老人ホームの経営者としての修煉体験 (一)
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 文/中国の大法弟子

 【明慧日本2021年5月15日】数年前、私は刑務所から出所したあと、ある老人ホームで経営・管理の仕事をすることになりました。長年、常人社会と離れており、出所して間もなくまだ社会に適応していないこともあって、もともと技術者であった私は最初の頃はまったく方向性が見えなかったのですが、退職時には、仕事は完全に軌道に乗りました。その過程の中で師父の慈悲なるご加持を深く実感し、常人の仕事をしっかりすることは修煉の重要な一部であることを悟りました。

 方向性を見つける

 私はもともと技術者で、人を相手にする仕事に最初は戸惑いました。老人ホームの管理をするにはオーナー、ヘルパー、高齢入居者、入居者家族を相手にしなければなりません。それに、老人ホームの日常は、家で過ごすのと似たような雑用が多く、私の仕事は数十人もの大家族を率いて生活をするようなものでした。私のような独身者にとっては、やり方を想像で模索するしかありません。オーナーは私を信頼してくれ、しかもオーナーの家族は全員、私が大法弟子であることを知っているので、どうしても仕事を良くしなければならないと思いました。しかしどこから手をつけたら良いでしょうか、まずは仕事環境を観察することから始めました。

 最初は、オーナー以外に誰も私が管理しに来たことを知らず、皆は私を入居者だと思っていました。私は毎日各部屋に行って、世間話をしながら様子を観察しました。数日後、いくつかの顕著な問題点を発見しました。一つ目は衛生状況が悪く、廊下に出ると、トイレの匂いがプンプンします。ニつ目は、年配入居者に対して態度が悪いヘルパーがいること。三つ目は、ヘルパーの中には、お年寄りに優しく接しない人の待遇が良くて、優しい人はかえって待遇が良くありませんでした。

 だんだんと、私が管理しに来たことを知る人が増えました。私は毎日ノートを持って、見た問題点を記録しました。どのテーブルを拭かないといけないのか、どの入居者の家族とコミュニケーションをとる必要があるのか、どのような問題をヘルパーと相談する必要があるのか、掃除道具をどこに置くのが一番良いかなど。これらの事の中には、ヘルパーの給料の額をどのように決めるかのような大きいことから、どこの布巾の数が足りないかのような小さいことまで、様々な細かい事を含んでいます。私は一つ一つメモして、次々に実行しました。夜中でも急に問題点を思い出したら、早速メモを取りました。最初の頃は業務に早く慣れるために老人ホームに宿泊しました。

 環境と風紀を改善する

 まずは衛生状態を改善することから始めようと思いました。当時、日勤のヘルパーは3人いて、自立で生活できる老人(1F)の面倒を見るのは1人、あとの2人は自立で生活できない老人(2F)の担当をしています。1Fの各部屋の衛生状況はまだ良いほうですが、2Fの状況はひどいです。しかし2Fのヘルパー2人のうち、Aさんはオーナーの親戚で、前述した老人に対して態度の悪い人です。オーナーと親戚関係にあるため私の言うことを聞いてくれず、掃除の改善について対応してくれません。もう以下人のヘルパーBさんは、老人に優しいので一日中忙しくて暇がなく、掃除に時間をかける余裕もない状況でした。

 困っていた時にちょうどCさんが応募して入社しました。Cさんはその前にホテルで掃除の仕事をしていたため、担当の部屋をとてもきれいに片付けて、トイレも毎日掃除しましたす。Cさんがお手本となり、他の従業員も掃除を重視し改善しました。ある日、オーナーが私に「Cさんはあなたの師父が送ってくれた天使だよ。衛生状況を改善するための方法がない時に、これで解決したね」と冗談を言って、私は「その通りだ」と思いました。

 衛生状況を改善した後、家族の満足度は大きく上がって、オーナーも頷きました。それは10月~11月の間のことでした。

 給料日は毎月15日です。10月14日、各従業員の給料明細書を作るようにとオーナーは指示しました。今までオーナーの娘さんが作っていた明細書を参考にしてなんとか作ったのですが、これまでの給料の中で、ヘルパーの歩合は担当する老人の人数だけを参考にして計算され、サービスの質に対する成果の評価がないという問題点を発見しました。来月からは、老人に対するサービスの質を評価基準に加えて、給料に反映したいと思いました。後になって知ったことですが、現地のほとんどの老人ホームで、自立で生活できない老人がヘルパーの顔色を伺うことは風習になっていて、これは伝統道徳に反することで、その悪い風習を変えなければいけないと思いました。オーナーに相談したら、オーナーは私の考えに賛成しました。

