――ドウドウが教えてくれた物語(一)
文/子ども弟子 ドウドウ
【明慧日本2023年2月7日】私の名前はドウドウ。私にはたくさんのお話があるんだ。ママは言ったよ。「みんなに話してみない?」って。私は「うん、いいよ」って答えた。私のまわりにはいろんな出来事があって、それぞれの話をみんなに伝えたいと思ったの。
花が咲く原っぱ
うちの前には原っぱがあるんだ。私は毎日、その草がどれくらい大きくなってるかを見に行くんだけど、毎日見てたらだんだん飽きてきたんだ。
ある日、久しぶりに行ってみたら、その草たちがうれしそうに話しかけてきたの。
「あっ、ドウドウがまた来てくれた!」
草たちはかなり大きくなっていたけど、昔とそれほど変わっていなかったので、私は草たちに言った。
「なんでお花が咲かないの? お花はとってもきれいなのに…」
すると草たちは私に聞いた。
「ドウドウ、花ってなあに?」
私は答えた。
「お花はすごくきれいで、色とりどりの花びらがあって……」
草たちはまだわからないみたい。
「花びらってなあに?」
私もよく説明できなくなった。
「あのね、花びらは丸いのとか、先のとがったのとか、薄いのとか、厚いのとか……えーと、えーと…」
草たちは、ますますわからなくなってしまった。
「花ってきっと変なものだね」、「おそらく見た目も変かもしれないよ!」
そのとき、色とりどりの蝶々が飛んできたので、私はすぐにその蝶々を指差しながら、
「花はあんな感じよ! とてもきれいでしょう!」
花を知らない草たちは蝶々さんを見て、緑色の目をぱっちりと開けてこう言ったよ!
「わあ、すごくかわいいなあ! きれいだなあ!」
蝶々さんは草たちに見つめられてちょっと恥ずかしそうに、私の指に止まってそっと言った。
「この草たち、何をしているのかしら?」
私は蝶々さんに教えてあげた。
「草たちには花のことがわからないから、勝手に想像して『花って変なものみたい』って言ってるよ」
蝶々さんは毎日花たちを訪ねている。蝶々さんは花たちが美しく見えてるし、花たちも心の中にある花の蜜を出してお客さんをもてなしているよね。
蝶々さんは言った。
「ねえねえ、花って何かわからないのなら、私にアイデアがあるわ!」
私はすぐに聞いた。
「えっ、どんなアイデアなの?」
蝶々さんは言った。
「雲の中に住む仙女にお願いするのよ。そうすると花に変身することができるの。そうすれば草たちに見せてあげられるわ」
私は喜んで言った。
「わぁ、すごいなあ、蝶々さんにはそんな力があるんだ! いいね! いいね!」
草たちが一斉に言った。
「早く花に変身して見せて! 早く花に変身して見せてよ! 早く早く!」
蝶々さんは空中で踊り始めた。そして踊りながら歌ったよ。
「私の生まれた故郷は、仙女たちの住む場所。雲の中で最も美しい仙女よ、お願い、私の願いを叶えて!」
わあ、蝶々がこんなにきれいに飛んでいるのを見たことがない! まるで空中に色とりどりの線を描いているようだね。蝶々さんの歌声は私の耳だけでなく、心の中にまで届いたよ。
すると、一つの雲がやってきて、雲は幕のように真ん中から割れ、冠をかぶった仙女が金の杖を持って現れたの。
仙女はにっこり微笑んで、蝶々さんに聞いたよ。
「どんな願いがあるのですか?」
蝶々さんは答えた。
「ここにいる草たちは、花の姿を知りません。お願いします。私、花になってみたいんで す!」
仙女は優しく言った。
「蝶々さん、よく考えてごらんなさい。花になったら、もう飛べなくなるのよ」
蝶々さんは、返事に困った。
「そ、そうなの?」
すると、草たちがまた一斉に叫びだした。
「花になって欲しいの! 花になって! 花になって!」
草たちはみんな、花を見たいってすごく焦っていたんだ。
蝶々さんは、困った顔で言った。
「そんなにみんなが見たいのなら…、私、花になります」
仙女は優しく言った。
「もう一度、よく考えてね」
