文/劉昭明
【明慧日本2025年3月19日】「たとえ真実を密閉し、大地に埋めたとしても、それは芽を出し、緑になるだろう……」ゾラ/フランスの作家
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いつか必ず、真実は明らかになる。しかし、真実が明かされるその時まで、嘘は依然として横行する。
1976年7月28日、唐山で大地震が発生した。地震の3年後、中共の公式発表では、マグニチュード7.8、死者は24万人とされた。しかし、この死者数には疑問が投げかけられている。1976年末、翌年の布票(布地を購入するための配給券)が配布された際、当時120万人が暮らしていた唐山では、わずか65万人分の布票しか発行されなかった[*]。日本語版ウィキペディアの「唐山地震」の項目によると、「当時、中国でも数少ない工業都市であった唐山は壊滅した。死者数について、中国の公式発表は約25万人だったが、アメリカ地質調査所の推計では65.5万人にのぼる」と記されている。
1959年から1962年にかけて、中国全土で未曾有の大飢饉が発生し、多くの人々が餓死した。しかし、その正確な死者数はいまだに正式に公表されていない。「中国共産党歴史」第二巻では、次のような数字が示されている。「公式統計によると、1960年の全国総人口は前年より1000万人減少した」。また、新華社の記者が執筆した調査報告書『墓碑』によれば、「この3年間、中国には大きな天災はなかった。この大飢饉は人災であり、少なくとも3000万人が餓死した」とされている。
さらに、完全に忘れ去られた水害もある。それが、1975年8月8日に発生した「駐馬店ダム決壊事件」だ。河南省駐馬店地区にある板橋ダムが突如決壊し、猛烈な洪水が発生。23万人が死亡した。しかし、この事件について中国当局はこれまで一切公にしていない。ウィキペディアによると、1975年8月、台風「ニーナ」の記録的な豪雨により、河南省駐馬店などの地域で1万平方キロメートル以上の土地が冠水し、板橋ダムを含む60以上のダムが相次いで決壊。約60億立方メートルの洪水が氾濫し、決壊時の水害による溺死、洪水後の内水氾濫による伝染病や飢饉を含めた死者数は、22万人、23万人、24万人とさまざまな推計がある。これは、史上最も多くの死者を出した台風水害の一つである。2005年5月28日、アメリカの「ディスカバリーチャンネル」は、『世界史上最大の人為的技術ミスによる災害TOP10』という特集番組を制作した。その中で1位に選ばれたのは、ソ連のチェルノブイリ原発事故でも、インド・ボパールの化学工場毒ガス漏洩事故でもなく、中国河南省の板橋ダム決壊事件であった。
中共は、中国で発生した大量死の真相を隠蔽することを常としており、歴史は何度も繰り返されている。では、新型コロナウイルスのパンデミックではどうだったのか? 中国ではいったい何人がウイルスによって命を落としたのか?
新型コロナウイルス、H1N1インフルエンザ、複合感染
世界保健機関(WHO)の統計によると、2023年11月と比較して、2023年12月の新型コロナウイルス感染による入院患者数は42%増加し、重症治療を受けた患者数は62%増加した。しかし、この公表データには中国本土の実際のデータは含まれておらず、外部の推計では中国の感染状況は非常に深刻であると考えられている。
しかしながら、中国疾病予防管理センター(CDC)は2024年1月10日、2023年12月に中国本土31省で新たに報告された新型コロナの重症患者は88例、死亡者数は11例であると発表した。このデータを各省ごとに平均すると、ほとんど存在しないに等しい数である。まるで中国の感染状況が世界の他の地域と同様に、ごくわずかで取るに足らないものであるかのように見える。しかし、真実はどうなのか? 国際社会からの疑問や批判を受けて、中国CDCは2024年1月14日、「新型コロナの感染状況は1月中に再び増加する可能性があり、JN.1変異株が中国で主要な流行株となる見込みが高い」と発表した。
事情を知る者ならば、中国では新型コロナの流行が一度も終息していないことを理解している。
最近、動画投稿サイト「抖音(Douyin)」の「荔枝新聞」アカウントによると、江蘇省に住む51歳の女性がインフルエンザ(流感)に感染し、10日後には肺機能がほぼ失われ、呼吸不全に陥った。医師は「両肺が真っ白になっている」と診断し、動画には病院の診断結果として「両肺が白くなり、感染症はインフルエンザA型(甲流)によるものだが、混合感染もある」と表示されていた。
