『指輪物語』から話しましょう (1)
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文/中国の大法弟子

 【明慧日本2021年5月18日】『ロード・オブ・ザ・リングシリーズ三部作』として知られるアメリカの大ヒット映画は、イギリスのJ・R・R・トールキンによる長編小説『指輪物語』を原作として制作されました。この映画は、どんなに多くの艱難辛苦に直面しても、どんなに多くの絶望に陥っても、最後には正義が必ず邪悪を打ち負かし、光と希望が訪れるというテーマでした。

 『指輪物語』は西洋版の『西遊記』のように、さまざまな人々が『指輪物語』からさまざまな教訓や啓示を得ています。

 『西遊記』では三蔵法師と三人の弟子が81難を乗り越えて、最後に佛教の経典を得て正果を修めたという物語が述べられています。『指輪物語』では、さまざまな正の種族が魔の指輪を消滅させるために遠征チームを構成し、数え切れない艱難辛苦を乗り越えていきます。皆が己の生死をかえりみず、無私となって互いに協力し合い、いろいろな妨害や困難を乗り越えて、最後には邪悪を崩壊させ、世界を救って、光と輝きに満ちた未来を取り戻すという物語が述べられています。

 一、苦難に満ちた修煉の道においては、確固たる正しい信念が必要です。

 『指輪物語』の中では、遠征チームは魔の指輪を持って、滅びの火山(オロドルイン)に行く過程が描かれています。確固たる正しい信念がなければ、絶対に最後までたどり着くことができません。魔の指輪を持っているフロドと彼を助けたサム、この二人の善良なホビット人は、魔の指輪を滅ぼすという重責を背負って、長く険しい予測できない危険に満ちた旅に出ます。滅びの火山に行く途中、地獄の翼獣に乗っている恐ろしくて強力なナズグル(指輪(nazg)の幽鬼(gul))や、また滅び火山への唯一の道を守る何万もの魔獣の軍隊の妨害に遭います。また魔の指輪自身の魔力と誘惑力は、いつも指輪の所持者の精神を蝕み、絶望へと導きます。そして、指輪は魔王サウロンの邪眼とつながって、いつも指輪の所持者を監視しており、ナズグルや魔獣が殺しに来るので、フロドとサムの使命は不可能といってもいいほど困難なものです。

 いろいろな困難や希望が見えない現実に直面した時、フロドは落ち込んだり、悲嘆にくれたり、絶望しました。また魔の指輪の誘惑に抵抗できず、フロドは何度も任務を放棄しようと思いました。さらに、自分が魔の指輪の所持者になってしまったことについて、何度も後悔し、こんなことが起こらなければよかったのにと思ったこともあります。

 映画のあるシーンでは、フロドは魔の指輪に惑わされて意識がはっきりしなくなり、もう少しで魔の指輪をナズグルに渡してしまうところでした。目覚めた後、フロドはとても落ち込んで、退廃的な気持ちになり、あきらめてしまいそうになりました。サムは涙を流しながらフロドを励まし「本来からいえば、私たちがここまで来れるわけがありません。しかし私たちは来ました。昔の物語のように、勇敢な伝説のように、暗闇と危険に満ちた道で、あなたはこの物語の最後の結果がどうなるのか、どんなに怖いことが起こるのか、世界がどうやって元に戻るのか分かりません。しかし最後になると、すべての暗闇は消え去り、新しい一日は必ずやって来ます。太陽は再び上がり、光がさらに輝きます。私はやっと分かりました。伝説の中の英雄たちは、かつて臆することもありましたが、彼らは決して屈することなく、前へ進みました。彼らの心の中に信念があったからです」

 フロドが「私たちの信念は何ですか?」とサムに聞くと、サムはフロドを起こして「この世界には多くの素晴らしいものがあり、それらの素晴らしいものを守るために、戦う価値があります」と言いました。サムの話はフロドを勇気づけ、そして、彼らを捕まえて父王に差し出そうとしたゴンドールのファラミア将軍を感動させて、彼は、父王の罰(死罪)を覚悟したうえで、彼らを釈放しました。ファラミア将軍はサムとフロドと別れる時「あなたたちは全人類の祈りを持って先へ進んでください」と伝えました。

 映画の裂け谷のシーンでは、エルフの女王ガラドリエルが神通力で、魔の指輪を滅ぼす任務が失敗した結果をフロドに見せました。そのシーンでは、フロドの美しい故郷であるホビット庄は、魔獣に占領され、善良なホビット人は奴隷にされていました。

 フロドはそれを信じて、サムを追い払った後、後悔と憂鬱に苛まれました。その時、ガラドリエル女王が現われて「ホビット庄のフロド、これは天から与えられた使命です。もしあなたにできなければ、誰も達成することはできません」と話しました。責任感がフロドを目覚めさせ、再び立ち上がる原動力となりました。

