【明慧日本2022年2月7日】香港の法輪功学習者(以下、学習者)が2019年に襲撃され大けがを負った事件で、香港の西九龍(せいきゅうりゅう)裁判所は2022年1月26日、第一審判決を下した。当時、現場付近で見張り役をしていた柯衍湛(か・えんたん)被告が禁錮2年9カ月の判決を下され、襲撃事件の首謀者と実行犯はいまだに見つかっていない。
香港法輪佛学会は判決に対して、悪を罰し善を支持する判決であると歓迎した。しかし、真相はいまだ解明されていない。同学会は、学習者が長期にわたり中共による迫害に遭っており、事件を指揮した元凶の責任を追求し、犯人を逮捕するまで事件の捜査を続けるよう各界に呼びかけていくことを強調した。
2019年9月24日、法輪功学習者の廖秋蘭(りょう・しゅうらん)さんは、長沙湾警察署で10月1日のパレードの申請を終えて、他の2人の法輪功学習者と警察署で別れて、電話していた。その時、2人の黒服覆面男に警棒で襲撃され、1人は頭部を、もう一人は身体を殴打してきたという。廖さんは襲撃されてから全身傷だらけになり、全身がうっ血して紫色になり、頭部の出血が止まらず、病院に搬送された。廖さんは頭部を5針縫う大けがを負った。
裁判官「組織的、計画的な襲撃は重刑をもって抑制すべき」
事案の審理は2021年10月4日に始まり、約4カ月間にわたる審問を経て、地方裁判所の裁判官である許肇強氏は、柯衍湛被告に「故意傷害罪」が成立するとして、今年1月26日の判決で禁錮2年9カ月の判決を下した。
裁判官は、「故意傷害罪」は非常に重い罪であると指摘した。また、事件は襲撃の実行犯、逃走車両の運転手など組織的に実行されたもので、計画的、意図的な犯行だとした。柯衍湛被告は実行犯の見張り役であったものの、同じように「故意傷害罪」が成立し、抑止力のある刑罰となった。
検問で襲撃者を疑う 警官が見張り役を捕まえる
有罪判決が下された柯衍湛被告は現在22歳、共犯者の2人と同じバーで働き、国際的な犯罪組織「三合会」のメンバーでもある。襲撃事件が発生する前、柯衍湛被告は長沙湾警察署付近を徘徊していた。
柯衍湛被告を逮捕した警官によると、同日、付近で警察官襲撃事件があったため警戒していたところ、柯衍湛被告が警察署の周囲で徘徊している様子を見て不審に思い、検問したという。
柯衍湛を警察署に連行して1時間以内に、学習者襲撃事件が発生した。警官は柯衍湛被告の携帯電話から、2枚の被害者の写真を見つけ、チャットアプリ(WhatsApp)のグループとトランシーバーアプリ(Zello)で、事件発生時に受信した「長順街地下鉄駅」、「ターゲットが出てきた」という不審なメッセージを発見した。裁判官は、受信したメッセージは、被害者が襲撃された時間やルートと一致すると指摘した。
他の2人、陳嘉明被告と王述傑被告も警察署付近を徘徊していたため、他の警官が事件発生前に検問していた。2人の電話番号もチャットアプリ(WhatsApp)のグループに入っていたが、検察は2人の携帯電話 の内容を証拠として提出しなかった。裁判管は判例を引用して、柯衍湛被告の携帯電話の証拠だけで2人の罪を断定できないとした。ただ、裁判官が指摘したのは、陳嘉明被告も事件当時、柯衍湛被告と同じように不審な行動をしており、廖秋蘭さんへの監視に関与していたことは否定できないとした。また、王述傑被告は事件の翌日に香港を離れ中国本土に向かっている。
柯衍湛被告の弁護士は、被害者の廖秋蘭さんが出庭していないことに言及し、この襲撃事件は「賠償金と同情を得るための自作自演」である可能性は排除できないと主張した。しかし、裁判官はこの主張は全く正当ではないとし、廖秋蘭さんの頭部の傷が重症であることを挙げ、「なぜ自分で故意に脆弱な頭部にこのような打撃を与えられるのか?」と問い詰めた。
中共は絶えず嫌がらせ、脅迫する
被害者の廖秋蘭さんが襲撃された後、中国共産党国家安全局は、何度も中国本土にいる廖さんの家族に対し、「香港に行って廖秋蘭を逮捕する」と脅した。廖さんの頭部の傷口は、1カ月で癒合したという。襲撃事件の1年後もなお痛みがあったが、現在はすでに回復したそうだ。幸いなことに、彼女は法輪功を修煉してから身体は以前よりも健康になり、そうでなければ結果は想像も出来なかっただろうと語る。
1999年7月、法輪功が中共による迫害を受けてから、廖さんは何度も香港の学習者を代表して、警察署に向かいパレードの申請をしていた。廖さんは、中共スパイは長年ずっと彼女を尾行し脅してきたという。活動に参加しようと出掛けると、いつも車に乗っている誰かが後をつけてきたり、毎日夜中に嫌がらせや脅しの電話がかかってきたり、家族も嫌がらせを受けたという。家族の安全のため、彼女は長年家に帰れなかった。
2016年、7.20法輪功反迫害集会で、廖秋蘭さんは頭にラー油をかけられた。続けて中共のスパイから電話がかかり「もう活動をするんじゃない。活動を続けたら次こそはこれだけで済まされないぞ」、「また法輪功の活動をしたら、容赦なくお前に手を下す」と脅された。
2019年、襲撃事件の後も廖さんは依然として尾行に遭い、脅迫電話を受け、最終的に身の危険を感じて香港を離れることを決めた。
法輪功を修煉してから心身ともに恩恵を受けた事実を、なぜ話してはいけないのかと廖さんは感じている。それゆえ長年、香港で反迫害集会、パレードの申請などを継続し、中国本土の学習者に代わって、正義を広めてきた。法輪功の活動は合法で、警官の許可と協力を得ていると廖さんは強調する。
弁護士が襲撃事件を非難 警官に追跡調査を求める
香港の汚職捜査機関(ICAC)の元調査主任である査錫我(さ・しゃくが)弁護士によると、逃走車両のナンバープレートや、チャットアプリ(Whats App)のチャット記録が提供されれば共犯者を特定することは可能だが、すでに香港を離れている場合は難しいという。査氏は、法輪功学習者に対する襲撃事件の香港における影響は非常に大きく、警察は全ての総力を挙げて捜査すべきだと述べた。
廖さんが襲撃された当時、その場にいた学習者が逃走車両のナンバーを控えていたため、警察に提出した。さらに、警察は廖さんが襲撃された場所の監視カメラの映像を入手したという。廖さんは、香港特別行政区政府に事件の徹底調査を呼びかけ、事件の首謀者を逮捕するよう求めている。
また、2021年5月13日の法輪大法デー前夜、香港法輪佛学会・会長の梁珍(りょう・ちん)氏が、覆面姿の人物から棒で殴打される事件が発生した。梁氏は襲撃者の車両ナンバーを提供し、現場にも監視カメラがあったという。警官は少なくとも2人の容疑者を逮捕した。しかし最近になって、証拠不十分で不起訴となった。また、年配の学習者が街頭活動中に故意に押し倒されたり、多くの法輪功学習者が尾行されたり、監視されたりしている。
査氏は、法輪功は香港で合法組織であり、誰であっても暴力や襲撃、脅迫などの違法手段で、他人の合法活動を妨害する行為は非難されるべきだと指摘する。そして、法輪功の学習者を含め、すべての香港市民が法律で保護されるべきだと述べた。