老人ホームの経営者としての修煉体験 (二)
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文/中国の大法弟子

 【明慧日本2021年5月16日】前文に続く

 「桃李不言、下自成蹊」

 このようにして、衛生、サービスの態度、食事、気風はともに新しい姿になりました。その頃はまだウィーチャットを使う時期で、私はウィーチャットに高齢者家族のグループを作って、家族たちと頻繁に連絡を取り合い、高齢者の近況をマメに報告していました。連絡や報告に時間がかかりますが、効果は明らかで、老人ホームは本当に数十人もの大家族のようになって、高齢者の親族もここで「アットホーム」な雰囲気を感じています。

 自力で生活できる老人の多くは性格が悪く、家族とうまくいかない人です(従業員の話によると、大金を払ってここに入所してきたのは、家で家族と仲良く暮らせない人ばかりだという)。入所した当初、みんなの前で息子や嫁を怒鳴りつける入居者を見たことがあります。入居してからもそういうお年寄りの間にはトラブルが頻発し、ヘルパーに迷惑をかけるので、ヘルパーも嫌がりました。

 愛されていないため変な性格になってしまったので、お年寄りと家族の関係を改善させるには、まず、私たちからお年寄りにもっと関心と愛情を寄せなければならないと思いました。ヘルパー会議をする時、私は伝統文化の中の物語を話して、ヘルパーたちに「お年寄りに優しい人こそ、福の報いを受けられます。ここの仕事は実はとても徳を積みやすいところなので、給料を稼ぎながら徳を積む事ができるので、とても良い仕事です」と言いました。

 オーナーの了解を得て、老人の誕生日を祝う時、私たちは誕生日の歌を流し、「長寿麺」を作ったので、老人たちはとても感動しました。ここに入居している老人の多くは家族に誕生日を祝ってもらったことがありません。ヘルパーたちは老人に対し、ますます親切になっていき、ここの一番気性の悪い老人も私たちの善意と親切を感じて、だんだんと優しくなり、家族との関係もよくなりました。

 老夫婦が一緒に入居するケースもあります。ある日、夫が病気に罹り入院して、退院した後、子どもたちは老夫婦を家に迎えたいと言い始めました。しかし妻は「家に帰りたくない。あなたたちはヘルパーさんのように親切にしてくれるでしょうか」と言いました。

 入居者に脳性まひの若い女性がいて、自力で生活できない状態でした。私は師父の講法ビデオを見せ、大法の法理を教えると、それから女性は自分で食事ができるようになり、彼女の父親はとても喜びました。

 何組かの老夫婦は、ここに入居する前、片方が自力で生活できなくなり、もう片方は彼の面倒を見るために疲れきり、倒れそうな状態だったのです。老夫婦で一緒に入居した後、ヘルパーが細心に面倒を見てくれるので、老夫婦の機嫌も良くなり、自力で生活できない老人の状況はかなり改善し、やがて自立できるようになったことも多々ありました。

 ある老夫婦はここに暫く入居してから健康状態が改善し、費用の理由で家に帰りました。しかし暫くして、一人はまったく自力で生活できなくなり、もう一人は半分しか自力で生活できない状態になってしまい、仕方なくまたここに戻ってきました。このような例を見て、ここは他の老人ホームとはかなりの差があることに皆は気づきました。

 わずか3、4カ月で、いつの間にか入居者数は32人から58人に増え、空いている部屋も全部埋まりました。私は「内を修めて外を安定させる」[1]の法理を新たに深く体得しました。私は営業活動をいっさいしておらず、ただ全力で老人の生活環境を改善したい一心で、従業員、入居者、入居者家族など各方面の関係をバランスよく考えました。これで内面の環境が調和し、老人と家族が満足するようになって、自然に外部に評価され、入居者数が増えました。中国の伝統文化の中に「桃李不言、下成蹊」という言葉があり、「桃や李は何も言わないが、その美しい花や実に惹かれて人が集まってくるので、木の下には自然と小道(蹊)ができる」という意味です。

 今まで入居費用については、はっきりとした料金の基準がなくて、入居者が入るたびにオーナーの一存で料金を決めていました。私が引き継いでから、オーナーの了解を得て、細かい料金の基準と入居者資格を定め、誰もが公平になるようにしました。

