【明慧日本2020年12月14日】(明慧記者 夏純清)欧州理事会は12月7日、EU版『マグニツキー法』の批准を発表した。EUは同法に基づき、世界で人権を侵害する個人や事業体、機関、国家に制裁を課すことにより、人権保護を促進する。長年の努力を経て、EUは初めてグローバルな制裁体制を確立した。人権保護の促進は、EU外交の優先事項であり、基礎であると強調している。
このEUの制裁体制は、今月初めに開かれた28カ国EU代表者会議で政治的コンセンサスを経て批准された。2016年に米国議会で可決された『グローバル・マグニツキー人権問責法』をモデルにしているが、この米国法はグローバルな人権侵害に効力を持ち、人権侵害に責任、関与または関連のある個人、組織および団体(国家・非国家主体を含む)を対象に、米国内の資産凍結や入国禁止等の制裁を課す権限を米国政府に与えている。
マイク・ポンペオ米国務長官は、EUにおける法案成立を支持する声明を発表した。 ポンペオ氏は声明で、「米国は、EUの世界的な人権侵害への制裁体制が採択されたことを歓迎する。国際人権デーを前にして、この画期的な成果は世界の人権保護をさらに強化することとなるだろう。EUの新たな措置は、EU加盟国が世界における人権侵害の責任を追究するにあたり、強力なツールとなるものである」と述べた。同氏はさらに、EUに制裁措置の早期実施を推奨すると付け加えた。
このEUの制裁体制は、大量虐殺、人道に対する犯罪、その他の重大な人権侵害、例えば拷問、奴隷労働、超法規的処刑、恣意的逮捕・拘留、組織的な性暴力等に関与した者に対して、EUへの入国禁止、資産凍結、EU内の全ての人・国からの制裁対象者への資金提供禁止等の制裁を可能とする。
欧州理事会は7日の声明で、世界的な人権侵害への制裁体制の採択はEUにとって初めてのことであり、この日の決定は、深刻な人権侵害や虐待に対処するEUの決意を反映しており、人権の促進と保護がEUの対外政策の基礎であり優先事項であり続けることを強調するものであると述べた。
また、EUの外交官のコメントとして「加盟国またはEUの外務・安全保障政策上級代表からの勧告に基づいて、欧州理事会が制裁リストの作成、見直し、改定に着手している」と報道されている。同法は12月10日の「世界人権デー」に発効し、「2021年第1四半期」には最初の制裁対象者がEU制裁リストに載ることになる。
報道によると、欧米を中心とした29カ国の法輪功学習者は最近、自国政府に人権侵害の加害者の最新リストを提出しており、当事者とその家族の入国禁止、さらには法律に基づいた資産凍結を要求している。リストを提出したのは、ファイブ・アイズの米国、カナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランド、欧州連合の18カ国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダ、ポーランド、ベルギー、スウェーデン、オーストリア、アイルランド、デンマーク、フィンランド、チェコ共和国、ルーマニア、ポルトガル、ハンガリー、スロバキア、スロベニア)、その他6カ国(日本、韓国、スイス、ノルウェー、リヒテンシュタイン、メキシコ)の29カ国である。
リストの人権侵害者達は、以前に数回にわたって提出されたリストと同様に、(中国の)中央レベルの官吏のほか、各地区、各種の産業、各レベルの官吏が含まれており、各レベルの政法委員会の書記、各レベルの610弁公室の責任者、各レベルの地方の首長、公安庁や公安局の長、国家安全保衛隊の警察官、裁判所所長、裁判官、刑務所関係者、強制労働教養所の責任者等も含まれている。
法輪功学習者は、今後も迫害行為をした加害者の個人情報等を収集してとりまとめ、明慧サイトの迫害者リストに追加更新し続けるとしている。 これまでに105,580人がリストに掲載された。 遅かれ早かれ、すべての加害者は民主主義政府の制裁リストに載ることになるだろう。
『マグニツキー法』について
『マグニツキー法』とは、2008年11月にロシア政府の汚職を暴いたとしてロシア当局に逮捕された、ロシアの弁護士セルゲイ・マグニツキー氏に敬意を表して命名されたものである。彼はブチルカ刑務所に収容された後、非人道的な扱いを受けて健康状態が悪化し、2009年11月16日に救急車でモスクワ北東部の刑務所に移送されたが、その日のうちに死亡した。彼の死はロシア国内外で注目を集めたが、汚職に関与し、マグニツキー氏の死にかかわった高官らは責任を問われていない。 この事件をきっかけに、世界的な人権保護の枠組みが確立されたのである。
これまでに、世界で少なくとも6カ国で同様の法律が可決された。 またオーストラリア議会でも、近々にこの法案が可決される見通しである。