「混合感染」とは何か?この報道はネット上で大きな反響を呼び、動画のコメント欄には2万7千件以上の書き込みがあった。多くの人が「白肺(肺の白濁化)」を発症し、「これはインフルエンザなのか、それとも新型コロナなのか? この3年間、新型コロナ以外で白肺を引き起こす病気を聞いたことがない」と疑問を呈している。一部のネットユーザーは、白肺が原因で家族を亡くしたと報告している。四川省のユーザーは「私のいとこもこの症状で先月27日に亡くなった。まだ39歳だった」とコメントしている。
2024年2月17日付の『温州都市報』の報道によると、浙江省温州市の4つの主要病院(温州医科大学附属第一病院、温州市中心医院、温州市人民医院、温州市中西医結合医院)の救急科のデータでは、旧正月の除夕(大晦日)から正月初八(8日目)までの間に、約3万人が救急診療を受けた。その大半は呼吸器感染症であり、集中治療室の患者も肺感染症による呼吸器疾患が中心だった。
温州医科大学附属第一病院の統計では、新年期間中の救急患者は1万人を超え、そのうち約40%が肺感染症を含む呼吸器疾患だった。同病院の救急科副主任・趙光挙氏は「救急治療室は満員で、ベッドを追加できる場所はすべて追加した」と述べている。また、救急治療室の重篤な患者も、ほとんどが呼吸器疾患の重症患者だった。
温州市人民医院では、成人の救急患者は1日600〜700人、子供の救急患者は1日200人以上に達している。これらの救急患者の中で、最も多かったのは呼吸器感染症だった。
湖南省のネットユーザーは「母も呼吸器感染になり、結果的に心筋梗塞を引き起こした!」と語っている。四川省のネットユーザーは「重慶の田舎へ行き、宴会に参加した後、夫婦ともに風邪をひいた。検査を受けたらウイルス感染だった。これは間違いなく新型コロナの変異株だと思うが、今では誰も口にしなくなった」「これは新型コロナだ」とコメントしている。さらに、「北京や天津の感染状況も深刻で、肺炎を患うケースが多い」と指摘する人もいる。
中国本土の複数のSNSでは、最近「突然倒れる」事件が増加しており、特に若者に多いことが報告されている。ある動画では、2024年1月15日、上海南駅のT25列車で、乗客の一人が乗車時に突然倒れ、「乗務員が心肺蘇生を行っている!」と伝えられている。映像には、プラットフォームに倒れた人と、蘇生しようとする乗務員の姿、さらにホームに停車する列車が映っている。ネットユーザーの中には「突然死。この衝撃的な光景はもはや日常となってしまった。恐ろしい!」と嘆く人もいる。
また、多くの微博ユーザーは「今年になって突然死する人をあまりにも多く見た。これは新型コロナの後遺症なのではないか」と指摘している。「新年の最初の日、隣人が葬儀を行った。30代の男性が突然死し、親が子を見送ることになった。2024年の唯一の願いは、新型コロナの脅威の下で、2024年を生き延びることだ!」と語る人もいる。
新年の期間中、病院の救急外来には人が殺到し、突然死(ネットユーザーの間では「随地倒」と俗称される)も増えている。中国人の体力が急激に衰えてしまったのだろうか?
「白肺(肺の白濁化)」について、すべての病院が「新型コロナとは無関係」と診断するよう指示され、公式の感染者数も消されてしまったという。しかし、現在の感染状況の実態はどうなのか? 感染拡大はどのように隠蔽されているのか?
これは2003年、国際社会が「SARS」と呼んだ感染症(病原体はSARSコロナウイルス)が、中国国内では「非典型性肺炎」としか呼ばれなかったのと同じことだ。中国共産党にとっては、2019年から始まった新型コロナウイルスの流行も、たとえSARSの近縁種であったとしても、「SARS」と呼ぶことは許されなかった。そして「新型コロナウイルス」という名称さえ、もはや党の意向にそぐわなくなったため、中国国内では「呼吸器感染」といった曖昧な表現しか使えなくなっている。
X(旧Twitter)のユーザー「海闊凭魚躍」は、「病院に行くと、診断書の冒頭には必ず『患者に新型コロナの症状は見られない』と記載される。咳がひどくても胸部CT検査を受けさせてもらえず、当局は『新型コロナによる感染症』と診断することを禁じている」と投稿した。
湖南省のネットユーザーが「今も新型コロナウイルスは存在するのか?」と問いかけると、多くの人が「ずっと存在している! ただ名前が変えられただけで、今は『インフルエンザA型(甲流)』と呼ばれている」と答えた。
ネットユーザーが語る事例は、氷山の一角に過ぎない。しかし、中国疾病予防管理センターは「12月、中国本土31省の新型コロナ重症患者は88人、新型コロナによる死亡者は11人」と発表した。真実は人命に関わる問題である。国民と中国共産党のどちらの言葉を信じるべきなのか?
