改ざんされた神話と本当の伝統(五)
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文/ Arnaud H. 

 【明慧日本2021年7月24日】(前文に続く)

 「哲学」のラテン語名「Philosophia」は古代ギリシア語の「φιλοροφία」に由来し、「Philos」(愛) と「Sophia」(知恵)を組み合わせたもので、「知恵の愛」を意味します。仏教でいう「慈悲」や「悟り」、キリスト教でいう 「愛」と非常に似ています。但し東西それぞれの文化的背景によって表現が異なるだけで、言い換えると、これらは異なる法門の修煉そのものです。

 現代人は往々にして現代の視点で古代人を見ます。「唯物論者」たちは、タレスが「水は万物の根源」を主張するのを知った時、彼を「唯物論者」だと断言して、彼が「万物には魂が宿る」を主張していることをあえて言いません。

 実際、修煉者は悟りを開いた後、万事万物に対して深い見解を持ち、マクロからミクロまで非常に高い認識を持つようになります。タレスが2600年前にこの二つの見解を出せたのは、彼が悟りを開いた後の知恵の現れではありませんか。

 タレスはまた、水の上に大地が安置されていると考えていますが、須弥山(しゅみせん)が水の上にあるという仏教の記述を連想させます。

 古代人はどうしてそんなに豊富な想像力を持っているのかと現代人は不思議に思っています。幾万巻の経典に書かれた別の空間に対する描写はすべて、古代人が想像に基づいて書いたものだと思っています。実は、別の空間に関する詳しい内容はすべて、修験者が自らの目で見て、耳で聞いて、自ら体験したものです。

 プラトンの作品に聖人ソクラテスが没する前に述べた別の空間の状況が記されており、球体の構成、大地の色、植物の輝き、宝石の形など細部にわたっています。しかし、この部分の記述は今の哲学研究者に故意に無視されています。現代人は自分の目で見たものさえ、存在していないように扱っていますが、「知恵の愛」という真理をどうやって知ることができるでしょうか。

 現代人の概念では、物質とは物質そのものです。そのような現代観念を持って古代人の著作を研究すれば、古代ギリシア哲学で言及された「物質」を完全に誤解してしまいます。特にソ連時代から「唯物主義」のレッテルを貼られた古代ギリシアの偉人たちは、みな神を信じており、彼らが語る物質、元素はすべて神と密接に関係しており、決して両者を切り離して孤立視しているのではありません。

 その中で最も代表的な哲学的観点は、今から約2500年前の古代ギリシアの「四大元素」理論です。即ち土、水、火、気という基本的な四元素が世界を構成しています。それを「唯物主義」と思う人も少なくありません。だとすれば、ほぼ同時代の古代インドで釈迦牟尼仏も地、水、火、風という「四大」を説いていて、古代ギリシアの理論と似ています。それも「唯物主義」と見なさなければなりません。

 古代ギリシアでは、元素理論は当時の宗教或いは学術修行分野に古くから存在しています。古代人は現代の「学術」という概念はなく、学問を研究し真理を探求することは神に近い修行とされています。哲学史の記録によると、最初にこの四大元素理論を提出したのは、紀元前5世紀の古代ギリシア哲学者兼占星師のエンペドクレスです。同理論は神学の理論に基づいて推論されたもので、簡単に言えば、主な4人の神に関連します。ゼウスは空、光、雷電を司るので「火」 の要素を体現し、ゼウスの妻ヘーラーは生命の母であり、 「気」を意味します。ゼウスの兄弟、海の神ポセイドンは「水」の要素を表し、ゼウスのもう一人の兄弟である冥王ハデスは冥界を支配し、地下鉱山の支配者でもあるため「土」の要素に当たります。

 即ち、宇宙の万事万物はこれらの元素から構成され、神々の要素もその構成に関与しています。私たちがよく知っている美術材料を使った簡単に説明しますと、初期の顔料のトナーは地下の鉱石から取り出すもので、「土」の要素を含んでいます。鉱石を研磨する過程で水洗いしたり、液体で精製したり、添加剤を入れたりして、「水」の要素が不可欠です。トナーを作るには焼成や乾燥のプロセスを経なければならず、その中に「火」の元素と「気」の元素が関与しています……。そのため顔料は土、水、火、気の4種類の元素からなって、これらの要素の背後には神の要素があるので、顔料の背後には神とつながる特性を持つようになります。昔の人は、神が作ったものや神が人間に教えたものを正しいことに用いれば、例えば神の偉大さを描く絵画作品を作れば、きっと顔料に含まれている神性を引き出すことができると言いました。

图:四大元素在宏观宇宙空间的示意图,由英国学者弗拉德(Robert Fludd)绘制于1617年。图示以地球为基准,由内而外逐层标示了土(Terra,即图中最下方的地球)、水(Aqua)、气(Aer)、火(Ignis)四大元素在太空中的范围与顺序【注:四元素的排序在不同的理论与层次中会有所不同】。古典元素宇宙观在古代音乐和美术理论中曾长久盛行,此图将其注入了音乐的和声学中,描绘了音乐通过四元素特定的声学结构能做到对自然和宇宙的表达。

1617年に英国の学者によって描かれた、マクロな宇宙空間における四大要素の概略図。図は地球を基準に四つの元素が内から外へと宇宙における範囲と順序を表す【注:四つの要素の順番は各理論によって異なる】。元素宇宙観は古代で、音楽や美術理論で長く用いられ、この図では、四つの要素を音楽と音響学に取り入れ、音楽が四元素を通じて自然と宇宙を表現できることを示している

 四大要素理論は少なくとも2000年間にわたって用いられ、ルネサンス時期に入っても、ダ・ヴィンチの絵画理論に四大要素理論に基づいた色彩学の理論がまだ見られます。しかもそれは近代西洋美術界でよく知られるシュヴルールやヴィベールたちの色彩学の理論に比べると格段に古めかしいものです。

 (続く)

 
(中国語:https://www.minghui.org/mh/articles/2021/6/10/426403.html)
 
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