【伝統文化】借りを返す
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文/清言

 【明慧日本2025年4月6日】昔々、江右地方に祝三思という商人がいて、ある日、寺院を見学した彼は二人の僧侶と出会い、一緒にお茶を飲みました。一人の僧侶は祝三思に「あなたに30万貫の借りがあるので、今日は返済します」と言い、もう一人の僧侶は祝三思に「あなたは昔、私から30万貫を借りたので、今日それを返済してください」と言いました。「貫」とは古代の通貨の単位で、銭貨(せんか。円形で中心部に方形の穴が開けられた硬貨)1000枚は1貫となります。

 祝三思は、そこまで二人の僧侶と面識もなかったため、話を聞いて困惑し、真剣に受け止めませんでした。その後、祝三思は二人の息子を授かりました。二人が生まれる前に祝三思は、自分の家に二人の僧侶が入った夢を見たので、息子に「僧保」、「僧佑」と名付けました。

 十数年が経ち、二人の息子は成長しました。二人の性格は全く異なり、兄の僧保は非常に勤勉で、稼いだお金はすべて両親に渡し、弟の僧佑は毎日働かないばかりか、放蕩三昧な生活に溺れて、結局、兄の稼いだお金を全部使ってしまいました。

 兄の僧保は怒りのあまり病気にかかり、死ぬ間際に祝三思は彼を抱きしめて泣くと、僧保は急に声を変えて、「私はあなたの息子でもないのに、なぜ泣いているのですか。前世であなたは林達生という名前で、大金持ちでした。私の名前は遊守静といい、あなたに30万貫を借りたままで、返済もせずに死にました。幸い私には、金を返したくないというずるい考えを持っていなかったので、死後、動物に転生してはいません。現世ではあなたの息子になり、20年あまり一生懸命働き、あなたに元金と利子まで返済したので、私はもう行く時です」と言い残してから息を引き取りました。

 しばらくして、弟の僧佑も病気になって、死ぬ前に祝三思に「私は前世で黄治中といい、あなたと一緒に質屋を開いて、あなたは30万貫を借りたまま、返しませんでした。現世でもうそれを取り戻したので、今あの世に行く時が来ました」と言いました。

 祝三思は「あなたたち兄弟が死んだら、私の老後の生活はどうなりますか」と泣いて、僧佑は「私たち兄弟の一人は債務を返済しに、もう一人は取られた金を取り戻しにあなたの家に転生したのです。長生きして家業を継ぐ息子を持ちたいなら、もっと善い行いをし、徳を積まなければなりません」と言い残して、他界しました。

 それから、祝三思は僧佑の言うとおりに善行に励み、後に二人の息子を授かりました。

 
翻訳原文(中国語):https://www.minghui.org/mh/articles/2006/11/2/141299.html