2024年1月、中国各地の病院が新たな救急医療の波に見舞われる |
データ捏造が発覚 上海某区の感染死者数、公式発表の90倍に
『上海予防医学』誌の2023年第10号に、「上海某鎮における新型コロナウイルス感染管理緩和後の住民の超過死亡および寿命短縮年数の分析」という論文が掲載された。この論文によると、コロナ対策が解除された後の該当の鎮の予測死亡者数は125人だったが、実際の死亡者数は317人であり、「超過」死亡者数は192人、超過率153.60%(192/125)だった。論文では、「人口データは浦東公安の戸籍システムの記録に基づく」とされている。同誌に掲載されたもう一つの論文は、「上海某区における新型コロナ流行期間の慢性疾患による超過死亡状況の調査」というタイトルで、ネット上での初出は2024年1月2日。この論文によると、上海某区ではコロナ対策緩和後、新型コロナ感染による予測死亡者数は7,651人だったが、実際の死亡者数は20,990人に達し、「超過」死亡者数は13,339人となった。さらに論文は重要な点を指摘している。すなわち、上海某区ではコロナ対策緩和後、上層部に報告された新型コロナ感染による合併症死亡者数はわずか232人だったという。論文では、「住民の死亡情報は2023年2月23日の上海某区の死亡登録報告データに基づいている」と述べられている。
この2本の論文は、上海某地域における実際の死亡者数を明らかにした。そこから一端を垣間見ると、上海のある地区における実際の感染死亡者数は、中共の公式発表の90倍にも及ぶことがわかる。
論文が公開された後、ネット上では「上海でこれほどなら、中国中西部の経済的に遅れた省の死亡率はさらに深刻だろう」とのコメントが寄せられた。このことはまた、ここ数年における新型コロナによる中国国内の死亡者数の統計が、中共によって大幅に過少報告されていることを示している。
では、中国全土における新型コロナの本当の死亡者数はどれほどなのか? そして、中共はそれをどのように隠蔽しているのか? 徹底的に隠し、まるで何もなかったかのようにし、今もなお感染が猛威を振るっているという事実を人々が耳にすることも目にすることもできないようにしている。たとえ新型コロナで死亡したとしても、中共の公式見解に従わざるを得ない。「インフルエンザA型で亡くなった」「複合感染で亡くなった」、あるいは、そもそも「あなたという人間は存在していなかった」「あなたは死んでいない」「ましてや新型コロナで死んだわけではない」とされるのだ。
食塩のビッグデータに隠された秘密
人々の毎日の食塩摂取量は比較的安定しており、食塩なしでは生きられず、多すぎても健康に悪影響を及ぼすため、食塩消費量は人口動態を間接的に分析するための科学的な指標となる。中共の国営通信社である新華社の報道によると、中国の住民は1日平均12グラムの食塩を摂取しており、これは卵の約4分の1の重量に相当し、WHO(世界保健機関)の推奨基準の2.4倍に達している。
しかし、広東省の塩業データを総合すると、2017年から2022年にかけて、広東省での小包装食塩(食用塩)の販売量は41.39万トンから少なくとも30万トンへと減少し、減少率は27.52%に達している。これは、3000万人以上が突然食塩の消費をやめた、もしくは中国人の味覚が極端に薄味志向になったことを意味する。しかし、現実には、中国人の食文化はますます味が濃くなる傾向にある。それにもかかわらず、食塩の消費量が急減しているということは、人口に重大な異変が起きていることを示している。
広東省統計局の発表によると、2022年の広東省の常住人口は引き続き全国で最も多く、安定した成長が見込まれるとされていた。だが、人口増加率を見ると、2021年は2020年に比べてわずか60万人増加し、成長率は0.48%にとどまり、2010年以来初めて1%を下回った。そして2022年には2021年より27.2万人減少し、1978年以来初めて人口のマイナス成長(-0.21%)が記録された。
中共は、食塩消費に関するデータの公開を厳しく禁止し、さらに人口に関するあらゆる情報の流出を防いでいる。例えば、携帯電話の利用者数の変動、毎年の民政部による年金受給者数の変化など、あらゆるデータが封鎖されている。
2019年に新型コロナのパンデミックが始まって以降、中共は感染状況の真相を隠蔽するために、感染データを何重にも改ざんしただけでなく、各地域の食塩消費データを含む、人口に関するあらゆるデータを隠している。
このことからも、中共が真の人口データを隠すことを最優先事項としていることは明らかである。
(続く)
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[*] 1955年に最初の食糧切符(糧票)が発行されて以来、中国の庶民は長い「配給切符の時代」に突入した。布票(布の配給券)は、中共政権成立後の商品不足の深刻な状況下で生まれたもので、布地を購入するための証明書として機能した。個人ごとに配給され、売買や流通は禁じられていた。この制度は1980年代初頭まで続き、ようやく廃止された。