 美しい故郷と善良な生命を救うという信念は、フロドが背負った使命と責任がどれほど重いかを意識させました。だからこそ、フロドたちは勇気をもって大変危険な道を歩みました。自信を取り戻し、確固たる信念を持って前進し続け、最後には、達成不可能と思われた任務をやり遂げました。

 二、困難に直面した時、すべての邪悪に打ち勝つ勇敢さが必要です。

 『指輪物語』の中で、人類は魔王サウロンの強大な魔獣軍隊と激しい戦いを繰り広げています。生死を放下する勇気がなければ、敵を迎え撃つことも打ち負かすこともできません。

 魔獣軍と戦っている間に、多くの王が強大な敵と直面する時に見せた非凡な勇気は、彼らの兵士を励まして、戦闘において決定的な役割を果たしました。

 例えば、ローハン国の国王セデオンがミナス・ティリスで敵と戦う前に行ったスピーチ、またゴンドールの真の国王アラゴルンがモルドールの黒門の前で行ったスピーチなどがそれを実証しています。

 まず、ミナス・ティリスの戦いについてお話しましょう。『指輪物語』の中で、ミナス・ティリスはゴンドールの王都であり、巨大な白石によって築かれた要塞都市で、非常に雄大です。ミナス・ティリスは人類とエルフ、ドワーフなどの正義の同盟軍の中心地です。もし、ミナス・ティリスがサウロンの魔獣軍によって攻め落とされたら、同盟軍は総崩れとなり、魔王サウロンに抵抗する力がなくなってしまいます。

 魔王サウロンはこのことを知っているので、十数万の魔獣から構成されたモルドール軍を派遣して、ミナス・ティリスを取り囲み総攻撃を仕掛けます。ミナス・ティリス攻防戦で両軍は激しい戦いを繰り広げました。

 モルドール軍はナズグルや魔獣の協力のもとで、ミナス・ティリスの城壁を攻め落としました。ミナス・ティリス軍や民衆は退却を余儀なくされ、ミナス・ティリスの街の至る所が崩壊し、火の手もあちらこちらからあがり、危うく陥落されそうになりました。

 激戦の中で、アングマールの魔王(ナズグルの首領)は魔力を使って、白のガンダルフの法杖(ほうじょう)を破壊し、ガンダルフを倒しました。魔王はガンダルフに「人類の時代が終わりに近づき、魔獣の時代が間もなく始まる」と言いました。魔王がガンダルフを殺そうとした瞬間、遠いところから角笛の音が鳴り響いたため、魔王は翼獣(よくじゅう)に乗って去っていきました。

 この時、ゴンドールの救援を求める烽火(ほうか:のろし)の合図を見て、山を越え川を渡って進軍していた、ローハン国の援軍がやっと到着したのです。ローハン国の援軍は国王に率いられ、角笛の音に従って、馬に乗ってミナス・ティリスの前の山を登って来ました。しかし、ローハン軍は目の前の光景に驚愕しました。厚い黒雲がミナス・ティリス城を覆い、城外の平原に果てしない魔獣軍が押し寄せてミナス・ティリス城を取り囲み、城の中には火柱が空高く昇り、ナズグルが地獄の悪獣に乗って空を飛び回り、ミナス・ティリス城は陥落の危機に瀕していました。ローハン国王の眉間にはしわが寄り、非常に険しい表情でした。ローハンの王女と一緒に馬に乗っていたホビット人のメリーは、恐怖のあまり震えが止まらず、多くの戦士の目にも恐怖が宿っていました。数十万の魔獣の大軍に対し、ローハン軍は僅か6千人しかいなかったのです。

 この時、ローハン国王は軍刀を掲げ、馬に乗って戦士たちの前を駆け抜け、軍刀で戦士の武器をたたきながら、大きな声で「進め! 暗闇を恐れるな! 頭を上げて胸を張れ、セデオンの騎士たちよ! 敵の矛を切り落とし、盾を打ち砕け! 今日の戦いで、大地が血に染まろうとも、朝日が昇るまで、進め! 進むのだ! エオル(Eorl:ローハンの初代の王)の子よ、突き進め! 世界が滅び、終わりを迎えるその時まで!」と戦士たちを激励しました。

 戦士たちは、国王の励ましにより、勇気づけられ、勇猛な声が空に鳴り響き、彼らの目の中から恐怖が消え去りました。悲壮な角笛の音が再び鳴った時、戦士たちは雄たけびと共に、津波のように敵陣に突っ込みました。この時、鋭い剣が厚い黒雲を突き切るように、太陽の光が黒雲の隙間から大地を照らしました。太陽の光を恐れる魔獣軍は恐怖をあらわにしました。ローハンの戦士たちは、国王に従って敵陣に突っ込み、敵兵を一掃していきました。

 
(中国語:http://www.minghui.org/mh/articles/2021/3/6/421688.html)
 
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