 年末になると、ヘルパーの人数は私が来た時の6人から9人に増えました。私はオーナーに「私が来てからヘルパーに対する要求を高くして、皆もここ数カ月一生懸命仕事をしてくれました。皆さんにお歳暮を贈って頂けないでしょうか」と言うと、オーナーは喜んで全員に毛布を贈りました。実は、ヘルパーたちは仕事には苦労するものの、入居者数が増えたことに従って給料も上がったので、喜んでいました。

 ここで7カ月働いて、仕事はすっかり軌道に乗りました。この仕事はとても労働時間が長くて、「三つのこと」に支障をもたらしたため、とうとう私はオーナーに退職の意を表しました。最初、オーナーは納得してくれませんでしたが、私の態度が毅然としているのを見て仕方なく頷きました。その後すぐに新人を採用したので、新人に半月教えてから私は退職しました。

 最後の半月分の給料はオーナーに返しました。「最後の半月は、私が来ない日もあったし、その間の仕事はすべて新人がやり、私は新人に教えてサポートしただけです」と言いました。次の仕事が見つかるとすぐに、オーナーは就職祝いといってその半月の給料と同額の祝い金をまた私に贈ってくれました。

 金銭面で不正をせず、物を大事に使う

 金を使うことや、物を使うことに私はいっさい不正をしないように気を使っています。以前、ステンレス保温缶を買った時、私は数社の見積もりを比較して、安いほうを買いました。オーナーの娘さんはそれを聞いて、「数元の差しかないので、それほど気にしなくてもよい」と言いました。

 米や卵などを宅配してくる人には現金で支払い、普段のちょっとした出費もあるため、オーナーはいつも1000元を私のところに置いて、使い切ったらまた渡してきます。私はすべての出費を記帳して、帳簿を机の上に置き、誰でも見ることができます。うっかりして記帳を忘れて帳面の金額と残金が合わなくなる時、私は自分のポケットから金を出して帳面を合わせました。

 当時、学法の時間が少ないため、『轉法輪』を書き写すことを試みました。自分の金でボールペンを買ってきて、事務所のボールペンと紙を使いませんでした。

 竹繊維が入った雑巾は品質が良いが値段が高いため、それを老人の部屋を拭く時だけに使うというルールを作って、台帳にも登録し、配った日付、枚数を細かく管理しました。洗剤もインターネットでコストパが一番高いものを買います。

 時々、家から古いシャツで作った雑巾を会社に持ってきて皆に使わせまました。使わなくなった紙もプリント用の裏紙にします。オーナーはそれを見て、「〇〇さんはさすがに大手企業に働いた人だ、大手企業こそ物を最大限に使っている」と言いました。

 反省

 7カ月を思い返してみると、多くの困難をスムーズに解決することができたのは、すべて師父の加持のおかげだと感じています。

 仕事をしていると、反省すべきところもたくさんあり、例えば自分自身の能力や心性の高さを実証したい心があります。老人ホームのすべての改善はオーナーとヘルパーさんたちのおかげだと口では言っていますが、私の有能な管理能力を知らず、ヘルパーさんだけに感謝の意を表す老人を見て、心底不愉快になる時がありました。後になって、その不愉快な心こそ、自分の有能さを実証したい心が触発された時の証だと分かりました。自分を実証したい執着心は大法の仕事だけに存在すると思っていましたが、日常生活や仕事の中でもその心があると分かりました。

 ここに来た当初、環境に慣れてから法輪大法真相を伝えようと思っていましたが、環境に慣れてくると仕事も忙しくなり、一部の老人と家族だけにしか真相を伝えることができませんでした。多くの老人とその家族には二度と会う機会がなかったので、残念な気持ちだけが私の心に残りました。

 邪悪な迫害の中で、学校に行くチャンスを失い、仕事も失い、迫害されたために長期にわたり正常な社会環境から離れた修煉者に、大法の法理を忘れず、損得を計算せず、努力を払って心性を修めればきっと局面が打開され目の前の世界が広くなることを伝えたくて、この文章を綴りました。

 (完)

 注:
 [1] 李洪志師父の著作:『精進要旨』「内を修めて外を安定させる」

 
(中国語://www.minghui.org/mh/articles/2021/4/30/422662.html)
 
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