文/Arnaud H.
【明慧日本2022年3月14日】学術界は、絵画を空間芸術と分類します。西洋の伝統絵画では、各種美術技法を用いて光と影の変化を正確に描き、平面に立体感と空間的な形象を作り上げます。これは、3次元の現実世界のものを2次元の平面に投影するかのようです。
時間的な連続性のある音楽のような聞く芸術と比べて、絵画の表現は静止した、あるいは瞬間的な場面と思われています。空間という視点からすると、2次元の平面に世界の数々の場面や神伝文化の真髄思想を表現することは非常に難しいのです。今日は、この芸術の時空の背後にある学問について考察しましょう。
可視空間
「1次元」、「2次元」、「3次元」といった用語に馴染みの薄い方もおいでかもしれません。これらの用語は、美術や物理学、また天文学などの分野に共通した用語です。幅広い知識の内容とかかわり、更には別の空間にも繋がり、理解しがたいものです。ここでは一般に受け入れられている空間概念を例として、時空の次元を分かりやすくお話しすることとします。
空間については、恐らく空間的な思考に親和性が高い人、あるいは空間の思惟能力が強い人にとって理解しやすいでしょう。しかし、空間についての考え方に慣れてない人も心配する必要はありません。図で視覚的に表し、できるだけ分かりやすくします。
次元に関する通常の認識は、大体このようになります。一つの点が直線に沿って運動すると一つの線の軌跡を描き、その軌跡には単一の長さがあり、その線は1次元空間に属します。その線が全体的に横に移動すると、その運動範囲は長さと幅を持ち、平面空間となります。その平面空間は2次元空間と言います。その平面が全体的に他の方向へ移動すると、一つの体積的範囲を構成します。長さ、幅、高さがある空間は、3次元空間と呼ばれます。簡単に言えば、線は1次元、面は2次元、体積は3次元です。これは多くの人が理解している概念です。
1次元、2次元、3次元の図示(線は1次元、面は2次元、体積は3次元) |
しかし、次元を表す数字が大きくなると、「次元」の概念が分かりにくくなります。「3次元の空間に時間をプラスしたら、4次元になる」と言う人もいますが、いささかこじつけです。というのも、私たちがアクセスする時間と空間は、同時に同じところに存在し、線や平面にも過去、現在、未来が存在します。次元によって時間は異なり、すべての次元を構成する粒子にも、それ自体の時間があります。空間と時間は完全に融合して一つの全体となっています。単純に現代数学の方式で時空を分離することには、無理があると思います。
つまり、ここで取り上げている次元は、よく言われる4次元空間理論とは異なります。もちろん、慣れていない方がおいでかもしれませんが、別の言い方に変えることができます。例えば、大きい次元の概念なら「大きい範囲」と言い、もっと大きいなら「より大きい範囲」と呼ぶなどです。しかし「範囲」という単語は、通常は空間を意味する傾向が強いので、異なる次元の時間の概念と繋がりにくいのです。ですので、ここでは「次元」という単語を用い、より分かりやすく表現しています。
この環境で3次元の人や物などすべてのものが、さらには環境自体が全体的に動くなら、より大きい次元の概念を形成することができます。恐らく「動いても、また同じように長さや幅、高さの3次元になるのでしょうか」と言う人がいるかもしれません。その通りなのですが、少し違います。
前世紀の時点で、「より広い空間のスケールになると、多くの通常の物理法則や公式が通用しなくなり、公式で計算した結果にも多くの問題が生じる」ことが知られていました。だからこそ、その後のアルベルト・アインシュタインなどの天才科学者の研究成果は、学術界で高く評価されています。簡単に言えば、天体規模のスケールになると、時空が曲がる(Curved spacetime)状況を考慮しなければならないのです。この時、地球環境における長さや幅、高さなどの空間概念は、より広い空間では曲がっており、外の時空と異なる状況になりました。
地球規模の範囲で時空が曲がるイメージ 人工衛星が大気圏外を飛行する時空環境は、地上の時空とは完全に異なる |
簡単な例をあげましょう。地面に直線を引けば、通常は直線と思います。しかし、もっと視野を広くすると、例えば高い空から見ると、その線は丸い地球上で、小さく反った曲線となります。今認識している長さ、幅、高さなどの簡単な概念も、異なる時空範囲では認識を変える必要があります。
地球は自転すると同時に太陽の周りを公転しており、その範囲の空間概念は大気圏内の空間概念と完全に異なります。地球の自転により、赤道に住んでいる人は毎秒で数百メートル移動しているのに、自分では動いている感じがしません。地球は太陽の周りを回っているので、地球上のすべての人は毎秒数十キロメートル移動しているのに、大地は動いていないと感じています。すべてこの環境に封じこめられ、人がこの環境で行ったことは、あくまでこの環境でのことです。大気圏外の大きな環境でのこととは、別なのです。
この二つの環境の違いは、時空の性質の差異によります。大気圏の内と外では、時間の流れも違います。科学技術界では、人工衛星や宇宙船などを宇宙に打ち上げる時、原子時計を微調整する必要があり、そうしないと問題が生じることを知っています。皆さんがご存知のGPS衛星を例とすると、大気圏の内と外では時間の流れが異なるので、地上と同じ時計の速度を保持した場合、GPS衛星システムでいろいろな計算で変換するうちに毎日一定誤差が発生しますので、補正しないと時間の経過とともに使えなくなります。
(続く)