 給料を渡す時、来月から歩合の評価基準に掃除状況、老人に対する態度を新たに加えることを皆さんに伝えました。11月から、老人に態度の良いヘルパーは歩合を多くもらえました。これで暫くして職場全体の風紀が変わりました。Bさんが一番高い給料をもらうことになって、Aさんも老人に対する態度をずいぶん改善しました。よく働いて老人に優しい人が多く給料をもらうのは、本来の正しい風紀だと思います。そのやり方はAさんの利益に触れたのですが、彼女は私に恨みを抱いたことはありませんでした。Aさんはオーナーに「このような人(私)を見つけて、経営を任せられるのは良いことだね」と言ったそうです。私は心を正しく持って、やっていることに私心がないために、Aさんに恨まれずに済んだと思います。

 ある朝、食事をした時、Bさんはシェフに「お粥をもう少しもらえないか」と言うと、シェフはきっぱり断りました。Bさんは正直な人で、老人たちに親切で、目的を抱いて人を喜ばせることができないので、シェフはBさんが好きではありません。また、シェフが料理を配分する時に、良い料理を自分と仲の良いヘルパーに多くあげていることも発見しました。

 これらの不正は、私の監督の下ですべて直されました。以前、老人のシャンプーを勝手に使うヘルパーさんもいたのですが、その後、そのような現象は無くなりました。老人の家族らが時々私に贈り物をしてくるので、私はすべて断り、会議の時にヘルパーにも家族からの贈り物を受け取らないように要求しました。一人のヘルパーが複数の高齢者を相手にサービスを提供しているため、家族から贈り物を受け取ると、高齢者に対するサービスに差が出かねないので、贈り物をしていない高齢者にとっては不公平になります。

 局面を打開した後、また新しい課題が出現

 入社する前、オーナーが決めた私の処遇条件とは、老人ホームに無料で宿泊し、食費も会社が負担する代わりに仕事が軌道に乗るまで給料を払わないということでした。しかし、最初の月からオーナーは私の給料を全額支払ってくれ、別途に100元の電話代も支給してくれました。私が全力投球で仕事をしている努力を全部、オーナーは見ていてくれたのです。

 その後、オーナーは入居率を上げるように私に指示し、ヘルパーの募集、ヘルパーの待遇を決めること、高齢者の入居費基準を決めることも私に任せたいと言いました。入社した時、入居者は32人で、私はオーナーに「入居者を増やすためのアイデアがない」と言うと、「病院などに広告を貼ったりすれば良いかもしれない」とオーナーが言いました。しかし、老年ホームのヘルパーの募集は特に難しくて、仕事内容がきつい、労働時間が長い、給料が低いなどで、ふつう、農村出身の人しかこの仕事に就きたくないのではないかと思いました。また、私は農村での人脈もありません。入居者の募集になおさら方法を思い付きませんでした。

 食事の改善

 10月末、寒くなり始めたのですが、暖房の供給はまだ始まっていません。食事の配膳に時間がかかりすぎることに私は気づきました。廊下がとても長いので、一つ一つの部屋に配膳して、奥の部屋に着く時には食事はとっくに冷めていました。お年寄りたちは一日中することがなく、食事は一日の中の一大事です。寒い日に温かい料理を食べられないと、一日中気分が良くありません。以前どこかで見かけた大きなステンレス製保温缶のことを思い出して、オーナーに保温缶を買うことを提案すると、オーナーは同意しました。

 その後、お年寄りたちは熱々の料理を食べられるようになって、老人も家族も皆とても喜びました。オーナーもその結果に満足して、私が老人のために気を使ってくれると褒めてくれました。私は喜んでいる老人の家族たちに、「これはオーナーが老人たちのために金を惜しまないおかげだ」と教えました。