蝶々さんは緊張した顔で、草たちを見て今度ははっきりと言ったよ。
「私、花になります! 花になります!」
仙女は、一番大きな草を指差して言った。
「それでは、そこに立っていなさい」
蝶々さんがすぐに飛んでいったので、私はずっと蝶々さんを見ていた。
仙女が金の杖を振ると、金色の光が蝶々さんを包んだので、蝶々さんは緊張して目を閉じたの。羽はもう羽ではなくて、きれいな花びらに変わっていたよ。風も止んで、鳥たちの鳴き声も静かになり、しばらくすると一本のきれいな花が草の上に咲いたよ。
花の茎が伸びるのを止めたとき、花はまるで花火のように輝いた。ドウドウは今まで、こんなにキラキラ輝く花を見たことがなかった。
仙女は嬉しそうに言った。
「よく出来ました。あなたは本当に素晴らしい花になりました!」
その言葉が終わると、草たちは一斉に叫び出したんだ。
「わあ、花って、こんなにきれいなんだ! 仙女さん、仙女さん、私たちも花になりたいです!」
草たちは、やっと花の姿を知ったんだ。
仙女は、微笑みながら言った。
「いいわよ。ただし、ひとつ条件があります。自分だけの特別な花を咲かせなさい。他の花と同じではいけません」
すると、草たちはみんな静かになって一つの花を見つめたよ。すると、草たちが言い出したんだ。「私は尖った花びらを咲かせる!」、「私は丸い花びらを咲かせる!」、「私は薄い花びらを咲かせる!」、「私は厚い花びらを咲かせる!」、「私は七枚の花びらを咲かせる!」、「五枚の花びらを咲かせる!」、「重なり合った花びらを咲かせる!」、「私は紫色の花びらを咲かせる!」、「私は黄色の花びらを咲かせる!」って。
ああ、うるさいなあ…。
仙女が金の杖を振ると、草たちは自分の花を咲かせたよ! 自分の花を咲かせたよ!
みんな、本当にすごい! みんな形が違っていたよ! たくさんの色の花が咲いて本当にきれい!
仙女は微笑みながら言いました。「みんな、よくやりましたね!」
それからは、とってもにぎやかな原っぱになったよ。みんなここを通った時、立ち止まってこう言うんだ。
「わあ、このお花、見たことないね! すごくきれい! なんて名前かなぁ?」
蝶々さんが教えてくれたお花は、他にはないんだよ。だから名前はわからない。
でもね、私は蝶々さんのことがちょっと心配だったんだ。ある日、蝶々さんに特別に会いに行ってこう言ったの。
「羽がなくて、飛べないのはかわいそうだね」
すると、蝶々さんはうれしそうに笑って、こう言ったんだ。
「でも、お花になるのは楽しいよ。お花は心の中にある花の蜜を出してお客さんをもてなすの。それがとっても楽しいの」
私は言った。
「でも、羽が大事だよ。私、蝶々さんが飛べる日を夢見てるんだ」
すると、蝶々さんが小さな声で言ったんだ。
「耳をかして」
すると、蝶々さんはひそひそと小さな声で教えてくれたよ。
「仙女さんが帰るときに、言ってくれたの。『あなたはいい子です。もし蝶々に戻りたいなら、特別に許してあげます。お花は全部蝶々さんの羽だからね』」
私は聞いたの。
「お花は全部、蝶々さんの羽だからお花に戻りたいの?」
すると、蝶々さんは微笑んで言ったよ。
「本当は、今日が蝶々に戻れる最後の日なんです。蝶々に戻らなかったらずっと咲き続けるけど、蝶々に戻ったらここはいつもの原っぱになる。もう花は咲かない…」
私は急いで聞いた。
「蝶々に戻るの?」
すると、蝶々さんはニコニコしながら言った。
「明日来たらわかるよ」って。
私は一晩中、このことを考え続けた。どっちになるのかわからないけど、でも、とてもワクワクした。
翌朝、私は駆け足で原っぱへいったよ。
「わあ、たくさんのお花が咲いている! 咲いている! 咲いている!」
花たちは一斉に聞いてきたんだ。
「ドウドウ、どれが一番きれいか教えて! 教えて!」
どの花もみんな一番きれいで輝く姿を見せてくれたんだね!
このわんぱくな草たちは、花が咲く喜びの裏には大きな秘密が隠されていることを知らないんだよ!