甘誓』によると、有扈氏を討伐する前、夏の啓王(けいおう:夏朝の第2代帝)は6軍の将軍を招集し、彼は「将軍たちよ、あなた方に宣告します。有扈氏は天意に反して、金、木、水、火、土の五行を軽視し、我々が発表した暦法を怠り、しかも見捨てました。そのため、天は彼らの国運を絶ち切ろうとしておられます。今、私は天の命令に従って、彼らに懲罰を加えます」と戦いの号令をかけました。そこから、天が有扈氏に処罰を与えたのは、彼が天意に反しており、天を敬わなかったからだと分かります。

 『商書・仲虺之誥』の記載によると、殷の湯王は夏の桀王に取って代わった後、大臣の仲虺(ちゆうき)は夏朝が滅びる原因を説明した時、「夏の桀王は天命の名の下に、民を虐めました。それは天を敬わないことで、大きな罪を犯しました」と言い、そして、「天道を慎んで尊敬して、初めて天命を永遠に保つことが出きる」と湯王に諫言しました。

 それでは、殷はどうして滅亡したのでしょうか? 『尚書・泰誓』では、周の武王は紂王を討伐した時、各諸侯に、「今殷王の紂は女の中傷言葉を信じ、自ら天との関係を絶ち切ろうとした。だから、私は謹んで天の意思を執行し、彼に懲罰を与える」と言ったのを記されました。また、『逸周書』※1にも、「紂王は天を敬わず、神を侮辱し、非常に悪質だった。武王が紂王を討伐するのは天命を表明するためだ」との内容が記載されました。ここから、殷の滅亡を招いたのも、同じく天を敬わなかったことだと分かります。

天命は移り変わるのもので、その移り変わる原因は帝王が天を敬うか否かによるものだ、と周人は上古時代の天命観に新たな内容を加えました。

(続く)

※1『逸周書』(いつしゅうしょ)は、主に周の王の言行や制度などを記した書籍。作者や作られた時代は不明である。

 
(中国語:http://www.minghui.org/mh/articles/2019/8/13/390469.html)
 
関連文章