 衛生とサービス態度の問題を解決した後、食事の質が際立つようになりました。現在のシェフはここのベテランで、十数年前からオーナーの元で働いてきました。彼が作った料理は量が少なく、品数も単調です。食事を改善したいとオーナーに相談したら、支出が増えるがオーナーはすぐに承諾しました。あとで聞いたことですが、オーナーの妹さん(大法弟子)がオーナーに「〇〇さんに経営を任せた以上、彼女の言うことに協力してください。そうでなければ現状と変わらぬままで、改善を図れない」と進言したそうです。

 食事を改善するには、まず献立を新たに決めることからメスを入れたいのですが、シェフに相談しましたが、シェフは嫌がりました。献立を変えることは彼の負担が増すからです。結局、私とオーナーが献立を新たに考えて決めましたが、食事を作る時シェフは協力しません。例えば、これからの朝食に週2回餡まんを出そうとすれば、小豆を煮込んで餡子を作らなければいけません。シェフは面倒くさがって作ってくれないため、オーナーと私が餡子を作りました。他の献立もシェフに抵抗されて、何度かすり合わせましたが彼は協力しませんでした。

 ヘルパーたちは私達の様子を見て、誰もシェフの代わりになれないことを暗示してきました。食事を改善したい考えに対して、大法の法理に適わないところはないか、まず自分自身を見つめました。食事の改善はきっとお年寄りにとって良いことで、老人ホームをうまく運営させるためには、老人に真心をもって接しなければならないと考えました。そうすることは老人ホームの経営にとってきっと良いことになるに違いありません。自分の動機は法理に違反するところがないので、シェフの態度に心を動かさず、また、オーナーにシェフの悪口を絶対に言わないと心に決めました。多くの問題はオーナーが私と一緒に直面しているので、事情は分かっていると思います。

 暫くたったある日、仕事が終わって家に帰ると、オーナーが電話をかけてきて、シェフと喧嘩したので、代わりのシェフを募集してくださいと言われました。ちょうどその時、父から父の会社の食堂のシェフが転職したいと聞いたので、早速連絡して面接を手配したら、オーナーはその人を採用しました。こうして、シェフは私の指示に協力できる人に変わりました。

 新しいシェフと楽しく仕事をすることができましたが、そんな中に心性を修める部分がないわけでもありません。年末になった時、新しいシェフが電話してきて、私のために肉を買ったので、家に送りますねと言いました。私はすぐに断って、「ただ仕事をしっかりやればいいので、私に感謝をしなくて良い」と言いました。その時私が思ったのは、私は人材紹介会社でもないので仲介料のようなものを取る理由がなく、また、もし彼女の贈り物を受け取れば、彼女との関係が近くなってしまって、今後公平に管理することができなくなる、ということでした。

 やがてこの女性シェフは勝手に食事の品数を減らしました。発見した後、今後このようなことをすれば減給処分をすると彼女に警告しました。見て分かるように、シェフは良い気分ではありません。私のルートで入社した人なので私から特別扱いされたいと彼女は思ったのかもしれません。それまでは、従業員の食事を準備する時、彼女はいつも美味しいものを私のためにとって置きますが、それ以来、私に対する「特殊待遇」もなくなりました。実は以前から私だけのために美味しいものをとって置かないでと彼女に頼みましたが、でも彼女は聞かないので仕方がありませんでした。それから、この女性シェフは会社の要求に合わないことをしなくなり、その後、なんと彼女も修煉に入りました。

 老人たちに与える食事の量を削ってはいけないと私はシェフに要求しています。この件についてオーナーに報告する時、「内を修めて外を安定させる」[1] の法理を話しました。また、「私たちは真心で老人たちに接したら、会社はきっと繁盛する。ヘルパーたちは一年中会社の寮に泊まって、三食食堂で食べている。農村出身の人はたいてい都市部出身の人より野菜を多く食べている。中国では野菜は安いので、少し多めに作って、ヘルパーたちに思う存分食べさせ、ヘルパーがアットホームな気分になったら、はじめて気持ち良く仕事できるのだ」と言いました。実はオーナーはとても心の優しい人ですが、今までは管理を怠ってその状況をよく知らなかっただけでした。

 (続く)

 
(中国語://www.minghui.org/mh/articles/2021/4/30/422662.html)
 
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